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50年後に見つけた産みの母は幼い頃TVで見ていたスターだった


2人の母

リサ・ライトは生まれてすぐに養子に出される。養母は産みの母に感謝をしていて、よくこう言っていた。

「実のお母さんはあなたを愛していた。でも若くしてあなたを産み、自分では育てられないことを知っていたの。私はとても子供が欲しかった。そしてあなたを育てさせてくれた。あなたは捨てられたんじゃない。これがベストな選択だったのよ。」

オープンな養子縁組ではなかったため、実母と養父母はお互いを知らず、お互いの情報も見ることはできない。

リサは産みの母に対してのネガティブな感情は持ったことがなかった。ただ自分は家族の中でただ1人誰にも似ていない、という気持ちはあった。

愛情に満ち溢れ、幸せな人生を歩んだ彼女は、産みの母を探そうと思ったこともなかった。成長したリサは自身の息子にも恵まれ、54才になっていた。

自分のルーツ

優しかった養父母も2006年と2010年に亡くなってしまい、リサは孤児のような寂しい気持ちになる。そんな時息子から、産みの母を探してみたら?と言われ、DNA検査を受けてみることを勧められた。

その結果、DNAマッチにて叔父として現れた人物に連絡を取り、電話で話すことになる。心臓が高鳴りながらもリサは、自分の誕生日、産みの母が若くして自分を産んだこと、実母はハリウッドを夢見ていたと聞かされていることを話す。

すると叔父は「そこでストップ」と言った。リサは、二度と連絡をしてくるなと言われるのだと思った。

しかし叔父は、「リサ、君は私の姪だ。この時点でもうお気に入りの姪だ。ずっと探していたよ。皆が探していた。」と言った。驚くのはそれだけではなかった。産みの母親はリサと同じLAに住んでいると言うのだ。

そして叔父から聞いた産みの母の名前を検索してみると、彼女の写真が見つかった。息子以外で自分そっくりの人を見るのは初めてだった。そしてすぐにどこかで見たことがある顔だと気付き、その顔を思い出した時リサは信じられなかった。

「ちょっと待って!」

子供の頃に毎週見ていたお気に入りの番組「That's My Mama」の女優、リン・ムーディだったのだ。リサはその番組を見て育ったと言っても過言ではない。リサが9〜10才頃の1970年代半ば、誰もがリビングルームでその番組を見ていた。

信じられない展開

その数分後のこと。電話のベルがなり、電話の向こう側の女性は言った。

「もしもしリサ・・私の娘ですか?」

リサは叫んだ。

「信じられない!私のお母さんですか?」

「そうよ、Sweetie、あなたのお母さんよ。」

実母は弟からの電話でリサのことを聞かされた時、封印されていた深い痛みが襲ってきて、出産をしているかのような状況に陥ったという。足の力が抜け、立っていられなくなり、床に倒れ込んだのだから。彼女は泣き叫んでいて、一緒にいた妹もどうしてよいか分からなかった。

リンにとって、長いこと夢見ていた瞬間ではあったが、全く予期していなかった展開だったのだ。実母はいつ会える?と聞く。リサはいつでも!と答え、2人は翌日に会うことになる。

リサは実母にカードを持っていきたいと思ったが、6月だったので母の日は過ぎていた。そこで「お母さんへ」と書いた誕生日カードを渡すことに決める。彼女の誕生日ではないけれど、母と娘が初めて会い、関係が始まるという意味を込めての誕生日だ。

実母の苦悩

リンは当時のことを語った。カリフォルニアに引っ越し初めての一人暮らしで学校に通っていた頃に妊娠が発覚する。リンの家族は父親はシカゴで医者をしている保守的な家庭で、妊娠した女性たちが過ごす施設に送られる。

リンは18才で出産をし、娘は養子に出すことになる。出産後はリンが赤ちゃんの顔を見なくていいようにリンの顔は布で覆われた。顔を見てしまったら手放せなくなることを恐れてのことだった。

娘の顔は見えなくても泣き声は聞こえた。ただただ、ごめんなさい、ごめんなさい、と言うことしかできなかった。

リンは娘を一目も見ることなく養子に出すことになる。娘リサのことを忘れたことはなく、一生を罪悪感と共に生きることとなる。リサがどうしているのか、お腹は空いていないか、生きているのか、幸せなのか、予定どおりその後養子に出されたのかさえも分からなかったのだ。

養子に出すためには、一切の連絡を取らないことに署名しなければいけなかった。その後も暗黙の了解のように、家族は誰もリサのことは話題にしなかった。

リンはその後ハリウッドで成功した。しかし、どんな大きな役をもらっても、娘が見ているかも?といった考えには至らないほど、心の傷は深く罪悪感は大きいものだった。それを背負い、どのように生きるべきか苦悩しながらの人生だった。

新しい家族のつながり

彼女はその後、結婚もせず子供も産むこともなかったため、リサが生涯でただ1人の子供となる。リンは娘だけでなく、孫までできたことをとても喜んでいる。

リンは、成長したリサを見て、自分の決断が正しかったことを痛感した。そして娘との対面が深い心の傷と大きな罪悪感からの癒しのプロセスになっていると言う。

リサの友達が言う。

「ねぇ昔、あの女優さんあなたと似てない?って私言ってたよね」と。

「似てたに違いないわね」

と、リサは笑う。まさか実母を見ているとは思わなかったけれど。

その後リサは実父との対面も果たす。実父側には4人の姉妹がいた。

実母の出ていた番組「That's My Mama」を観ていた頃は、まさか実母を観ているとは思いもしなかったが、もし知っていたとしたら、番組のタイトル通り、「That's My Mama」なのである。



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