小説『ヴァルキーザ』 26章

26. 北方の旅路

ユニオン・シップ団は、凍いてつくような冷たい風が襲いかかる北方の、黒い水面の氷雪海ひょうせつかいの海岸を歩いた。

一面、灰色の空の下、ときにちらちらと、ときに吹雪のようになって舞う雪と悪戦苦闘しながら、一団は進んでゆく。

路の途中で幾度か、死霊騎士デスナイトと遭遇した。

エルサンドラの遣わしたこの魔物を、ユニオン・シップは苦闘しつつ退治し、前途を切り開いていった。

捉えた対象に瞬時に死をもたらす呪文、死の呪文デススペルを駆使するデスナイトは強敵だった。

もし、アム＝ガルンが新たに使えるようになった「復活リザレクション」のメディアス(魔法)や、「運命の砦」で手に入れた、蘇よみがえりの魔法薬が無かったら、冒険者たちは全員、旅路の途中で全員死んでいただろう。

だが一団は、この旅をやり遂とげた。

地図の示す標章マークによれば、旅路の終わりかけの位置に着いたところ、前方に、一人の強力なデスナイトが立ちはだかった。

デスナイトは低いくぐもったような声を放った。

「私の名はモルダック！　ユニオン・シップよ、お前どもに速やかな死をくれてやる…」

そして死霊のその男は、デススペルを次々と唱えてきた。

モルダックの呪文に抵抗しながら、グラファーンとスターリスが、まず第一撃を浴びせる。第二撃はエルハンスト、そして第三打はイオリィとラフィア。

運命の砦での戦利品で、みながそれぞれ装備している魔法の武器が次々と、デスナイトの硬い装甲をものともせずに魔法の力を帯びた打撃を与えてゆく。

モルダックから幾度か反撃されたものの、グラファーンたちはこの死霊騎士を倒すことに成功した。

ユニオン・シップは旅装を整え直し、先へ進んだ。