田鶴 滂

tazu yutaka 路線、駅などの擬人化シリーズ『Train of thought…

田鶴 滂

tazu yutaka 路線、駅などの擬人化シリーズ『Train of thought』思考の列車、転じて思考回路もし路線たちが思考を持っていたら何を考えているんだろう、それが気になってはじめたシリーズです。

マガジン

  • 推し路線プレゼン企画

    「規制緩和後に乗りに行きたい!」とか、「またいつもの日常に戻ったら毎日乗る沿線」だとか、旅行、通勤、通学など、想いの詰まった熱い推し路線プレゼンをフォロワーさんより募集し、その路線の擬人化を描く企画です。 たくさんのプレゼン、ありがとうございます! (現在募集は停止しております)

  • Train of Thought SS

    路線さんたちの日々の切り抜き・小説版

記事一覧

露の庭

中心街からはずれたところに、水路から水の流れる音が聞こえる閑静な住宅街が広がっている。古くからこの土地に住む人ばかりの家や商店が並ぶその一帯から、さらに山に向か…

田鶴 滂
4年前
3

2017/11/30-12/1 都営大江戸線

冬、年末にかけては財布の紐が緩むんだよなあ、と浅草先輩がぼやく。そういえばこの人たちのプライベートな話って聞いたことないな。自分は一年のうちに特別にお金が減る時…

田鶴 滂
5年前

2017/11/23 青梅線

「涙を流す理由は800通りあるんだよ」 中央本線が突拍子のないことを言いだすのはいつものことだった。 またどうせ変な本でも読んだに違いない。たとえ時間が人よりあろう…

田鶴 滂
5年前
1

2017/11/17 西武新宿線

いつの間にか季節は冬の入り口に立っていた。去年、これで最後、と安比奈線から貰ったマフラーを引っ張り出して巻く。首にかけるだけだとすぐ解けるので、首元で一度こま結…

田鶴 滂
5年前

2017/11/16 北海道新幹線

初めての関西、初めての古都、京都! 日本の古き良き街並み、木造建築、その他諸々沢山吸収して帰らないと!と意気込んで京都駅に降り立った俺は、 「あっつ!!!」 出鼻…

田鶴 滂
5年前
1

2017/11/15 田園都市線

早朝5時、目が覚めて起き上がる瞬間、すこし目の前が眩んだ気がした。寝ても寝ても身体は毎日重い。疲れているからだ。俺も、俺を使う人たちも。 それからのことは曖昧にし…

田鶴 滂
5年前

JR北海道・四国の話

【Web再録】Train of Thought vol.1 | 田鶴 https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=71659754

田鶴 滂
5年前
+21

企画

田鶴 滂
6年前
1
露の庭

露の庭

中心街からはずれたところに、水路から水の流れる音が聞こえる閑静な住宅街が広がっている。古くからこの土地に住む人ばかりの家や商店が並ぶその一帯から、さらに山に向かって上ったところに、地元のごくわずかな人間だけが知る、樹々に囲まれた大きな日本家屋があった。明治から改修・増築を繰り返しているその屋敷は、庭の広さを含めると敷地は千坪にも及んだ。
広い庭や、林の整備はこの家に住む者たちにの重要な仕事の一つで

もっとみる

2017/11/30-12/1 都営大江戸線

冬、年末にかけては財布の紐が緩むんだよなあ、と浅草先輩がぼやく。そういえばこの人たちのプライベートな話って聞いたことないな。自分は一年のうちに特別にお金が減る時期というのがないので不思議に思うのもあり、素直に聞いてみることにした。他にすることもないし。

「なんでですか。」

「なんでって、ゲームの新作がたくさん出るだろ。」

まるで、まさか買わないのかよと言いたげな顔で言う。買わねえよ。そういえ

もっとみる

2017/11/23 青梅線

「涙を流す理由は800通りあるんだよ」
中央本線が突拍子のないことを言いだすのはいつものことだった。
またどうせ変な本でも読んだに違いない。たとえ時間が人よりあろうと好きでもないミステリ以外の本は読みたくない俺に対し、こいつは手当たり次第何でも読み漁る。何を好きで何を嫌いなのかはこいつの口から聞いたことがない。今回は、どうせ変な恋愛エッセイだか女性向け自己啓発だかを読んだに違いない。
涙の理由なん

もっとみる

2017/11/17 西武新宿線

いつの間にか季節は冬の入り口に立っていた。去年、これで最後、と安比奈線から貰ったマフラーを引っ張り出して巻く。首にかけるだけだとすぐ解けるので、首元で一度こま結びをする。安比奈がいた頃はなんだかよくわからないままに綺麗に結ばれていた。何度も口うるさく結び方を教えられたが結局わからずじまいだった。

日はとっぷりと暮れてしまっている。15時、日が傾いたと思ったらそこからはあっという間だった。いつもは

もっとみる

2017/11/16 北海道新幹線

初めての関西、初めての古都、京都!
日本の古き良き街並み、木造建築、その他諸々沢山吸収して帰らないと!と意気込んで京都駅に降り立った俺は、
「あっつ!!!」
出鼻を挫かれていた。
「そんな分厚いコート、まだこっちじゃ早いですよ」
「こっちの駅員さんコートすら着てないですもんね…」
東海道先輩はというとまだ上着すら着ないで、シャツにベストという出で立ちだ。さすがに肌寒いんじゃないかと思ったが、そうい

もっとみる

2017/11/15 田園都市線

早朝5時、目が覚めて起き上がる瞬間、すこし目の前が眩んだ気がした。寝ても寝ても身体は毎日重い。疲れているからだ。俺も、俺を使う人たちも。
それからのことは曖昧にしか覚えていない。世田谷が用意してくれる朝ごはんも味どころか内容すら覚えていない。部屋の中も外も、目の前がぼんやり白く光っているように眩しく感じて、もしかして初雪かな、なんて初雪には暑すぎる外気を纏って街を歩いた。外気が寒かったか、そうでな

もっとみる