「乃木坂46」が大好きだった
私は乃木坂46が好きだった。
彼女たちは、清楚で牧歌的で優しそうで仲良しで、もちろんトップアイドルで雲の上の人たちなのだけど、なぜか手に届きそうな、普通の女の子たちのようにも思わせるような人たちだった。
そんな彼女たちをずっと見ていたいと思ったし、少しでも力になればと、少ないながらCDやグッズを買い、イベントにも足を運んだ。
だんだん一期生、ニ期生がいなくなって、三期生、四期生へと世代交代がされていく乃木坂も好きだった。
もちろん最初に惹かれてずっと好きだった乃木坂は、一期二期の卒業で少しずつ形は変わっていったけど、それでも乃木坂はここにあると思わせてくれていた。
昔と全く同じ乃木坂なんて求めていないと思っていた。変わっていく乃木坂も受け入れて、ずっと応援しようと心に決めていた。
そんな時だった。
乃木坂であって欲しくない人ができた。
むろん、私には「彼女」が乃木坂であるべきか否かを決める権利などない。
私はただの一ファンであり、ファンは与えられたものだけを享受するだけで、アイドルに対価など求めるべきではないのは分かっている。
でも、そんなことはわかっているけれど、どうしても受け入れられないのだ。
次のシングルのために節制もしていたのに、CDを買う気も起きなくなった。
あれだけ毎週楽しみにしていた乃木坂工事中も、五期生の登場と共に見れなくなった。
謝っているメンバーを見るのも、「彼女」を守ろうと発言するメンバーを見るのも辛かった。
好きだと思う五期生もいた。新・乃木坂スター誕生だって途中まで見ていた。
でも、どうしても、どうしても、一期生や二期生が必死で作り、三期生四期生が必死で守ろうとしている乃木坂に泥を塗った「彼女」が許せなかった。
もちろん、「彼女」は乃木坂に受け入れられるべきだとは、心の底では分かっていた。
メンバーたちが「彼女」を受け入れている以上、それが正しいし、その選択を尊重するのがファンだと分かっていた。
でも、できなかった。
どうしてもできなかった。
「彼女」を見るくらいならと乃木坂から距離を置いた。
未練はあった。
ブログは好きなメンバーのものは読んでいたし、乃木坂配信中だって、ライブ配信だって見たりしていた。
そんな中、去年の秋、齋藤飛鳥さんが、今年の一月、秋元真夏さんが、今年の二月、鈴木絢音さんが卒業を発表した。
「乃木坂」を作った一期生、二期生がついに全員いなくなった。
その時になって、やっと決心がついた。
気付いたのだ。
変わっていく乃木坂も受け入れよう、応援しようと決心していたはずの私は、実は何よりも「乃木坂」に固執していた。
「乃木坂」が失われていくのを見ることが怖かった。辛かった。だから必死に彼女たちに「乃木坂」らしさを求めた。彼女たちの振る舞いに「乃木坂」らしさがあるうちは乃木坂は「乃木坂」なんだと言い聞かせていた。
しかし、私が実のところ応援したいのは、固執していたのは「あの時の彼女たち」であって、(少なくとも私にとっては)もう今の乃木坂にはないものだった。
乃木坂らしさとは何なのか。結局は一期生や二期生が生み出したあの空気間であり、彼女たちだからこそ成立したのだ。三、四、五期生は彼女たちの代用品ではない。彼女たちが少なくなっていけばいくほど、私の思う乃木坂らしさが失われることは当然のことだ。
うすうすは気付いていた。
でも、乃木坂はあまりにも私の青春で、かけがえのないもので、手放すことは容易ではなかった。
けれど、もう終わったのだ。
「あの時の彼女たち」はいなくなった。
もうこれ以上固執するのはやめようと自然と思えた。
気持ちの整理がついた今、冷静に乃木坂を見ることができるようになってきた。
いまだに「彼女」のことを受け入れることはできていないけれど、「彼女」にもファンはいて、ファンがいる以上アイドルなのだと理解したし、そんなファンのためにもいまさら脱退などさせるべきではないと、推しメンの卒業を経験した人ならば思うはずだ。
きっともう、乃木坂のCDを買うことも、ライブに行くことも、握手会やミーグリに行くこともないだろう。
だけど、私が好きだった「乃木坂」はCDに、DVDに、記憶に確かに存在していて、
ドキドキしながら夜更かしをしてテレビの前で選抜発表を待ったあの日。気の遠くなるような列に並んで推しメンと握手をして、もう死んでもいいと思ったあの日。あまりにきれいで見とれてしまったあのライブ。久しぶりに推しメンとお話しできて、でもオンラインだから意思疎通がうまくできなくて一人反省会をしたミーグリ。
そのどれも大切な思い出であることに変わりはない。
頑張って収集した生写真。タオル。ペンライト。他界してしまう今となっては無駄遣いだったという人もいるかもしれない。だけど、それは今でも大切な宝物で、乃木坂を好きだったという勲章だと、私の青春の証だと、私は思う。
「やさしさとは」がもっとも乃木坂を表している曲だと私は思う。
時に不器用に、もがきながら、這い上がった人たちだった。
乃木坂が、青春だった。
何度も乃木坂に救われた。
乃木坂を好きになれてよかった。
本当に幸せでした。
ありがとう。
大好きでした。
彼女たちの行く末に幸多からんことを。