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小説『ヴァルキーザ』 20章

20. ロータール

マーガス国の都アルカンバーグを発った冒険者たちは、旅を進めるうちに広い野原に入った。

この一帯は、ロータールと呼ばれる場所だ。

野には風が強く吹いている。

自由都市ライゼルに着くまでには、まだしばらく、このロータールを歩き行かねばならない。

くぼ地にさしかかったとき、イオリィが、野のただ中にぽつんと立つ一体の人影を認めた。

それは、全身を甲冑かっちゅうで覆った騎士だった。

騎士は銀色のよろいに、剣と盾を装備し、大きな騎士団旗を立て持っている。

「ライゼルの騎士でしょう」
アム=ガルンがささやく。

「近づいてみよう」
エルハンストが応じる。

ユニオン・シップの一団がおそるおそる彼に接近すると、騎士はかぶとの奥から輝く眼で、風の吹き付けるなか、大声を張り上げて団に話しかけてきた。

「その中に、ユニオン・シップのグラファーン殿はおられるか?」

問いかけに応じて、グラファーンが進み出る。
「私が、グラファーンです」

騎士は剣をしまい、兜の覆いを開け、手を差し出す。

「お目にかかれて光栄です。私は、ライゼル騎士団の、スターリス=エルヴンバートと申します」

グラファーンはスターリスが握手に差し出した手を握った。

スターリスは、若者の騎士だ。

彼は、グラファーンに申し出た。
「私は、ライゼル騎士団の長の命令を受けて、あなた方の一員となるためにつかわされました。私の加入を引き受けて下さいますか?」

「はい」
グラファーンは答えた。

「ありがとうございます。では、私は、このロータールの野で誓約致します。ライゼルの騎士スターリスは、ここに、ユニオン・シップの一団員として、団に常に忠実であることを誓います」

こうして、ロータールで、ユニオン・シップの7人目の仲間、スターリスが団に加わった。


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