見出し画像

【前世の記憶】姉に突き落とされて死んだと言う娘

アメリカ、カリフォルニア州サンディエゴ。

アンジェラにはキンバリーという娘がいる。妊娠した時はまだ18歳でボーイフレンドと同棲していたが、妊娠が分かると実家へ戻る。予想外の妊娠にもかかわらず両親は支えてくれた。

生まれた我が子を見て、なんて完璧で可愛い赤ちゃんなの!と感動したアンジェラ。しかしキンバリーは夜通し泣いた。ほとんど寝ないため、医者から夜ベナドリルの投与を勧められたほど。

*ベナドリルとはアメリカで市販されている薬の名称で、アレルギー症状を和らげるための薬。自然に近い眠気を誘発しやすいため、一時的な睡眠改善にも有用である。

幼児期になるとキンバリーは、感情移入しやすく、周りの雰囲気に左右されやすい子になっていた。

例えば、彼女が行きたがっていたお祭りに行った時のこと。そこはとても混雑していた。するとキンバリーは黙り込み、泣き出す始末。パニックアタックを疑ったほどだ。

彼女は周囲の人の感情に対しても敏感だった。睡眠も浅く、毎晩母親と一緒に眠るようになる。

2歳頃から彼女は、常に誰かと遊んでいるように見えた。誰と話しているのかと聞くと、

「お姉ちゃんと話しているの、ママ」

と言う。キンバリーには姉妹はいなかった。

アンジェラは聞いてみる。

「あなたに姉妹はいないのに、何でいつも遊んでるの?」

「違うのママ、前に生きてた時のお姉ちゃんよ。」

アンジェラは少し混乱しつつも、OKと言う。

その情報は小児科とも共有した。しかし医者は、彼女は良い想像力を持っていると言うのみ。知能の高さのサインであり、「将来は作家になるかもしれないね、様子を見ていいでしょう。」とも言われた。

しばらくするとアンジェラはキンバリーに、姉には名前があるのか聞いてみる。全てが幻想なのか知りたかったのだ。その幻想はどこまで続くのか。彼女にはどれだけの想像力があるのか。これからどうなるのか。

するとキンバリーは答えた。

「うん、彼女の名前はサラよ。私と遊びたがってるの。だって私に悪いことしたって思ってるから。」

アンジェラがどういう意味か聞くと、彼女は言った。

「ママ、私達が前に生きてた時、サラが私を火の中に押して死んじゃったの。でもわざとじゃなくて事故だったから、すごく悪いと思ってるの。」

アンジェラは頭の中で叫んでいた。

「なんてことなの!これは大問題。普通じゃないわ!」

「彼女からサラの名前と火の中へ押したこと、事故だったことを聞くや否や、これは知能の高さのサインなんかじゃないと悟りました。私には分からない何か他のものがあると。」

アンジェラはキンバリーをセラピストの元へ連れて行く。

「子供をセラピストに連れて行きたがる親なんていません。我が子の面倒も見ることができない、ニーズを把握できない親だなんて認めたくないのです。」

しかし、睡眠障害や感情の不安定に関する解決方法は得られなかった。

キンバリーが学校に行き出す頃、アンジェラには心配なことがいくつかあった。一つ目は、彼女が夜通し寝られないこと。不眠のままどうやって学校生活ができるのか・・。また、いつも遊んでいる想像上の姉の存在。そして彼女がとても感情移入しやすく、常に他人のことを気にかけていたこと。こんな状態で学校生活が成り立つのか。

「学校に行きだす前に彼女に伝えました。サラのことを話したり学校に連れて行ったりするのは得策ではない。皆が理解してくれるわけじゃないし、それを普通だと思う人ばかりじゃない、と。私の一番の心配は、彼女が前世のことを学校で話すのではないかということでした。」

子供に想像上の友達がいることはよくあることでも、前世について話すことは普通ではない。ましてや炎の中に押されて死んだなど、全くもって普通のことではないだろう。

「そのようなことを学校へ持ち込むことで、情緒不安定だと思われることや、反感を持たれることが心配でした。彼女が抱えている不安や不眠などの問題が全て関連しているのなら、それを解明したい。」

キンバリーは姉サラについて長い期間話していたが、少し成長した頃に改めてじっくり話し合い、彼女が覚えていることについて聞いてみる。アンジェラは決して詳細を予期していたわけではなかった。

彼女は言った。

「私はイギリスのリヴァプールに住んでいたの。1860年から1870年の間。お父さんは商人で、弟の名前はトーマス。私はクリスティーナという名前だった。姉はサラで、お母さんの名前はアナ。」

