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【超能力捜査】霊視で解決・劇場型犯罪ミステリー

1981年3月12日、アメリカ・アーカンソー州。ある女性から救急電話が入る。「夫が血まみれで倒れていて息をしてない、死んでると思う」というものだった。

警察が到着すると、2階の寝室で白人男性が血まみれでベッドにうつ伏せに横たわっていた。後頭部から銃傷が見つかる。38口径と考えられた。

警察は凶器となった銃を探すが見つからない。被害者の手を見ると自殺の可能性は否定された。

被害者はロン・オルシーニ38歳。有名な地元の実業家で周囲からも尊敬されている人物だ。彼は就寝中に殺害された。完全に無防備の状態で。

警察は現場の状況から強盗や強制侵入はなかったと推定。全てはあるべき状況にあった。・・書斎を見るまでは。

銃のキャビネットがあり、その中に数丁のショットガンとライフル、数丁のリボルバーとピストルが入っていたのだ。警察は全ての銃を証拠物として押収。

手がかりもなく容疑者もいない中、警察はロンの周囲の人物を調べ始める。ロンは妻メアリー・リーと結婚して5年。彼女の14歳の娘ティファニーと3人で暮らしていた。

模範的な家族に見えるが、警察は語られていない何かがあるのではないかと考える。

メアリー・リーによると、ロンは前夜の午後9時ごろに帰宅。彼女はロンに夕食、ティファニーにココアを用意する。そしてティファニーと一緒に就寝。

ティファニーは何かの病気で薬を飲んでいた。何かあった時のため、そばにいたかった彼女は、ここ数日間はずっと娘の部屋で寝ていたと言う。

そして娘の部屋にいた時、ロンが別の部屋のドア越しに愛してると言ってドアを閉めた。それが最後に目撃した夫の姿だと・・。

メアリー・リーは、部外者が侵入した音も銃声も聞いていないと言う。あらゆる疑惑を排除するため、警察は彼女に微量金属検出テストを受けるように求めた。

このテストは発砲後約 12 時間有効で、多くの場合、手に持っていたピストルの跡を見ることができる。しかしその跡はなかった。娘ティファニーにもなかった。二人ともピストルを触っていないということになる。

警察は家族の身辺捜査をする。ロンは空調装置の事業をしていた。ビジネスが不況だったり荒稼ぎをしているといったこともない。周囲からの印象は、落ち着きのある好感の持てる男性だった。

手がかりも動機も容疑者もいないなか、 捜査は行き詰まりを見せる。そんな中、答えを求めて必死の刑事達は別の道があることを知る。キャロル・ペイトという超能力者がいることを他の刑事から聞かされたのだ。

超能力者のキャロル・ペイトは言う。

「何度か一緒に仕事をした刑事がいて、彼は私の超能力が正確で情報を得られることを知っています。」

事件を担当したファーリー刑事が言う。

「失うものは何もない、試してみようと他の刑事に言いました。しかしキャロルのことを知ってるわけじゃない。彼女にはロンの件はできるだけ伝えないようにしました。」

そしてキャロルに警察署に来てもらえるか電話をする。

「もちろん、行きますよ、どちらにせよこうやって話しているうちに見えてくるものがありましたし。」

事件のことは何も聞かずしてキャロルは不穏な映像を見ていた。

「すべてのシーンの組み合わせで、すべてのシーンの延長です。素敵な家がある。素敵な家族。全てがここにある。誰も秘密を知らない。この家には何か大きな問題がある。」

ファーリー刑事は言う。

「まず彼女がどれくらい真実に近づけるのか見たかった。この事件はメディアに出ておらず誰も知りませんでした。」

ファーリー刑事は、キャロルをテストすることにする。これに対しキャロルは、慣れているので何とも思わない、と言う。

刑事は6枚の人物の写真を用意し、その中に何か分かる人物はいるかと聞く。そのうち一人は別の事件の容疑者の写真。キャロルは一枚の写真を選ぶと、彼が殺したと言う。当たっていた。

