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【前世の記憶】母親と双子だったと主張する娘


オーストラリア・ニューカッスル。

ブレンダとロバート夫婦にはミケーラという11歳の娘がいる。すでに2人の娘がいて第3子となるミケーラの妊娠中は、周りから今度は男の子かしらね?と聞かれてもブレンダは、なぜか女の子だと確信していた。

上2人の娘はダークヘアなのに対し、生まれたミケーラは金髪に青い目。ブレンダには天使のように思えた。

生後8.5ヶ月で歩き始め、1歳前には会話ができるようになったミケーラに夫婦は驚きを隠せなかった。

普通の子供が使わないような大人びた表現をするミケーラ。どこでそんな言葉を聞いたのか。夫婦共にミケーラと他の子との差を感じていた。

ミケーラはドレスアップするのが好きで、ビンテージショップに行った時は、袖が大きくふくらんだ古いドレスをどうしても欲しいと言った。

わずか5ドルだったそのドレスを買ってあげると、彼女は喜んでどこへ行くにも着て行った。

2歳半ごろになるとミケーラは母親にべったりになり、片時も離れないようになる。

家の中でブレンダの声が聞こえればひとりで機嫌よく遊ぶのだが、声が聞こえなくなるとブレンダを探し回った。

ブレンダが外出する数時間、ロバートが子供たちを見ていると「ママはどこ?」「どこへ行ったの?」「なぜまだ帰ってきてないの?」「いつ帰ってくるの?」とかなり動揺した。

ロバートが仕事から帰ってきて、ブレンダを育児から解放してあげたくてもなかなかそうはいかず、ブレンダもストレスを感じるようになる。なぜミケーラは離れたがらないのか考えてみても分からない。

さらにミケーラは、母親と一緒に寝たいと言うようになる。それまで問題なくずっと自分のベッドで寝ていたのにである。

当初ロバートは家から離れたところで働いていたため、ブレンダはミケーラを自分のベッドに寝かせる。

ミケーラは常に2つの人形を持っていて、どこへ行くにも一緒だった。他にも人形を持っていたが、この2つの人形は特別なようだ。

この人形たちを彼女は双子と呼んだ。周りに双子はいなかったため、双子の存在をどうして知っているのだろうとブレンダは不思議がった。

一方で、ブレンダ自身も小さい頃、自分の母に、なぜ自分は双子じゃないのか?と聞いていたことを思い出す。母が「双子として生まれてこなかったからよ、1人で生まれてきたのよ。」と言った時に、自分は双子だと思ったけど双子じゃないらしい、と思った記憶もある。

しかし自分が双子に興味があったことをミケーラに話したことはない。実際、ミケーラが双子に関心を抱くようになるまで、そんな記憶すら忘れていた。

状況はエスカレートしていき、ミケーラの言動は可愛さから心配事に変わる。双子に対する興味は執着へと変わっていた。

ある日、楽しく遊んでいたミケーラは突然動揺し泣き始める。何も起きていないし泣く理由もないのに。彼女はさらに取り乱し半狂乱状態になる。

そして「マミー、マミー、死なないで。」とブレンダにしがみついた。もちろんブレンダには娘がなぜそんなことを言うのか分からない。そして同じようなことがくり返し起こるようになる。

その度にブレンダは娘を抱きしめて「ママは死なないわよ、ミケーラ。死なないから。」となだめた。

ミケーラは決して、小さな怪我などを大げさに騒ぎ立てて周囲の注目を浴びたがる子供ではない。むしろタフな子供である。

夫婦共にミケーラがなぜ死について知っているのか、なぜ死を口にするのか把握できず、とても心配になる。

死を連想させるテレビなどは観ていないし、家族の中で誰かが亡くなったこともない。

ミケーラが一度泣いて取り乱すと、ブレンダから離れて普通の状態に戻るまで最低1時間はかかった。

ブレンダは親として何と言葉をかけていいのか分からず悲痛な思いでいた。一方で心の隅では、実際に事故や病気で死んだりしないかと不安に思うことも。なぜ我が子が自分の死を恐れるか分からずとも、自分は死なないと言うしかなかった。

たとえ半狂乱になっても、一度治ればミケーラは平穏に過ごした。しだいにミケーラが半狂乱になる前兆が分かるようになる。

遊んでいるのをやめて何か考えだしたかと思うと、泣き出し毎回同じことを言うのだ。

「マミー、マミー、死なないで。」と。

ブレンダは誰にもアドバイスは求めず、自分の心に留めた。娘に精神的に問題があるのかもとも思っていたからだ。

医者に相談することも考えたが、それ以外は楽しそうな普通の少女だったのである。

ある日ブレンダは聞いた。なぜ自分が死ぬと思うのか、と。3歳のミケーラは泣くのをやめて答える。

「だって死んだからよ、私たちが双子の時に。」

ブレンダは強い衝撃を受けた。

「私たちが双子?いつ双子だったの?」

と聞くとミケーラは言う。

「覚えてないの?私たちが双子の時、2人で双子の時よ。大きな白い家に住んでいて、馬に乗った悪い男たちが追いかけてきたから屋根の上に登って隠れてた。その時に落ちて死んじゃったの。覚えてないの?」

ブレンダはショックで途方に暮れた。

ロバートもミケーラの言っていることが理解できず、真剣に悩むようになる。

ブレンダが何が起こったのかと聞くと、ミケーラは同じことを繰り返した。

その時どんな服を着ていたのかと聞くと、白いロングドレスで袖が膨らんだものだと言う。そして家にはフロントに階段があり屋上にベランダがあったと。裏には屋根に登られる何かがあったようだ。

