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歌手だったと言う5歳娘の家族の暗い過去

アメリカ、サウスカロライナ州。ジーニーとダグラスには6人の子供がいる。末っ子がオリビア5才だ。

誰もが知り合いの小さな田舎町での生活を専業主婦のジーニーは楽しんでいた。オリビアが生まれる前、すでに5人の子供がいたジーニーは、30才以降に子供は持ちたくない、今の子供達との生活をエンジョイしたいから、と夫に話していた。ところが神様には別の計画があったと彼女は表現する。30才で6人目を出産したのだ。

オリビアは他の兄弟の世話をしようとする母性のある子で、幼稚園でも、怪我をした子がいれば先生のところへ連れて行き、他の子達の面倒を見ようとする。

一方で彼女は、母親が買い出しに行くのにも一緒に行きたがり、ジーニーから離れようとしない。車の鍵の音を聞いただけでも反応し、一緒に行くと泣き叫んだ。2度と母親に会えないかのように。

ある日ダグラスが仕事場からギターを家に持ち帰った時のこと。オリビアが突然ギターを弾き始める。彼女は一度もギターを弾いたことがなければ、レッスンを受けたこともない。家族は彼女がギターの持ち方を知っていることにも驚いたが、彼女はさらにノブを調節し、歌い出した。その歌を知っているかのようにリズムに乗り、とても自然に。家族は彼女が歌うのをそれまで聞いたことはなかった。

ジーニーがどこで歌を習ったのかと聞くと彼女は言った。

「私歌手だったの。最初はカリフォルニアに住んでたけど、NYに引っ越した。ここに来る前に家族がいたの。」

その家族とは誰かと家族が尋ねると、インディアンと一緒に住んでたいたと言う。

「あなたはインディアンだったの?」

「ノー、白人の女の子だった」

5歳児にしてはたいした想像力だと思いながらも、ジーニーはさらに聞いてみる。

「どうやって移動してたの?車やバイク?それとも飛行機?」

「ノー、ママ。ワゴンと馬で移動してたの。」

ジーニーは度肝を抜かれた。たった5才の子が何故1800年代、あるいは1700年代を知っているのだろうと。少なくとも両親は教えていない。

カリフォルニアやワゴンの話はまだ可愛かった。しかし彼女は家族は殺されたのだと言い出す。兄弟がいたが殺され、彼女と妹はインディアンと一緒に住んでいたのだと。

インディアンは優しかったかと聞くと、優しい人もいたが、意地悪な人もいたと言う。

「どっちのインディアンと長く一緒に住んでたの?」

「優しい方。意地悪な方は嫌いだった。彼らが私の家族を殺したの。」

オリビアの姉の一人が、家族はここにいるし死んでないよ、と言うと、彼女は肩に重荷を背負っているように、悲しい表情で見上げた。

普段からジーニーはオリビアの髪や顔をなでたりしていたが、この頃から急にあごを触られるのを嫌がるようになる。

オリビアに子供はいたかと聞くと、13人から100人くらいで、たくさんの子供たちの面倒を見ていたと言う。ジーニーは、部族の子供たちの面倒を見ていたのだろうと捉えた。

自分の子供は何人いたのかと聞くと

「3人いた。インディアンの息子が2人いたけど一緒に連れてくることはできなかった。でも娘が1人いた。」

と言う。

ジーニーはこれまでそのようなことを信じなかったが、5歳にしては娘が知り過ぎていると感じる。娘は輪廻転生しているのか・・。バプティストとして育った夫婦には、輪廻転生の概念はない。しかし娘が何かを訴えようとしていて、助ける必要がある。

ジーニーは、インディアン部族のメンバーである友達に電話をする。彼らは輪廻転生を信じている。彼女はジーニーに、オリビアがかつて誰だったか、アイデンティティ探しを助けることがいかに重要かをアドバイスした。

オリビアは、姉は彼女の腕の中にいて、「目を覚まして。お願い、行かないで。」と叫んだが、死んでしまったと言う。

5歳のオリビアは言う。

「姉妹がたくさんいたの。でも死んじゃって1人だけ残った。マリアンが。」

娘が、妹が自分の腕の中で亡くなったことを詳細に覚えているのは胸が潰れる思いだと、ジーニーは涙ながらに話す。

「最初はどう力になればいいのか分からなかったけど、リサーチで何も失うものはない、ただ娘を助けたいと思うようになりました。」

ジーニーは、インディアンに連れ去られた開拓者のティーンエイジャーなどのキーワードで調べていく。60人以上の女性開拓者のうち、オリビアが話してくれたことの詳細全てにマッチするのが、オリーブ・オートマンだった。そして彼女の人生についての本も探すことができた。