キンバリーによると、家族は貧乏でとても狭い家の藁のベッドで寝ていた。ある夜、就寝中にコンロから火が出てしまう。藁のベッドで寝ていたため火の回りはとても早かった。火柱が倒れる時、サラは彼女を助けようとしていたのだが、炎の中へ押してしまう形になる。火柱がクリスティーナ(現キンバリー)の上に倒れたからだ。

これまでキンバリーが伝えてきた話も、サラが罪悪感を感じていていつも遊びたがっているというのも理に叶う。眠れないのも理に叶う。

「睡眠中に火事にあった記憶があれば、私だって眠れないでしょう。キンバリーがサラのことを話した時も前世のことを話した時も、彼女が真実を伝えていることは分かっていました。彼女はそう信じていました。その時に、娘が前世を生きていたってことはあり得る?と思い始めたんです。」

キンバリーは今でも戸惑いの中にいる。自分が何をしたいのか、進むべき道が分からないのだ。

彼女は21歳になっていた。

「前世で私は火事で命を落としました。死に方が死に方なだけに、恐らく不眠の問題は一生続くと思うんです。この人生では成長に関することで苦労しています。高校卒業は私にとってかなりストレスでした。私にとって大人になるための飛石だったんです。多分それは前世で若くして死んでしまったから。大人になるのが初めてだからだと思います。もうサラのことは霊としても人間としても見えなくなりました。部屋に入ったらサラがいたということもありません。でも誰かが見ていてくれてるという感覚は時々あります。今までもサラがいたから安心できて怖くなかったので、それはサラだと思っています。サラが見てくれているという考えが安心させてくれるんです。」

アンジェラも、サラはキンバリーを見守ってくれて、現世の彼女をできる限り支えてくれたと感じていた。しかしサラの魂は許しを得たことを理解し旅立つ時だとも思っていた。」

キンバリーは言う。

「サラは生まれてからずっと私と一緒にいてくれて、手放せない毛布のような存在です。もし突然私の人生から消えてそれに気がついてしまったら、寂しく思います。」

アンジェラは、娘と一対一で心と心の会話をしたいと思っていた。前世を手放すことを話すためだ。そうすれば両方が幸せに健全に前進でき、お互いの道で成功できるのではないかと。夜も眠れるようになるのではないかと。

そして母娘でじっくり話す機会を設ける。

「あなたには前進するための手助けが必要よ、成長し大人になるために。あなたにはその権利もある。サラを手放すべきだと思う理由がいくつかあるの。まず眠れるようになるかもしれないこと。不安もなくなるかもしれない。」

と言うアンジェラにキンバリーは自分の気持ちを伝える。

「前世ではサラと弟と一緒の部屋だったから、今でも1人で眠れないの。寂しくなる。」

サラは生まれ変わってくるかもしれないし、彼女と過ごした時間を感謝できるようになるかもしれない。アンジェラは娘に、前に進む時だと知ってほしいことを伝える。

それに対しキンバリーは、半分自分に言い聞かせるように言った。

「サラには生まれ変わって自分の道を進んでほしいと思ってる。良くない記憶は思い出したくないし、この世で彼女と話した良い記憶だけ覚えていたい。私はこの世で成長しなきゃいけない。彼女も次のステップに進まなきゃいけない。」

そこでアンジェラが提案する。

「キャンドルを灯して祈りを捧げるのはどうかしら。一つはあなたに、一つはサラに。聖マイケルに、サラとのつながりを離れる手助けをお願いするの。」

カトリック教では、聖マイケルは天使に最も近いと言われていて、二つの世界のつながりでもある。

「聖マイケルにお願いすることは考えたことなかったけど、良いスタートだと思う。正しい道のような気がします。」

キンバリーも同意し、二人は二つの小さなキャンドルを灯した。そして聖マイケルにサラとの別離を手伝ってくれるようにお願いする。キンバリーが幸せになり、サラもそれを喜んでくれるように。お互いがお互いを引き止めることがないように、と。

するとキャンドルの一つが消えたことにキンバリーが気が付く。(母娘がハグしている間に)

「何か意味があるのかもしれない。サラのキャンドルが消えているのを見て本当に驚きました。私にとってはそれは大きな意味がありました。彼女が前進する準備ができていることを教えてくれると思ったからです。」

アンジェラはこの儀式がうまく行ったと思っている。キンバリーは今でもたくさん感情を引きずっているが、これが終止符になればよいと。

その後、キンバリーは実家を出た。今後は美容学校に通うつもりだ。

「前世に終止符を打って大人へのステップをあがれると思います。学校へ行って将来の方向性も見えてきたし、大人になる時だと理解してるから。」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?