それを聞いたブレンダは、彼女は何を話しているのだろう、3歳の子がこれだけの作り話をするのは不可能だと感じていた。

もしかしたら前世の記憶があるのではと思い始めたのはこの時だった。輪廻転生について今まであまり考えたことはない。興味深い事柄ではあったものの特に調べる理由もなかったのだ。ミケーラの発言があるまでは。

一方でロバートは全く前世や霊などの存在を信じていなかった。

ブレンダはこれが輪廻転生かは分からないが、ただ自分が死んでしまうという恐怖から我が子を解放したかった。

ブレンダはミケーラが言ったことにマッチする事柄がないかリサーチを始める。最初は、未開拓時代のアメリカ西部をイメージしていた。馬に乗った男たちに、ミケーラ曰く土壌は乾いた荒野だったと言う。

しかしよく考えるとオーストラリアだったのではと思うようになる。

ミケーラは、大きな白い家で物を売っていたと言ったが、それは宿泊宿ではなかったのかと。面積の広いオーストラリアには1800年代、移動中の人々のための小さな宿泊宿も存在した。だからミケーラの言っている大きい白い家は、小さな宿泊宿だったのかもしれないと。

ミケーラが成長すると、2人で様々な画像に目を通すようになる。ミケーラの記憶に非常に近いと言うある家は、いわゆる宿泊宿だった。

また、記憶に近いと彼女が指摘した服は1850年代のものだった。少女たちはとてもシンプルなキャリコタイプのドレスを着てボンネットをかぶっている。

ミケーラは「これよ!こんなの着てたの!」と言った。

1850年前後に絞り込み何かに近くなったと感じたブレンダは、その頃のオーストラリアの歴史をリサーチする。そこで行き着いたのがブッシュレンジャーズである。ブッシュレンジャーズとは、オーストラリア前期における盗賊を意味する。

彼らは暴れまわっては人々から金品などを強奪した。中にはロビンフッドのような者もいたが、誰から盗もうが誰を傷つけようが構わない極悪の者もいた。

ブレンダは自分たちの前世に起こったことはブッシュレンジャーズに責任があるのではと考えるようになる。そこで歴史家に連絡を取り、ミケーラから聞いた全ての情報を伝えた。

ただし問題は、オーストラリアの歴史上、ブッシュレンジャーズによるこのような死亡事故はあまりにも多く、資料がないことだった。

前世でどこの誰だったのか探すことはできないかもしれない。しかしブレンダはリサーチを続ければ続けるほど、ミケーラの言うことに信憑性があると思うようになる。

これで十分だとブレンダの中では折り合いがついていた。我が子には前世の記憶があるが、わずか3歳で可能な限り最善の方法でそれを明確にすることができてからは状況は良い方向に向かいはじめた。

泣いたり取り乱したりすることなく前世のことを語れるようになった時が彼女にとっての転機だった。決定的な分岐点だ。最終的には少しづつ薄れていったのだから。

ミケーラには今でもいつか母がいなくなり帰ってこないのではという恐れがある。

11歳のミケーラはこう言っている。

「私には前世でママと双子だった記憶があるの。悪い男たちが来て私とママは屋根の上に登ったんだけど、ママは屋根から落ちて亡くなった。ママが何処かへ行く時、行ってほしくないって思う。2度と戻ってこない気がするから。でもママと離れる時に悲しんだり怖がったりしたくない。」

ロバートは、このことがミケーラの心の傷になることを心配し、ただ普通の子でいてほしいと願う。

ブレンダも恐怖心を感じることなく、いろんな経験をしてほしい、と夫婦の思いは同じだ。そのハードルを乗り越えられれば彼女の人生は、とても楽になるはず。

ブレンダは心と心のコミュニケーションを図るように心がけ、絶対にミケーラの元から去らないということを知らせるようにしなくてはと感じていた。たとえ死んでも、また一緒になる。彼女は私を失うことはないし、自分も彼女を失うことはないことを伝えなくてはと。

ブレンダはミケーラをビーチに連れて行き、心と心の会話をする。

彼女は二つ同じネックレスを用意していた。一つはミケーラに、一つは自分に。このネックレスを2人の絆のシンボルとして彼女に安心感を与えたい。離れている時につながりを感じ、心配しなくていいように。

ブレンダは、「離れているときは、これを読んでね。」と言ってネックレスを渡す。

「母と娘が本当に別れることはない。お互いの心で結ばれているから、と書いてあるわ。私たちみたいだね。私たちは前世で一緒で、現世でも一緒になった。だからまた一緒になれるはずよ。」母と娘は大きなハグをし合う。

ミケーラは言った。

「ママがいないときはネックレス に触れて2人の絆を思い出せる。安心できそう。ママがこの世で私のママでいてくれて幸せ。」

その後、ミケーラが母親が死んでしまうと恐れることはなくなったと言う。しかし双子への関心は今でも続いている。

ブレンダがこの経験を通して学んだことは、死の後にも人生があるということ。ミケーラとは前世で一緒で、再び一緒になると信じている。だから死も怖くなくなった。もちろん家族に悪いことは起こってほしくないけど、絆でつながっていて常に一緒になる。この世に生まれてきたのは違うレッスンを学ぶため。現世で自分が娘に教えられることがあるだろうし、彼女から学ぶこともある。すでに娘からはたくさんのことを学んだ。


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