【連載】神仙霊妖人 人妖争 1話

僕は長い石段を歩いていた。

***

「澪夜、これって多分”宣戦布告”ってやつだよ」
僕はわざとらしく周りに聴こえるように言った。
「宣戦布告って外からの?」
「どう考えてもそうとしか考えられない」
1000年以上前に外とは八雲で隔てられている。
ここには大きく分けると5種族がいる。
神・仙・霊・妖・人
神・天人・幽霊・妖怪・人間
それぞれがそれぞれを補完しあって生活している。
人間以外を拒絶した外側とは違って。
「外側の文明人たちが八雲を超えようとしている…」
澪夜は呟く。
「だから、何らかの対策が必要だね」
「付喪さん。よく冷静でいられますね。」
僕はあまり敬語は好きではない。
でも、それはあまり関係ない。
「心の余裕が時間の余裕となる。焦ったら終わりだからね」
僕は微笑む。
「付喪、このあとどうするの?」
「僕は行くところがある。澪夜は里の全員に事情を話してきて」
「私一人で!?」
「誰かに頼んで分担するとかすれば?」
「あ、そうか」
澪夜はそこにいた人たちに説明を始める。
さあ僕は彼女のところに行こう。

***

いろいろ考えてるとすぐに彼女のところについた。
彼女は冥界の住人で僕と似た妖怪である。
刀匠としてここで生きている。
人間だった頃はあの妖刀村正を研究し続け、
その切れ味と妖刀としての性能を自ら再現できるようになった。
彼女の名は月城時雨。僕の実の父の友人らしい。

僕はさっきあったことを彼女に話した。
今日は刀は作っていないようだった。
僕が冥界の商店街で貰ったチーズケーキを美味しそうに頬張っている。
僕より長く生きている筈なのに、幼く見える。
僕は薄ら笑いを浮かべる。

彼女は薄ら笑いを浮かべ吐き捨てた。
「人間は愚かだ。故に意識を与えられた」
「意識を与えられたことを偉さと勘違いするな」
「所詮、生かされている存在なのだから」
気がつくと彼女は消えていた。
訳ではなく、僕に珈琲を淹れてくれたようだ。

彼女は僕に言ったのでは無いと思う。
外側の愚かな文明人に対しての叱責。

「付喪、ありがとう。チーズケーキ美味しかった」
「まあ、貰い物だけどね」
「なんかさーそんな気がしてたんだよねー」
「そろそろ来そうだなーって。付喪が」
「あ、そう」
僕はさらっと受け流す。
勿論彼女はいつものことだと、気にしない。

「で、本題だけど、付喪は外側の文明人と戦うつもりなんだよね」
全く、昔から変わらない決めつけるような口調。
少し嬉しかった。
「それ以外に僕が何をすると思う?」
「ヒヒヒヒヒヒ…」
彼女は笑う。
僕もニヤニヤする。
「刀が欲しいならいいのがあるよ」
「外の文明に刀で立ち向かうとは、付喪らしい」
そう言って時雨は僕も入ったことのない部屋に案内する。
そこには沢山の刀が並んでいた。

「好きなの選んで。どれも自信作!!」
僕は数十分見て回った。その中でとある一振に惹かれた。
「時雨、これは?」
「んー…それ…?」
「それは扱いが難しいよ。私でさえ鞘から出せない」
「???」
取り敢えず持ち上げようと手を伸ばす。
すると、その刀は僕の手の中に勝手に収まる。
「おお?」
時雨は間抜けな声を出す。
「まさか…ねぇ…それが…使える…の?」
僕は徐に刀身を鞘から出してみる。

「!!!」
「!!!」

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