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【超能力捜査】事件解決して逮捕された女性・アメリカ

これは、ある日すべてが変わるまで、自分が超能力者だとは信じていなかった女性の話である。

1980年12月15日22時45分頃、ロサンゼルス郊外で看護師がカージャックされる。目撃者によると、二人の男が両側から黒いピックアップトラックのドアを開け、車内の女性が悲鳴をあげていたと言う。

翌朝5時ごろ、車両火災の通報を受けた警察が現場に向かう。同日午後、取り乱した一人の女性が警察を訪れた。彼女は行方不明者について刑事と話したいと言う。

パトリック・コンメイはロサンゼルス警察勤務20年のベテラン刑事である。彼はその女性の話を聞くことになる。

彼女によると、友人のメラニー・ユリビが夜勤に向かう途中で行方不明になったと言う。彼女はもう一人の友人と共に夜通しメラニーを探した後、彼女が運転していたトラックが炎上したことを知る。それが早朝に警察が車両火災の通報を受けたトラックだった。

メラニー・ユリビは31歳の看護師で、8歳の息子を持つシングルマザーである。彼女がシフトに現れなかったため、勤務先の病院が自宅に電話をかけるが誰も応答しない。彼女は責任感のある人物として知られていた。時間に正確だったため、シフトに現れないことは普通ではなかった。

コンメイ刑事は燃えたトラックから証拠品を探るが何も出てこない。警察はカージャックの目撃者に再度話を聞くと、カージャックした後車は右折をし、少しの間停車したと言う。

警察がその現場をチェックするとテッシュ箱を発見。彼女のトラックにあったものと同じものだと彼女のルームメイトによって証言される。

翌日警察はメディアの介入を依頼。警察は大きな捜査に乗り出し、戸別の聞き込みを開始した。

そのニュースを仕事中にラジオで聞いていたのがエタ・スミスという32歳の女性だ。女性のトラックが発見のニュースを聞いたことで彼女の人生は一変する。

聞き込み捜査をしているニュースを聞くと、まるで誰かが自分に話しかけているようにはっきりと「彼女は家の中にはいない」という声が聞こえた。その考えが頭を通過するや否や、ビデオや映画を見ているような鮮明な光景が映る。彼女に助けが必要なのか何なのか、エタには分からなかった。

瞬間的には他のことを考えられるものの、すぐにその考えがまた脳裏を横切る。なぜこの考えは私の元から去らないのか。

エタはその時のことをこう語っている。

「私には彼女がどこに居るか分かっていました。峡谷の中に進んでいくとカーブが見えて、未舗装の小道がある。そこを辿れば彼女へ行き着く。その奥には丘がある。こんな犯罪要素のあることを経験するのは生まれて初めてでした。小さい頃から今後起こることが見えたり知るはずのないことを知っていたりということはありました。でもそのことを母親に話すと、誰にも話さないように言われたんです。だから自分の中だけにとどめてきました。」

行方不明の看護師のことが頭から離れず、エタは誰かにこのことを話さなければいけないと感じていた。仕事帰り、ある地点を右折すれば家に着き、左折すればすぐに警察署が目の前にある。エタは、警察に話すべきかやめておくべきか、葛藤していた。話したとしたら頭のおかしい人物だと思われるだろう。

でも話さずに誰もこのまま彼女を見つけられなかったら?何事もなかったかのように暮らしていけるだろうか。もし自分が正しいという可能性が少しでもあるのなら・・。

エタは左折した。躊躇しつつもエタはリー・ライアンという刑事に話した。

「話さなければならないことがあります。この行方不明の女性の居場所が見えるんです。」

地図上で指すように言われたエタは居場所を指摘する。そこはとても辺鄙な場所だった。

そのエリアはまだチェックしていないため捜査すると刑事は言う。しかしエタは一刻も早く彼女を見つけたい、という思いから自ら探しに行くことにする。

当時9歳だったエタの息子アンディが言う。

「普段より遅く帰宅した母はいつもと違っていて、何か困っているようでした。」

エタが状況を説明し、行方不明の女性を探しにいくことを告げると子供達は怖がるが、好奇心もあり娘と息子、訪問中の姪が同行することになる。時刻は16時15分頃。12月のため日が沈む前に早急に探す必要がある。

