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カットレモンのような昨日の月

 ああ、空にまします月よ、夜天をあまねく照らす月よ!

 ということで今回ご紹介しますのは、天の川の成り立ち……のようなものです。要はわたしの妄想であります。けっこうとれたて新鮮です。

 昨晩、わたしは帰路をてくてくやっていました。それはもう、轢かれたりなんらかの事故に関わりたくなければ、前左右を気にして目線をそのままに歩くべきです、徒歩というのは。どこからだれが、なにがやってくるのかわかりませんからね。

 しかし、昨晩のわたしは、というかいつもなのですが、途中で空を見上げ、星を見、月の位置を見つけようとしました。じっさい見上げました。

 そうすると、なんとまあ、見事な半円の月!

 さながらカットオレンジ、いいえ、あの直線のあたりの透け具合はまさしくカットレモン!

 この前の日もバナナボートよりも乗りやすそうな月だと思いましたが、こうまで美しい姿の半円はまったく経験がありません。たぶん。いままで下ばかり見て生きてきたので、空を見上げるというのが少なかっただけなのですが。

 そうして頭のなかでは、めくるめく妄想の世界が。

 むかし、天の神が勝手に半円の月、すなわちカットレモンを絞ってその汁をからあげにかけました。
 それに怒ったのは水の神です。
 いくら天の神といえど、断りなく勝手に大皿のからあげにレモンをかけるとは何事か!
 そう言い立てて水の神は勢いよく立ち上がりました。しかしその勢いで、かの神が飲んでいたカルーアミルクが盛大にこぼれ、なみなみとした白い川をつくりました。
 これが現在における天の川の成り立ちの一説だといいます。

 なんとまあ、このような物語が即座に頭のなかでできあがったのですから、我ながらくだらないものです。

 それにしても、ほんとうにきれいな半月でした。もうずいぶん傾いていましたから、直線部が真上を向いていたのです。だから余計、カットレモンだ!となったのでした。

 うつくしきメディア・ナランハたる半円の月、おまえの片割れはどこに在る! とね。

 しかしまあ、半月というのは、ただもう半分をわれわれの目から見えなくしてしまっているだけでそこに在るから、このような問いをかけること自体がおろかであると思い直して。

 それで、いやいや、これは半分のオレンジというより、カットレモンだよね、と。

 そういう、昨晩のくだらない妄想でした。
 ここで一首。

 神さまがかけたのかもねあの月を
 半分にして唐揚げとかに

 ありがとうございました。これにておしまい。

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