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小説『ヴァルキーザ』 21章

21. ライゼル

ロータールの野で、ライゼル騎士団のスターリスを仲間に加え、7人となったユニオン・シップは、騎士団の本拠地ほんきょちの自由都市ライゼルに向かった。

そこは一種の自治都市のような場所だが、もとは或る騎士団の駐屯した砦に由来する都市まちである。その或る騎士団というのが、他ならぬライゼル騎士団の元型となった、東方由来の宗教騎士団だった。

現在、ライゼル騎士団はマーガスと盟約を交わして共存しており、騎士団の領地はロータールを緩衝地帯かんしょうちたいに、マーガス国の領地と接する場所にあった。

両者は協定により、互いに、国境にはごくわずかの数の監視兵しか置いていない。

ライゼルの街に着くと、街のすぐ入口にいる2人の市民が道のはしへよけて、スターリスたち一団に道をあけてくれた。

スターリスは、その2人に挨拶あいさつをした。

「やあ、キアック、それにグローバー!」

スターリスに案内されて自由都市ライゼルに入ったユニオン・シップは、ライゼル騎士団のすべての団員と会うことになった。

都市の大聖堂に導かれたユニオン・シップは、その大伽藍だいがらんの中央で、2列に向かい合って立ち並んでいる、甲冑を身にまとった騎士たちの、丁寧な儀礼を伴う歓迎を受けた。

「ライゼル騎士団長のローレットです」
列の端にいた騎士の一人が歩み出て、名を名乗った。

ローレットはそれから、ブラウド、フォレス、アルザー、ライアス、シュナードという名の騎士をそれぞれ呼び出して紹介した。

「これらは、団の各隊の隊長をつとめる者たちです」

迎えの式が終わった。

そして、ライゼル市の近くにある「飛竜の洞窟どうくつ」と呼ばれているローレリア鉱山を占拠し前線基地と化して市をおびやかすエルサンドラの前線の軍への対応を話し合うための会議が、ライゼル騎士団とユニオン・シップとの間で行われた。

会議にはローレット騎士団長と、ブラウド、フォレス、アルザー、ライアス、シュナードの各隊長、そしてスターリスと他のユニオン・シップ団員たち、また、その他のライゼル市民たちが出席した。

会議のなかで、ライゼル市の防衛のため、エルサンドラの前線基地を無力化する作戦に関する話し合いが行われた。

まずライゼル市の同盟国であるマーガス国、西方ミリヴォグ族、南部植民都市同盟が共に参戦する事を、出席していた各勢力の代表者の誓約せいやくにより確認した。

そしてライゼルの軍勢自体に関しては、誰がライゼル騎士団の支援隊であるライゼル市民兵団を率いるか、という話になった。

会議で指名されたのは、テンスという名の若い戦士だった。テンスはとくに戦術指揮にひいでた、かなりの才能の持ち主だ。

騎士団長ローレットは、ユニオン・シップの団員たちを見た。

「グラファーン殿、テンスと行動を共にして頂きたいが、構いませんでしょうか?」

「構いません」
グラファーンは答えた。

「よろしい。では、民兵団は、テンス指揮官とあなた方にお任せしましょう」

グラファーンはさらにライゼル騎士団と共に、エルサンドラ軍の前線基地であるローレリア鉱山への、より具体的な作戦を練った。



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