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【超能力捜査】霊視で解決・高齢者連続殺人事件

1997年4月、アメリカ、ルイジアナ州の小さな町。未亡人のリリアン・フィリップ71歳が自宅で残酷に殺害された姿で見つかる。この平和な町で殺人が起きたのは11年ぶり。

リリアンは教会のバス旅行で、カジノへ行くことになっていた。しかし、8時に行くと言ったら7時45分には到着しているような彼女が現れなかった。

ランドリー警察署長は事件現場に最初に到着した中の一人である。

「刺し傷などから凶器にナイフが使われたのは明らかでした。防御創も被害者の手にありました。しかし現場に証拠はほとんど残っていなかった。」

その残忍さには解剖医さえ動揺するほど。

「首には持続的に刺された複数の傷がありました。その傷は深く、頸動脈も静脈も切断されていました。さらに喉頭も部分的に切断されています。甲状腺右葉もです。出血死でした。」

静かで平和な田舎町で起こったこの事件に住民は震撼し、次は自分の番ではないかと恐怖を抱く。が、町の人々が知らなかったのは、同じ高速道路沿いで半年間に3件の殺人事件が起こっていたことだった。

初の被害者はヴィクター・ロッシで、ベースボールバットで殴打され殺された。2人目はバーバラ・ブルジョワで刺殺された。

3人とも高齢者で、自宅で襲われている。警察は容疑者と思われる人物を調べていくが、全員対象から外れ、行き詰まっていた。

そんな時、ランドリー警察署長はある電話を受ける。高校の同級生マルシアからだった。彼女はリリアンの姪で、現在ホノルルに住んでいる。電話の理由は、彼女の友人で超能力者のローズ・コップと話をしてほしいという依頼だった。

おばのリリアンを殺害した犯人を見つけるのはもちろん、犯人の狙う対象人物が分からなかったため、マルシアは家族の安否を心配していた。

捜査が思うように進まないランドリー署長は、どんな手段もいとわなかった。たとえ超能力でも。

超能力者のローズ・コップは言う。

「以前に捜査に協力したことがあることを伝えました。ある程度は加害者を特定でき、その手がかりやヒントを伝えられるかもしれないと。被害者の写真と所持品を送ってくれるように言いました。写真に写っている人々の目を見ると、彼らが教えてくれるんです。それは物理的な現実を超えたもの。一旦写真の人物を見てその人の所持品に触れると、対象人物とより深く繋がることができます。」

しかし写真がハワイに到着する前に、再び次の事件が起きる。今回は2人が殺害された。再び同じ高速道路沿いで。今回はリリアンの家の近くだった。

サムとルエラ・アルクーリ夫妻は、自宅で棒で殴られ殺害される。その5日後、ジョアン・ブロックが自宅の裏庭で撲殺された。全ての兆候は、最も無力な人々を狙う連続殺人鬼を示していた。

現場からは指紋もDNAも検出されず、警察にはわずかな情報しかない。

ホノルルでは、ローズ・コップが事件に取りかかっていた。ローズはトランス状態に入ると、犯罪現場へ瞬間移動することができる。

「瞬間移動には、ゆっくり繰り返される音を伴います。その音に集中すると脳波が変化し、とても軽くなります。体を離れてダイヤモンドヘッドの上、太平洋の上を超えました。目的地はリリアンの家。カリフォルニア、テキサスの上空を越え、ルイジアナへ着きます。リリアン宅に着き、振り返ると血の海でした。」

次は自分の番なのではないかと恐怖に慄く住民たち。警察はパトロールを強化し、地域の住民が安心できるように努めた。

事件のわずかな手がかりはあったものの、ランドリー署長は最も変わった方法を選ぶ。超能力者のローズ・コップは何千マイルも離れたハワイから犯人を透視できると言う。

「犯人が手袋をしているのが見えました。拳を握っていて、運動神経がいい印象を受けました。焦って中に入る方法を探しているように見えます。」

手袋は現場に指紋が残されていないことの説明がつく。

ローズは犯人をこう描写する。

「白人男性が見えました。身長は180cm位でしょうか。髪の毛は茶色で、とても強い男性です。家の横へ回り、屋根付き玄関エリアから鉄製の椅子をエアコンの吹き出し口に動かすのが見えました。そしてその上に立った。そこで私のビジョンは止まりました。」

ランドリー署長が言う。

「最初にローズが話してくれたのは、犯人はエアコンの吹き出し口の上に椅子を置き、そこから屋根に登ったことでした。」

彼は唖然としていた。彼女が椅子のことを知っているはずはないのだ。また、侵入口は明らかに屋根からで、実際に屋根裏の階段から住居に侵入した跡があった。

ローズは自分が見たビジョンを描写する。

「犯人はまるで蛇のようでした。アナコンダのように体にしつこく巻きついて、彼女を掴むと首と喉を刺しました。周囲は血の海です。彼女は犯人を突き放そうとするけどできなかった。犯人が強靭すぎたのです。枕やベッドの上の血が見えました。」

ローズは警察しか知らない事件現場の詳細を知っていた。警察では特別チームが結成され、FBI分析の結果、恐らく単独犯だと推定される。

ランドリー署長はローズに、犯人の動機は何なのか、もう一度現場を見てくれるよう依頼し、より詳細な情報の提供を求める。

ローズは再度犯罪シーンへの瞬間移動する。

「ルイジアナまで飛んで、リリアンの家に到着しました。振り返ると黒っぽいセダンが見えます。車の中へ移動すると、床がたくさんのギャンブルの記録用紙とか入札表のようなもので埋め尽くされているのに気がつきました。」

