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【前世の記憶】昔のお父さんについて語り出す息子
待望の赤ちゃん
ジョアンナとニックには、6歳と3歳の息子がいる。ジョアンナは家族・結婚関係のセラピストで、多くのトラウマを持った子供や困難を抱えた子供と接するため、自身の子育てにも愛情に満ちた環境を与えようと意識していた。
一方、夫のニックは弁護士で、虐待やネグレクトされた子供たちのリスクに向き合う仕事をしている。
当初ジョアンナは、子供を持つのは難しいだろうと医師から言われていた。腹部に問題があり、その原因を医師も解明できないでいたのだ。
ジョアンナは大学院へ、ニックは法科大学院へ通っており、卒業したら子供を持つ計画でいた夫婦はショックを受ける。
医師からは妊娠するには時間がかかるだろうから、今から計画することを勧められる。するとなんと1ヶ月で妊娠。夫婦は嬉しいサプライズに喜び合った。
生まれてきた元気な男の子ライリーは標準よりかなり早く話し始め、ボキャブラリーも多かった。年配の人たちといることが心地よいようにも見えた。
しかしライリーは、なかなか寝ない赤ちゃんで、20分もすると泣き出してしまう。両親は疲れ果て、子育ての困難さを痛感していた。
昔のお父さん
ライリーが3〜4歳になると、夜中に恐怖で目覚め泣き叫ぶようになる。
ある日、家族で何処かへ向かう車内で、ライリーが突然、
「古いお父さんのところへ行くの?」
と聞いた。ジョアンナはニックの肩を叩き、
「ちょっと、あなたのこと年寄りだってよ」
と笑った。
するとライリーは、
「違う、パパのこと年寄りと言ったんじゃない。僕の昔のお父さんのこと言ってるんだ。」
と言う。
そしてそれからも彼は「昔のお父さん」について度々口にするようになる。保育園に迎えに行き、今日はどうだったかと聞くと、
「昔のお父さんもそうやっていつも聞いてた」
と答えたり、大人のような言葉を使うので、どこで習ったのか聞くと、
「昔のお父さんからだよ」
など、少なくとも1日に1度は昔のお父さんの話題が出ていた。
ニックはこれに関して楽観的だった。やるべきことをライリーに促した時、
「昔のお父さんはそんなこと言わなかったのに」
と息子が言っても、「彼は今留守だからね」と笑って受け流した。
一方、ジョアンナは息子に何が起こっているのか悩んでいた。精神的な病気を抱えているのか、幻覚を見ているのか・・。メンタルヘルスに関する仕事をしていた彼女は、6歳児が精神疾患にかかるのは早すぎるだろうことも知っていた。
ニックはそんな妻に、6歳児の言葉をあまり深刻に受け取らないように言った。
戦争から帰還した父親の記憶
ある夜、ジョアンナがライリーの部屋にいると、
「昔のお父さんは戦争に行った時、グレーの帽子をかぶって古いユニフォームを
着てた。でも戦地で肩を刺されたから、友達が運んでくれたんだ。もう少しで死ぬところだったんだよ。肩からの血が止まらなかったから、彼らが傷口に布を当てて止めてくれたの。」
と言う。
ジョアンナはショックで返す言葉がなく、ライリーに話を続けさせる。
ライリーは、彼らのユニフォームに血が付いていることを描写した。そして昔のお父さんが帰還すると、家の中は常に暗く静かにしていなければならならず、自分たち兄弟が物音を立てると怒られたと言う。
ジョアンナは悩んだ。テレビは子供に適しているものしか見せず、良い環境を意識しているのにもかかわらず、3歳児の頭の中になぜ戦争や血のイメージが湧くの
か。仲の良い友人たちに、ライリーが彼らの家にいる時に暴力的なテレビを観たことがあるか聞くと、いずれも答えはノーだった。
そこで息子の言動と、専門家に診てもらうべきかを親しい友人に相談すると、そう
するべきだと言われ動揺する。心の中では、心配ないという言葉を期待していたのだ。
