bullet & magic

<探偵><見習い魔術師><裏オークション>

 魔術と弾丸が飛び交う狂乱の退廃国家、パンデモニウム。かつての名前を忘れて久しいこの国は朝も夜もなく猥雑な喧噪に覆われていた。
 パンデモニウム主要都市の一角、アキバシティ。そこは最先端魔術とネオン歓楽街の融合したパンデモニウム的退廃都市が広がっていた。
 その一区画、古ぼけたビルの片隅のフロアに探偵事務所が存在していた。その名も犬塚探偵事務所。事務所内では雑然とした物がおかれており、少しも落ち着かない雰囲気を醸し出していた。その事務所からパーテーションで隔離された小部屋の古びたソファには一人の男が心底気持ちよさそうに眠っていた。
 その時、事務所の鍵が開く音がした。パーカーの少女が入室してきたのだ。少女は勝手知ったるような顔で事務所を分け入り進んでいき、やがて小部屋にたどり着いた。少女は、男の顔を見るとため息をつくと、眠っている男を箒のようなもので叩き起こした。

「箒で叩き起こすのはやめろって、ミューラ」
「所長がぐっすり眠っているのが悪いんですよ」
 パーカーの少女、ミューラはぐっすり眠っていた男…犬塚をジト目で睨みつける。ミューラは他人の都合もお構いなしらしい。
「まぁそんなことより、ミューラがこんな時間にウチの事務所にやってくるとは『魔術』関係の厄介ごとか?」
「まぁ、『魔術』関係の厄介ごとなんですけど、東嶺会主催の地下オークションに潜入してグリモワールを落札してほしいんですよ」
「ほう、東嶺会絡みか……あそこにはコネがあるから潜入は容易だな」
「流石、所長。謎の人脈力ですね。師匠もきっと喜んでいることでしょう」
ミューラは犬塚を茶化しながら笑顔で応える。探偵と見習い魔術師、我々の想像しえない信頼関係があることが伺えるやりとりであった。

<続く>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?