神仙霊妖人 人妖争 2話

その刀身は黒く紫がかった光を纏う。
鞘には赤く荊が浮かび上がる。

僕は薄ら笑いを浮かべる。
後ろで見ていた時雨はと言うと、
口を開けていた。開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
「時雨、これ…」
だめだ…言葉が出ない。
「・・・」
時雨も同じようだ。
「まさか…ねぇ…」
「それ…ね、私が最初に作った刀なの」
「骨董屋で売れ残ってた妖気を放つ村正と、緋々色金を混ぜて」
「でも…二つを混ぜたのが悪かったのか、一度鞘に納めてから出てこなくなった」
――ふふふふふふふ
どこかから笑い声が聴こえる。
「なんか言った?」
「いや、何も?」
――やっと見つけた
僕と時雨は声の主がどこにいるのかわかっていない。
――ここだよ。ここ
僕は持っている刀を見る。
「ああ…そういうことか」
「なるほど~だからか~」
僕たちはやっと納得する。
つまり、簡単に言うと、その刀は付喪神だった。まあ、妖気を放つくらいだからね。
――やっと見つけた。ボクを使いこなせる人
「いや、僕は今は妖怪と言ったほうが無難かな?」
――うわっはっはっはっは
彼は想像以上に大きな声で笑う。
「時雨、これどういうこと?」
「さあ?」
――じゃあボクが説明するよ。ボクを作った癖にわかってない誰かさんに代わって
「あのねぇ…」
「この刀は闇烏。村正時代は人を罰するときに使われてた」
――わかってんじゃん
彼はケタケタと笑う。
――え~っと、君が付喪だよね
「ああ。宜しく」
――で、時雨、ありがとう。やっと持ち主が見つかった
「私に言ってくれればもっと早く見つかったかもなのに…まあいいか」

それから僕は帰ることにした。目的は達成したわけだし。
道中、商店街でおはぎを貰ったり、長い石段にうんざりしたりした。
あと、闇烏に今起こってることを説明したくらいかな?
彼はやっぱり、ケタケタと笑っていた。
また僕の周りが騒がしくなるのか…

「ただいまーって誰もいないか」
いや、そういったものの多分誰かいるだろう。
「おかえりー」
案の定だ。澪夜の声がする。全く、勝手に人の住処に入り込んで…
まあ、仕方無い。誰が神社に鍵を掛けようと思うのか。
澪夜は妖怪たちと花札をしていた。その中には叢雲さんの姿もあった。
「全く、みんなして何やってるの…」
「それより、それ何?」
「ああこれ?時雨から貰った。闇烏って言う」
――やっと持ち主が見つかったんだよー
「それ、付喪神か。俺と同じだな」
叢雲さんは親近感を抱いてるようだ。
――あなたは…三種の神器 天叢雲剣ではありませんか
叢雲さんはニヤニヤしている。
「話はそこまでにしてさ、さっきおはぎ貰ったから食べる?」
「付喪、ありがとー。また頼むよー」
「一応、もらったものだからね。僕が意図して持って帰ってきた訳じゃないよ」

その後は雑談したり、叢雲さんと剣術の練習をしたりした。
闇烏が勝手に動くせいでまともにできなかったけど。

次の日、起きるとそこには息を切らした澪夜がいた。
「全く、あんた今何時だと思ってるの!もう十時よ!」
お前は親か。
「別にさ、何時に起きようと良くない?」
「まあ、そうなんだけど、外の人間が来たのよ」
「は?八雲はどうした」
「わからない。でも…兎に角行って」
「なんで僕が?」
僕は着替えながら訊く。
「あなたしか居ないから。話ができる奴は」
全く、叢雲さんでも連れていけばいいのに。
あ、そうか彼は神社から出たら駄目なのか。神だから。
「仕方無いなぁ」
僕はいつの間にかそこにいた闇烏に手を伸ばす。
すると、闇烏は僕の手の中に飛びつく。
「で、どこに行ったらいいの?」
「取り敢えず村の方に」
速足で僕は歩き出した。


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