キャロルが言う。

「こういうことができるとは誰も思ってません。だから当たると皆驚きます。」

刑事達はキャロルの能力を信じ、ロンのケースに移ることにする。彼らはロンの衣服を渡し、何か分かることがあるかと聞く。キャロルがロンのシャツに触れると即座にコネクションを感じた。

「ラジオやテレビのチャンネルを合わせるような感覚です。一度特徴的な周波数に到達すると、その人の全てが分かります。このシャツの所有者はベッドで寝ている間に撃たれました。」

ファーリー刑事が言う。

「私はただそこで、嘘だろ、信じられない!と言いました。」

刑事が凶器について聞くと、キャロルは、「リボルバーです。 小さなリボルバー。 リボルバーが 3丁ありました。」と言う。

オルシーニ宅の銃の中には3丁のリボルバーがあり、押収された銃は既に研究所に送られていた。

弾丸を回収することで、個々の特徴を照合し、特定の銃から発射された弾丸または薬莢を確実に識別することができる。検査の結果、ロンの枕から見つかった弾丸とは一致しなかった。つまり提出された銃は凶器ではない。

警察が望んだ結果ではなかったが、一つその検査で分かったことがある。殺人事件に使われたのは4インチのコルト製リボルバーだった。

ファーリー刑事が言う。

「リボルバーが発砲した時に家にいた経験のある人はほとんどいないと思いますが、聞こえないわけはないのです。」

何故メアリー・リーもティファニーも銃声で起きずに眠ることができたのだろうか。警察に話してない何かがあるのか・・。

刑事がメアリー・リーにもう一度話を聞こうと思っていたところ、彼女の方から電話がかかってくる。実は話していないことがあると。

彼女は自分の弟ロッド・ハッチャーが夫を殺したと言う。弟はロンのことが大嫌いだった。父親が不動産の大部分をメアリー・リーに残し、弟はそのことに腹を立てていた。彼女は自分への仕打ちのために夫を殺したと感じていたと言う。

弟はオルシーニ家と相続争いについて考えていた。

ファーリー刑事は言う。

「ロッド・ハッチャーに署に来るように言いました。私が彼の権利についてアドバイスすると、彼はただ、これがどういうことなのか分かっていると言うようにうなずくだけでした。彼はポリグラフ検査(嘘発見器)にかけられることを希望して、それに合格しました。」

さらなる調査により、彼の堅いアリバイも証明された。

ファーリー刑事は言う。

「この事件にはいつ転機が訪れるのか?というところまで来ていました。彼女のことをどう判断したらいいのかその時点では分からなかった。」

警察はメアリー・ルーが銃声を聞くことなく起きなかった理由が分からないでいた。しかし彼女は何も聞こえなかったと主張する。

ファーリー刑事は言う。

「何も悪いことをしていない男性が自分のベッドで撃たれたのです。そのことだけが私を動かしていました・・。」

刑事は再度キャロルに連絡を取る。今回は彼女を事件現場へと連れていく。彼らは秘密裏で動き、 誰もキャロルが誰か、彼女の関与さえも知らなかった。

キャロルが言う。

「エネルギーを感じました。他の証拠に入り込むことができたので、事件が明らかになり始めたということです。更なるパズルのピースが出てきました。夜間・・男が家に侵入した。狭い階段を上がってる。リボルバーが見えます。彼は、前にもやったことがある。男は・・雇われた。家の中の地図を与えられている。女性が関与しています。とても自己中心的な女性。・・被害者の妻。彼女は逃げ切れると思ってる。口座からお金が無くなってるはずです。3万ドルくらい。それを説明できないでしょう。」

警察はオルシーニ家のお金の行方を追跡する。銀行記録には、メアリー・リーがロンの知らないうちに巨額のお金を使っていたことが示されていた。もし彼女がそれをロンに隠していたとしたら・・・。

彼女は密かに家族の貯金を取り崩し新しい家を購入していた。集められるだけのお金を使い、頭金として 26,000 ドルを支払っている。住宅ローンを支払うお金は何も残っていなかったが、夫の生命保険が解決してくれるように見えた。