運転しながらエタは子供たちに注意深く探すように言う。

「母は周りを見渡し、空気から何かを感じ取っているようでした。」

ゆっくりと峡谷の頂上へ着くと車を停車。しかし30分ほど探しても何も見つけることはできない。

「何も見えなかったけど彼女を感じ取れた。彼女はこの峡谷に居る。」

そうエタは感じていた。アンディも母の様子を見て、自分達は正しい場所にいるのだと確信していた。

丘を少し下り諦めかけた頃、道路上にタイヤ痕を見つける。降りて地面に触れるとエタは強烈な恐怖を感じ取った。このタイヤ痕はメラニーの車のもので、何か恐ろしいことが起こったのだと確信した。

来た道を少し戻りかけた時、娘のティナが茂みの中で何かを見つけたと言う。

そこで皆でその小道の方へ歩いて行くと、目にしたのは人間の裸体だった。冷たく横たわる彼女の足元に目をやるとナースシューズを履いていた。

エタは警察へとクラクションを鳴らしながら急いで車を走らせる。そこで警察車両とすれ違い、遺体を発見したことを告げる。エタ・スミスは警察の大捜査中の看護師を霊視だけで見つけたのだ。

最初に看護師行方不明のレポートを受けたコンメイ刑事は、リー・ライアン刑事からエタ・スミスという女性が行方不明看護師が見えると言って署を訪れたことを聞かされる。その30分後に彼女は看護師の遺体を見つけたことも。

頭部に大きな外傷を受けたその遺体は、他殺以外には考えられなかった。

コンメイ刑事はエタ・スミスに話を聞くために他の刑事を送る。

エタが言う。

「インタビューは夜遅くまで何時間にも及びました。彼らが私の言うことを信じていたとは思えません。一人は好戦的で椅子を投げたり声を上げたりして私を怖がらせました。私にそんなことができると思う?それなら夫はとっくの昔に亡くなってたわよ。嘘発見器にかけてもいいわよ、証明します。この事件に関して話した以外のことは何も知りません。」

しかし何故かエタは噓発見器に落ちてしまう。彼女は裸足で独房に入れられ、24 時間食べたり飲んだりすることさえできなかった。

子供たちも呼ばれ、話を聞かれた。
 
息子アンディは言う。

「最初はキャンディなどをくれてリラックスした雰囲気だったんです。でも僕の答が彼の望んだ答えではなかったので彼は怒鳴り始めました。死ぬほど怖くてママに会いたいと思ったことを覚えています。」

コンメイ刑事によると、エタ・スミスは峡谷を上がってきた時は何も見えなかったが、峡谷を下りている時に8歳の娘が何かを見つけたと言う。しかし子供たちへのインタビューでは、その証言が完全に一致せず怪しい印象を与えてしまう。

その時点でインタビューは終わり、エタは刑務所に送られた。行方不明だった看護師の殺人罪の容疑をかけられてしまったのだ。

「裸にして調べられ、体腔検査もされました。正しいことをしようとして刑務所へ行くことになったんです。」

犯行現場を捜査していたコンメイ刑事は、エタが逮捕されたことを後に知らされた。自身も彼女がなぜ遺体の場所を知っているのか不思議に思い、話を聞きたいと思っていたためエタの逮捕を聞いて懸念を抱く。

彼はエタの釈放を望みつつ、逮捕の決断をした刑事達と話す。エタが犯人だとは思っていなかったからだ。しかしエタを釈放するためには、真犯人を見つける必要があった。ティッシュ箱と漠然としたカージャック目撃者の証言だけでは十分な証拠とは言えなかった。

遺体発見の24時間後である12月18日、一人の女性の通報によって大きな変革が訪れる。彼女は、看護師の事件に関わり凶器を持っている人物を知っていると言う。

コンメイ刑事は凶器が何かは告げなかったにもかかわらず、この女性は凶器は大きな石だと言った。検死報告書によると、メラニーの死因はバレーボールサイズの石による殴打となっている。彼女は容疑者への恐怖心を表し、最終的には電話を切り、自分の名前を明かすことはなかった。