心配するジョアンナに対しニックは、ライリーはとても強い想像力を持っているだけだと解釈していた。そしてジョアンナがセラピストという職業柄、深刻に捉えがちなのではないかと指摘した。
息子が精神的におかしいのではなく、男の子はやんちゃでおかしいものだと捉えていたのだ。一方で、息子が精神的におかしいのだと思われたくないジョアンナは、友達に話すのも躊躇するようになり、1人で戦っているように感じていた。
家族関係のセラピストを16年やっている経験から、幼児の精神疾患は稀なことは理解していたが、息子の奇妙な言動が周りに変わり者だと扱われることが心配だった。
それまで前世については考えたことのなかったジョアンナだが、リサーチを始め、ある前世に詳しい専門家に相談する。そしてライリーの場合は、前世の記憶のようだと言われる。
ライリーの描写によると、昔のお父さんは戦争から帰還後はとても敏感になったようだ。ジョアンナはそれを聞いた時、すぐにPTSDの症状を思い浮かべた。
トラウマを経験すると人は、フラッシュバックや悪夢を経験することは珍しくないが、3歳児がPTSDの症状を体験することなく描写できるとは思えない。ライリーは前世の状況を描写しているに違いないと思った瞬間だった。
ライリーはまるで読んだ本の内容を伝えるかのように、昔のお父さんについて描写した。家の中に何があるかを絵に描いてみせてくれるのだが、その家の様子は現在住んでいる家と似ても似つかないものだった。
前世の母親の記憶もあるももの、ほとんどは昔のお父さんについてである。それだけ影響が大きかったのだと考えた。
昔のお父さんは銃を積んだ飛行機に乗っていて、戦争から帰還した時は違う人のようだったと言う。
前世の父親の名前
ある日ジョアンナは何気なく尋ねた。
「昔のお父さんに名前はあるの?」
答えなど期待していなかった。しかしライリーは
「セドリック・ポッカー」
と即答する。
ジョアンナが調べてみると、Fokkerという飛行機を打ち落とした人物が、「セドリック・ポップキン」だとして現れる。ポッカーとポップキンで多少違うものの、十分に似通った発音である。
そしてセドリック・ポップキンの人生はライリーが描写した昔のお父さんにマッチしていた。
セドリック・ポップキンは1890年にオーストラリアで生まれ、1916年に第一次世界大戦が起こると入隊し、フランスがベースの地に駐在。ドイツ軍のエースパイロット、レッドバロンを撃ち落とした人物とされている。その後の彼は傷に苦しみ、右足切断をする結果となり本国へ帰還している。
セドリックには、ロナルドとマイケルという2人の息子がいた。2人とも50年以上前に亡くなっているが、興味深いのは、2人とも父親よりも早く亡くなっていることだ。
ジョアンナは前世の記憶を持つ人について調べるうちに、多くは自分自身の経験を語るが、ライリーの場合は少し違い、父親の視点で見ていることに気づく。
ジョアンナはリサーチで見つけたセドリック・ポップキンの写真を、他の似たような写真数枚に交えて置いてみた。何人もの兵隊たちが写っている写真の中に、セドリック・ポップキンの軍隊が配列している写真である。
するとライリーは、1枚の写真を手に取り、その中からセドリック・ポップキンを指さした。
ジョアンナもニックも、ライリーがセドリック・ポップキンの生まれ変わりかどうかは分からない。しかし説明のつかない何かがあるのは事実だと言う。
もし生まれ変わりだとしたら、前世からのトラウマを抱えた子供が、子供の虐待やネグレクトを扱う弁護士の父親と、家族・結婚セラピストの母親の元へ生まれてきたことは興味深いと考えている。
どちらにせよ、ジョアンナとニックはライリーを愛していること、いつでも話を聞くことなど、彼に伝わっていることを常に確認していると言う。
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