ファーリー刑事が言う。

「このままでは自分の人生が保障できなくなる。保障された人生のためには、ロンに消えてもらわなければいけない。そこには明らかに大きな動機がありました。」

刑事はついに容疑者を見つけた。が、逮捕する前に、答えるべき重要な疑問が 一つあった。

刑事達は口をそろえて、娘ティファニーになぜ銃声が聞こえなかったのかと首をかしげていた。彼女が最近病気だったことを思い出すまでは。メアリー・リーの薬局の記録に答えはあった。

記録を調べたところ、メアリー・リーがロン殺害の数日前に非常に強力な鎮静剤を投与されていたことが判明したのだ。

メアリー・リーは自分の娘に薬を飲ませて眠らせたのか。犯罪準備のために毎晩薬で娘を眠らせていた可能性もある。

ファーリー刑事が言う。

「明らかなのは、何かがココアに入っていたということです。ティファニーは電車が家を突っ切っても起きないくらいの薬を盛られていました。それだ!それが答えだ。それが私達に必要な答えでした。」

メアリー・リー ・オルシーニは起訴され、有罪判決を受ける。

しかしキャロルがビジョンで見た男は何だったのか。警察はその夜雇われた男がオルシーニ家にいたと信じている。

ファーリー刑事は言う。

「その人物はロン・オルシーニ事件で裁判にかけられていないので、まだ問題は解決されていません。メアリー・リーはどこかの墓地にいます。刑務所で亡くなりました。とても満足しています。あの事件では主犯を逮捕できたのでね。悪魔のような女を。」

キャロルが言う。

「この事件ではメアリー・ルーに対して私は骨を咥えた犬のようでしたね。絶対に手放そうとしなかった。解決したかった。」

刑事達はキャロル・ペイトが事件解決へ導いてくれたと信じている。

メアリー・リーの3番目の夫であるロン・オルシーニ殺害での有罪判決は最高裁で覆される。しかし彼女は、この件で雇ったビル・マッカーサー弁護士の妻アリス・マッカーサー殺害の罪で有罪判決を受けた。

彼女はマッカーサー弁護士に執着し、多額の費用を費やしていた。そして二人が不倫関係にあったと主張したが、マッカーサー弁護士に対する捜査では証拠は見つからず、恋愛関係は一方向にしか進まなかった。

*1982 年 5 月 21 日に自動車爆弾によって妻アリスが軽傷を負い、マッカーサー弁護士は調べられる。警察は、メアリー・リーの仕業ではないかと疑っていた。

彼女はマッカーサー弁護士のオフィスで何時間も過ごし、誕生日にシャンパンパーティーを主催したこともあった。

1982年7月2日金曜日、メアリー・リーはマッカーサー弁護士との予約を取り付ける。しかし法的な話の必要がないと判断した彼は、オフィスを出て家に帰宅。 そこで妻が頭に銃撃を受けて死亡しているのを発見する。 犯人は花の配達員を装い、家に侵入していた。

その後、地元の凶悪犯二人が、ヒットマンとしてメアリー・リーに雇われたと自白。彼女は、未遂に終わった自動車爆弾の時もアリス殺害時も、マッカーサー弁護士の関与を示唆。彼は2度起訴されたが、「真実ではない」との判決が下された。

一方、メアリー・リーはアリス・マッカーサー殺害の共謀罪で起訴され、1982年10月の裁判で有罪となり、終身刑を宣告される。 1983年、夫ロン・オルシーニ殺害の罪で有罪判決を受け、再び終身刑を言い渡されたが、その有罪判決は後に控訴で覆された。

そして仮釈放なしの終身刑で服役中の2003年8月11日に心臓発作で死亡。彼女には心臓疾患はなく、前日に症状を訴えるまで体調不良を訴えたことはなかった。亡くなる直前に彼女は夫ロンとアリス・マッカーサーの殺害を認めている。

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