見出し画像

なぜ誤嚥性肺炎で入退院を繰り返すのか?


さて、今日はSTならば誰しも考えるテーマである反復性誤嚥性肺炎に対する話をしていきたいと思います。

入院中はムセなく食べていたはずなのに


入院中はSTが食事の評価を行い、機能にマッチングした食事形態を提供、水分もトロミをつけリクライニング車椅子の角度を調整頭頚部に枕やタオルで前屈位を設定、1ヶ月ほどで問題なく退院するものの、数日や1週間程度で再入院するケースを経験したことはありませんか?


2 誤嚥性肺炎はなぜ繰り返されるのか?


 肺炎発症の背景として嚥下障害が存在 するため,感染症とは本質的に異なった基礎疾 患の病態が,誤嚥性肺炎の治療についても重要 になる.誤嚥を惹起した背景の病態は肺炎治癒 とは無関係に残存するため,一度肺内の炎症が 治まっても,誤嚥自体は継続的に生じ,続発する肺炎の原因を除去することができない.

寺本 日本内科学会雑誌 第100巻 第12号

誤嚥性肺炎は抗菌薬等による内科的治療が行われますが、嚥下障害自体へのアプローチが必要であることがわかります。つまり、STは食事の専門職という立場であり、誤嚥性肺炎の再発予防にSTの頑張りがある程度必要だと私は考えています。

(何度も苦い経験をしたこともありますが(;’∀’))


3 なぜ退院先で再び発症するのか


ほとんどの医療機関では情報提供書等により施設やケアマネジャーへ退院時指導を実施していると思います。

その中には

姿勢

形態

トロミ

摂取方法

口腔ケアが含まれていると思います。

あれ?情報提供したのに?と思い、再入院時に施設職員に合うことが出来、確認してみると「書いてある通りにやったがむせた。全然食べられなかった」と聞かれることがあります。

ここで皆さん、何を考えますか?

それは…本当にこちらからの情報を元に食事を提供していたのだろうか?ではありません。

こちらが施設のことを十分に理解していない可能性が高いということです。

4 嚥下食の名称問題


ペースト食と一口に言っても様々なペースト食があります。

テクスチャー改良剤にもたくさん種類があり、また、病院や施設の経済的な理由や栄養科の影響力からメーカー推奨量で使用していないこともあり、添加割合もまた違います。

つまり

重い食感のペースト

加水量が多くサラサラしたペースト

ミキシングが乏しい

素材感が非常に強いペーストなどです。

さらに主菜はペースト状で副食はゼリー状など一つのお膳でテクスチャーがバラバラであってもペースト食として提供している施設も多くあります。

日本摂食嚥下リハビリテーション学会では

嚥下食の分類をする為、過去にパブリックコメントを募集、名称や難易度が国内でバラバラであることから嚥下食への呼称を避け、コードでの分類を行っています。

(嚥下調整食学会分類2013 日摂食嚥下リハ会誌 17(3):255–267, 2013)

この点に注意する必要があります。


 5 水分のトロミ問題


 皆さんの病院では

①どこのメーカーの何というトロミ剤を使用していますか?

②それはどの病棟ですか?すべての病棟ですか?

③どんな何の容器を使って保管してますか?

④どんなスプーンを使用しトロミをつけていますか?

⑤粘度(使用量)の基準はどうしていますか?

最低限自分の病院については理解しておく必要があります。

まず食事形態同様、名称の問題があります。

はちみつ状

フレンチドレッシング状

とんかつソース状

ヨーグルト状・・・とは?

Aさんのイメージする

Bさんのイメージする

はちみつ状は違うはずです。


またトロミ剤も

デンプン材料の第一世代

デンプン+増粘多糖類の第二世代

デキストリン+増粘多糖類の第三世代があり、

またその中にも複数の種類があります。

特徴もバラバラです。


 べたつきが強い仕上がりでは、反射遅延には有効ですが、咽頭収縮や喉頭前方向が弱い患者では咽頭残留を引き起こすなどの悪影響が生じます。

舌圧が1桁台クラスや、舌口蓋接触が不十分である、送り込み困難患者では

そもそも飲むことが出来なくなります。

逆に薄いと誤嚥を引き起こします。

またトロミ剤をとる容器は

小スプーン?

軽量スプーン?

トロミ剤専用スプーン? とは?

これでは何グラムになるのか誰にもわかりません。

おそらく病院が示した「トロミ小スプーン1杯を使用しておりました」と施設の「トロミ小スプーン1杯でつけてました」は仕上がりが全然違うテクスチャーになっていたはずです。


6 病院-施設間連携


平成30年の話になりますが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会では嚥下専門職と非専門職間の連携がクローズアップされていました。

以下引用一部抜粋

シンポジウム「地域連携と嚥下障害」

訪問看護師の豊田実和氏(リハビリ訪問看護ステーションハピネスケア)は、専門職が正しさを押し付けるだけでは非専門職である介助者への支援が難しいと言及し、患者の要求の背景にある欲求、ニードを試行錯誤しながら理解する過程が重要との考えを示した。

「施設は施設の環境に合わせてもらう」

「この姿勢じゃないと誤嚥する」

「嚥下食が充実していないから施設では肺炎を起こす」

ではなく

STから知る努力、歩み寄る姿勢とこの対応が難しいなら別の対応を提示出来る知識やスキルが求められます!

ご一読頂きありがとうございました\(^o^)/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?