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20.その他のアメリカで(その1:ナッシュビルで聞かされた寝言)

L.A.のNAMMショーは一月に行われるのでWinter NAMMとも呼ばれます。
 
それに対してSummer NAMMと言うのもあり、カントリー・ミュージックの本場のテネシー州Nashville(ナッシュビル)で7月に行われます。


規模はL.A.のそれに比べてかなり小さいので、行ったのは1回だけなのですが、今でも覚えているのは仕事の事より「暑い!」ということ。
日中エアコンの効いた建物から外に出ると、乾燥していることもあって、ホントに焼け付く様な感じがしました。

他に覚えているのはバーボンウィスキーで有名なJack Daniel’sのビールがあって、これがとても美味しかったことです。
毎日かなり暑かったので、ビールもひと際美味しいわけですが。
残念ながら製造数が少ないので地元のテネシーでしか飲めない由。

Jack Daniel's Beer


この出張では海外営業のTさんという先輩と同じ部屋に泊まっていました。
当時は海外出張ではツインで一部屋に2人で泊まるのが当たり前でしたねぇ。
一度なんかツインにエキストラベッドを入れて3人で泊まらされたことも。
 
もともと3つ上のその先輩とは会社からの帰路が同じこともあり、お互いの能天気振りも共通していたためか2人で飲んだりする機会も多かったのでした。
 
実はTさん、営業と言っても国内から海外担当になって、これが初めての海外出張。
ボクを含めた周りもコテコテの国内営業のTさんがまさか海外営業になるとは思っていませんでした(多分ご本人が一番)。
 
急な異動でもあったので、言葉だけでなく仕事の方法なども勝手が違ってかなり苦労していたようで、
「初めての海外出張だけど、オマエと一緒でまだ気が楽だ。ヨロシクな。」ということなのでした。
 
その約1週間の出張の間、日中の業務は別々のことが多かったのですが、夕食以降は疲れていることと夜でも暑いこともあって、結局どこにも観光には出かけずに毎晩部屋で飲んで相変わらずのバカ話の繰り返しと大体一緒に過ごしていました。
 
今思うと、一度くらいはどこかに出かけてみても良かったかなぁと思いますねぇ。
ナッシュビルなんて今後また行く機会があるとは思えないので。
 
ある晩のこと、就寝後の真夜中に突然『ドォタアァ』という大きな音がして目が覚めました。
 
暗い中起き上がって周りを見たら、隣のベッドにブツブツ言いながら這い上がってくるTさんが見えたので『えー、Tさん寝ぼけて落っこちたんだ』(因みにセミダブルサイズ)とあきれながらもう一度寝ようとしたところに、
「ノォッ!! イッツ ノット イン ジュライ! イッツ イン オォガストーッ!!!」
というTさんのかなり大きな声が聞こえてきて、びっくり。
 
突然電話でもしたのかと、暗がりで目をこすって見てみたら、Tさんはすやすやとお休み中(落っこちた割には)。
 
「えー、なんて人騒がせな。」
と思いましたが、そういえば晩ご飯を食べながら、
「今日ブラジルのヤツがオーダー遅く出して来たくせに、直ぐにものを出荷してくれって言うんだよ。無理だって何度言っても、何とかしてくれってしつこくって、参ったよ。」
と言っていたので、多分それが夢に出てきたんだと思います。
 
異動後は結構頑張って自力で英会話を勉強していたようですし、いつも飲みながら「オマエもオレも外国人相手だから大変だよな。」と言っていたので、寝言も仕事の英語になったんですね。
 
普段の様子からはわからなかったのですが、きっとご本人は相当追い込まれた気持で英会話に取り組んでいたのだと思います。
 
翌朝ご飯を食べながら、
「Tさん、大丈夫でした?」
「え?何が?」
「だって、夕べベッドから落っこちましたよね?」
「え?いや。落ちてないし。」
「そうですか?その後ブラジル人と話す夢見てたでしょ?」
「何でオレが夢ん中まであのクソッたれと話すんだよ。オマエこそ寝ぼけてたんだろ。」
 
ああ、やっぱりこの人のことを心配するのは止めようと改めて思ったのでした。
 
Tさんにヤラれたのは枚挙にいとまがないのですが、一番ヒドかったのは、一度Tさんちに招かれた時のこと。
 
つねづね、
「オレんちは成城からスグだから。」
と言われていたので、成城学園で小田急を降りて渡された住所を頼りに(まだ携帯なんて持っていなかったので)、でも結構な距離を歩いてタドり着いたTさんちの前の通りの左手300mくらいのところに…。

「…。Tさん、あれ…。」
「なんだ、あれって?。…ああ、喜多見の駅だけど。…。ん?オマエどっから来たの?」





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