ローズのビジョンは、遊びが殺人を煽っているという捜査官の予測と一致していた。

今回の瞬間移動で、ローズには新しくある人物が見えていた。犯人の彼女だ。

「飲食店で働いている女性を見ました。ウェイトレス姿だったので名札を見ました。ブランディーかシンディー、またはキャンディーか・・。レストランがどこにあるか知りたかったので窓を見ました。大きな建物が見えます。血の匂いがしました。すると突然切断されたいくつもの牛の頭が見えたんです。あまりにもびっくりして、即自分の体に戻りました。気がつくと自宅のリビングルームにいました。戻った時の記憶さえありません。」

ランドリー署長は言う。

「ローズの言ったことの意味がすぐに分かりました。昔、牛の屠殺場があったのです。看板の上には大きな牛が立っていました。そのことを知らない警官もいます。私は子供の頃からの記憶がありました。」

その屠殺場は何十年も前に取り壊されていた。

ローズは最終的なビジョンを描写する。

「年配の女性の手が見えました。その手で彼女はRiver Ratと書きました。」

ランドリー署長は言う。

「River Ratとは、ここで使われる言い回しで、ミシシッピー川沿いに住んでいる人たちのことです。ルイジアナ州南部でも、別の地区ではスラングやアクセントが少し違うので、どこから来たのか分かるのです。」

しかし彼は、リバーラットの意味は知っているものの、事件でそれが何を意味するかは分からなかった。再度犯人が攻撃するまでは。

今度はある高齢夫婦が襲われる。武装した犯人は侵入すると、女性の顔を撃ち、夫の胸を撃った。夫婦はかろうじて生き残る。しかしこの夫婦の証言がランドリー所長を驚かせる。

襲われた女性に犯人の特徴を聞くと、彼女は紙に 「River Rat」と書いたのだ。

ここで警察は、River Ratが捜査の対象だと知ることになる。警察は、動機は強盗目的だと見ていた。

FBI分析と被害者の描写に基づき、警察は犯人の似顔絵を作り、公開する。その似顔絵と、ローズの描写する犯人像がとても似ていることにランドリー署長は驚きを隠せなかった。

似顔絵が公開された5日後、ある情報提供者が現われる。カジノで大金を使っている人物を知っていると言うのだ。その人物は市内に住む、ダニエル・ブランクという男だと言う。

ギャンブルをする時、スロットマシーンに入れる小さなカードがあり、そこから利益も損失も追跡できる。そこから算出すると、このダニエル・ブランクという男は、800,000ドルほどギャンブルに費やしていることになる。

ランドリー署長は言う。

「整備士の自営業をしている彼の給料とは計算が合いません。各被害者とダニエルの関わりを見てみました。すると部品関連だったり、友人の家族だったりと、全てにダニエル・ブランクとの関わりが見えてきました。」

警察はダニエル・ブランクを探す。彼に支出と収入のバランスを証明できる書類を提出さる必要がある。

長時間の事情聴取で、ダニエルは自白する。各事件の詳細を聞いていったため、12時間にも及んだ。ダニエルはリリアンを含む6件の殺人事件全てを認める。

警察はローズのビジョンに出てきたシンディーという名の女性の情報も得る。

ランドリー署長はこう説明する。

「シンディーはダニエルの彼女だったことが分かりました。ローズがウェイトレス姿で見た女性でした。シンディーはカフェで働いていて、ダニエルはよくそこに通ってたんです。ビデオポーカーもスロットマシンもそこにはありましたから。ダニエルはそこでギャンブルをしていたはずです。ローズは恐らく二人とも見ていて、シンディーの名札だけを読んだのでしょう。」

シンディーは、昔屠殺場のあった場所の向かいでウェイトレスをしていた。

ダニエル・ブランクは、リリアン殺害の残忍な詳細を語る。鉄製の椅子を侵入するのに使った後、リリアンをトロフィーで殴った。そして台所ナイフで刺殺したのだ。

検察官が言う。

「ダニエルはリリアンから100ドルほど奪ったと自白しました。私の結論は、金品強奪以外の何かがあるということです。彼は夜中に、わざわざ被害者を起こしてから殴っています。被害者は、殴られることも殺されることも知ることになる訳です。被害者に殺されることを知らせたかったように思います。そうでなければ金品だけ奪って去ればいい。殺すにしても、もっと人道的な方法があります。」

犯罪から2年後経った1999年9月2日。ダニエル・ブランクは第一級殺人罪で有罪となり、死刑判決を受ける。

リリアンの甥ロバートは言う。

「私にとっての一番の救いは、犯人が通りからいなくなったことです。彼が誰かを傷つけることはもうありません。それで満足です。」

4000マイル離れた場所ホノルルから、ローズは犯人以外、知り得なかった事件の詳細を語っていた。

犯人は侵入するのに椅子を使った。
犯人の彼女はシンディーというウェイトレスだった。
犯人の身体的特徴が一致した。
犯人はギャンブル依存症で、その通りだった。
犯人はRiver Ratだった。

犯人逮捕により、地域には平穏な日常が戻る。リリアンの家族にとっては正義がもたらされた。

ローズにとっては超能力の正当性の証明となる。たとえ彼女自身が説明がつかないと感じていても。

「驚いています。嬉しくてウキウキ、満足しています。悪人を捕まえるのは大好きです。」

とローズは笑った。

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