その本によると、1851年、モルモン教だったオリーブ・オートマンとその家族は、ほろ馬車隊に加わり、西部カリフォルニアに向かう。家族には7人の子供達がいた。川のところまで来た時、彼らはそこで一夜を明かすことを決める。そこへインディアンの集団が来て、オリーブの家族を殺してしまう。オリーブとその妹マリアンを除いて。

オリビアが妹の名前はマリアンだと言っていたのと一致する。

インディアンの集団は、オリーブとマリアンを自分達の部族へと連れていく。彼らは姉妹を拷問し、真似てバカにし、唾を吐きかけ、奴隷のように扱った。それはまさにオリビアが言っていたことだった。

オリビアは、彼らは自分をとても憎んでいて、とても意地悪だったと表現した。

娘が言ったこと全てが本の内容と同じだったことをジーニーは信じられないでいた。そしてオリーブの家族が殺されたことを読んだ時、それがオリビアの捨てらる恐怖の原因だと気が付く。

1年後、オリーブとマリアンはモハベと呼ばれる別の部族のインディアンの元へ売られる。彼らはとても優しく、姉妹を愛情を持って面倒を見てくれた。オリビアが優しいインディアンと一緒に住んでいたとも言っていたのとマッチする。

モハベインディアンはオリーブとマリアンの顎にタトゥーを施した。それは彼らの集団に属すると言うサインだった。オリビアが顎に関してなぜ過敏になるのか、完璧につながる。

「彼女が歌手だったと言った時、よく理解できませんでした。本でオリーブ・オートマンの人生を読むまでは。オリーブとマリアンはモハべインディアンのために讃美歌などを歌っていたんです。彼らはその対価として姉妹にビーズなどをあげていました。姉妹はそれを満喫し熱中していたのです。オリビアが歌手だったと言ったのもこれで説明がつきます。」

本の中では、オリーブが部族の子供たちの面倒を見ていたことにも言及されていた。オリビアは13人から100人の子供達と言っていたが、それも一致する。

数年後、干ばつが深刻な作物不足を引き起こし、当時10歳だったマリアンは、モハベ族の他の多くの人々と共に餓死した。

オリーブ・オートマンが捕らえられてから5年後、陸軍が白人の女の子がインディアンと一緒に住んでいるということを聞きつける。彼らはインディアンの酋長と会い、彼女を取り戻す交渉をする。

オリーブは、モハベ族を家族のように思っていて最初は戻ることを拒否。しかし殺されたと思っていた兄ロレンソが生き延びていて、オリーブ達を探していたことが分かると白人社会へと戻っていく。

ジーニーは言う。

「オリビアがオリーブ・オートマンだと100%確証はできないけど、全てがパズルのように当てはまります。」

ジーニーはオリビアにオリーブ・オートマンの写真を見せる。写真の女性に見覚えはあるか聞いてみると彼女は言った。

「お顔が私みたい」

ジーニーが、「そう思う?」と聞くと、

「彼女は私の顔だよ」

と言う。よく見ると骨の構造がほぼ同じだ。

「その瞬間だと思います。オリビアが気づき始めたのは。自分の前世を見つけたと思います。私達も繋がりができてからは、以前より娘の力になる準備ができていると思います。」

オリーブ・オートマンには多くの名前があった。悪いインディアンが呼んだ名前のいくつかは良いものではなかったが、彼女が覚えているのは、リーフ・フェザー。

ジーニーは、オリーブ・オートマンの人生を追憶することにする。川に羽根を投げて。オリビアを苦しめている記憶を手放せるように。彼女が前を向いて生きていけるように。羽根はオリビアがインディアンと一緒に過ごしたの人生を現す。

彼女は5歳にして、2つの家族を亡くした記憶を持つ。本来の家族と、一員となったインディアンの家族だ。

ジーニーは言った。

「現在の人生では誰も家族を引き離さないことを知ってほしいのです。私たちはここにいていつも彼女の近くにいる。何より彼女をとても愛していることを。悲劇は終わったことに気づいてほしいのです。今あるものを楽しんでほしい。彼女が自分を前世から切り離せることを望んでいます。母親の私から離れても大丈夫だと分かるように。普通の子供になって子供時代を楽しんでほしい。もう悲劇も前世での責任も、何も心配しなくていいんです。オリーブ・オートマンは素晴らしい忍耐の精神があります。オリビアも同じ精神を持っていると信じています。」

3ヶ月後、カウンセラーから、オリビアは分離不安障害で苦しんでいると診断される。ジーニーはその理由は前世記憶以外にはないと思っている。

家族皆が、彼女が対面していることも、その不安がどこからきたものなのかも理解していて、進むべき道に進んでいる。ゆっくりではあるが、毎回少しづつジーニーは、買い出しの時間を伸ばすことができている。


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