23番目の男

「わかるか?」
俺は銃口を向けつつ少年に問う。彼は焦点の定まらない眼で俺を見上げながら答えようとする。
「わか……わか……る」
「そうか、わかるか。何がわかったんだ?」
「で、電車は、ゆ、ゆっくりやってきて、つ、月を食べてしまう。は、灰い」
「わかった」
ビビョビョビョビョ! 俺はニューロデストロイヤーの引き金を引き、少年の頭にニューロン破壊光線を照射した。
「イビョビョビョビョ!」
少年は白目を剥き、耳から煙を出し、そして動かなくなった。こいつも『理解者』か。今月で22人目だぞ。一体どうなってやがる。

 西暦2123年の日本は、理解や共感は理解共同体に管理されており、許可なき理解には直ちにニューロン破壊光線が照射される。こうなったのは50年前、理解者を名乗る4人組が世界の理を理解し尽くし秩序と混沌の境界を破壊した為だ。彼らのせいで理解活動が精神と世界の崩壊のトリガーになってしまったのだ。

【続く】

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