【掌編小説】魔性/祈りという愛
朝焼けをのぞむとき、私たちは。
*
苦しまないように、と祈るのが愛だった。
少なくとも、私にとってはそうだった。ずっと。ずっと。
花崎ユリカという、魔性に出会うまでは。
花崎ユリカは魔性だ。
言葉の意味通り、ヒトを惑わす。すれ違っただけでひとは彼女を好きになり、心酔し、いつの間にやら道を外れている。
私は彼女を好きにならない。なぜなら、この大学で私だけが彼女の正体を知っているからだ。
花崎ユリカは魔性である。
(中略)
苦しまないように、と祈るのが愛だった。
では、花崎ユリカを手にかけようとしながら苦しまないように、と祈るこれも愛なのだろうか。
いいや。そうではない。
私だけは彼女を好きにならない。私だけが、彼女を愛さない。
私だけは、花崎ユリカを愛してはいけない。
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