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年収コンプレックス

前職の同期会にて、同期にめちゃくちゃイケメンの彼氏がいることが発覚した。

彼女はもうめちゃくちゃな美人で、多くを語らず、彼氏がいるかどうかもはぐらかしていた。
別の同期が、休日に彼女がイケメンと一緒にいるのを目撃したことにより発覚。
どこで出会ったのか聞くと、「友達が起業していて、その起業パーティーで」だそうだ。
彼女は我々と違う世界線にいることを知らしめて、その話は終わった。まあ、それも本当の話かは知らないけれど。
美人は大変だ。でも、その才能を持っていない人間からしたら欲しくてしょうがないものだ。


学生の頃、自分の醜悪さに絶望していた。美しくなりたい、顔が別人になってしまえばいいのにと思った。可愛くないと価値がないと思わされていた。クラスメイトに、テレビに、雑誌に、世間に。
その割に無駄にまじめで高校のときはしっかり校則を守り、メイクは一切しなかった。合法であることがただひとつの救い。

大学に入って、メイクするようになって、毎朝鏡を見るたびに憂鬱になった。付き合った男の子に見た目を悪く言われ、死にたくなった。
可愛くなければ価値がないと証明されたんだ。


それなのに、社会人になったら見た目のことなんてどうでもよくなった。「女は仕事ができない」と平気で言われる男社会で、仕事ができるかどうかだけが価値基準だった。誰も私に女を求めていなかったからかもしれない。それが吉なのか凶なのか。私は仕事ができなかった。


どうして私はコンプレックスを持ち続けてしまうんだろう。自分の持っていないものを求めても苦しいだけなのに。

多分、昔から親に「上には上がいる」と言われ続けていたからだと思う。
どれだけテストでいい点を取っても褒めてはくれなかった。「上には上がいる」(だから満足するな)と、さらに上を目指すよう言われた。
一番にならなきゃ意味がないのに、一番になることはできない。


新卒2年目で年収が400万を超えたことは嬉しかった。
400万が高い年収だとは思わない。もっといい会社、もっと大きな会社、営業職とかでいい成績を出せばもっともらえる人はたくさんいる。
それでも「平均より上」なのが嬉しかった。
中学生で精神的な疾患を持った私は、「テストでいい点」はおろか、平均点を取ることも難しくなってしまったから。
平均より上の年収を得ることで、社会的に認められた気がした。
まあ、それは大半が残業によって出た成果だったのだけれど。

2年目の冬、うつ病と診断された。
休職して、そのあとは時短勤務で働いた。
年収は250万まで下がった。働いていないからしょうがない。
でも、私には本当に価値がない気がした。
結局無理をしないと私は「平均より上」になることはできなかったのだ。


障害者手帳を取得して、障害者になって、多様性が保たれた社会であってほしいと以前より思うようになった。
でも、私の思想が一番多様性を認めていない。
とにかく求められることで上を目指さなければならない、それ以外でどうやって自分を認めたらいいのかわからない。

世間が求めるものを、私が求めるものを簡単に手に入れてしまう人が羨ましい。
上には上の苦しみがあったとしても、私は上に行くことさえできないのだ。
一生しょうもないところに居続けるのだ。
誰にも認められず、誰にも認知されないところで。

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