12月20日、別の通報が入る。その男性も犯人を知っていると言い、コンメイ刑事と駐車場で会うことに合意する。彼が挙げた名前の中から数名に聞き取り捜査を行うと、彼らは犯人の一人から聞いた情報を提供した。

犯人の一人は17歳のノーマン・ウィリス。彼は黙秘権を使い、何も喋ろうとしなかった。しかし彼の両親は息子の友達を名指しする。20歳のルイース・モーガンである。彼は最初は否定していたものの罪を認めた。  

モーガンによると、12月15日、ノーマン・ウィリスと、3人目の男21歳のスペンサー・ネルソンと共に強盗の計画を立てる。そこにたまたま信号待ちで居合わせてしまったのがメラニー・ユリビだった。

モーガンによると、停車した時にネルソンが後部座席に移りメラニーを暴行。彼女を峡谷まで連れて行き、未舗装の小道づたいに歩かせた。車に戻る途中でネルソンがメラニーを始末しなくてはならないと言う。

命を奪うつもりはなかったモーガンは、縛るだけにしようと車にロープを探しに行く。そこへドンという大きな音が聞こえて振り向くと、メラニーが倒れているのが見えた。ネルソンが大きな石で彼女を何度も殴っていた。

その後皆車に戻るが、凶器はネルソンが持ったまま。そして彼らはウィルスの家で彼を降ろしたと言う。その後ネルソンとモーガンは運転を続け、ネルソンが車に火をつけた。そして二人とも歩いて帰宅したと言う。

モーガンは凶器の場所を自供し、自分の彼女の家の近くの溝の中だと言うが、そこに凶器はなかった。

コンメイ刑事は通報してきた女性のことを思い出し、モーガンの彼女だったのではないかと推測。すぐにモーガンの彼女の家へ戻り、通報した女性が彼女だったことを確認する。

彼女は、凶器を渡してもいいが、その場所へは自分一人で行かなくてはいけないと言う。それを認めると20分後に彼女は血のついた石と枕カバーを持って戻ってきた。

モーガンはエタ・スミス、または犯罪に関与した女性については全く触れていなかった。

12月21日、エタは刑務所に入って三日目にしてついに釈放となる。

「急に釈放と言われたので何故なのか分からなかったけど理由はどうでもよかった。とにかくそこから出たかった。」

アンディは言う。

「母は辛そうでした。3日間で体重もかなり減っていたようです。まるで殴られたような姿をしていました。身体的にではなく、感情的に打ち負かされたようでした。」

「二度としたくない経験だったわ。刑務所を経験しているのに再びそれを繰り返す人の気が知れません。」

トラックも凶器も供述どおりの場所で見つかり、他の証言者が言っていることとの裏付けも取れた。

ノーマン・ウィリス、ルイース・モーガン、スペンサー・ネルソンの3人は逮捕される。お金が欲しいことへの彼らの解決策は他人から盗むことだった。

その後エタへの警察からの謝罪は何もなかった。翌年、エタ・スミスは誤認逮捕でロサンゼルス警察を訴える。

自らの特殊な能力による情報を当局に報告して、事件解決に役に立ちたいという彼女の願望は裏目に出て、4日間の収監につながったと、弁護士は陪審員への冒頭陳述で述べた。

ジェームス・ブラッドリー弁護士は言う。

「普通と違っているからといって人権がないことにはなりません。珍しい形で彼女が遺体を発見し、それが成功したからといって殺人罪で逮捕される最もらしい理由はありません。」

裁判官も陪審員もそれに同意した。

裁判官は、彼女が不当に逮捕され、その後 4 日間投獄されたと裁定し、エタ・スミスには26,184 ドルの補償金が払われることになる。

コンメイ刑事は言う。

「私は情報がなんであれ役に立つ情報は歓迎します。実際、超能力を持った人からの協力で事件の解決につながることもよくあるのです。」

最後にエタ・スミスは言った。

「私がメラニー・ユリビを忘れることはありません。彼女に起こったことを忘れることもないでしょう。彼女は不合理な犯罪の被害者です。私は自分が取った行動に後悔はありません。なぜあの時あのような行動を取ったのか自分でも分かりませんでしたが、もし今日同じことに遭遇したら同じ行動をするでしょう。」


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