小説『ヴァルキーザ』 29章

29. 試練の谷

グラファーンたちは、両側が岩の絶壁ぜっぺきとなっている狭い谷底の道を歩いて行った。

ここは「試練しれんの谷」

時の城ゼーレスの城門を開くのに必要な「時の鍵」が隠されている場所だ。

ここは怪物モンスターたちに守られて、数々の宝物が隠されてもいる。

地の底を縫ぬうようにして蛇行しながら延びる狭い道をたどりながら、グラファーンたちは谷の奥へ向かった。　

この試練の谷の道は、落石も時にあり、今までのどの冒険にも劣らず危険な行程となった。だが、何よりも危険な障害は、やはり怪物だった。

谷底の道には巨大な恐竜ディノサウルスが配され、所々で、単体ずつで冒険者たちに襲いかかってきた。

恐竜たちは、強力な牙と尾による攻撃をしてきたが、強くなっていたユニオン・シップの冒険者たちは、たやすくこれを退けた。
冒険者たちは、ついに谷の奥までたどり着いた。

そこに、因縁の宿敵、竜ドラゴンのゲルグースがいた。

ゲルグースの後脚うしろあしの足元には、小さな宝箱があった。
中に入っているのは「時の鍵」だろう。

ゲルグースは吠えて、怒鳴ってきた。
「今度こそ、貴様らを焼き滅ぼしてやる！」

「うるせえ！」
エルハンストが怒鳴り返し、両者は戦いに入った。

エルハンストが、竜の翼に魔法の大剣で斬りかかる。

次いでラフィアが矢を射て、竜の首に命中させた。

イオリィが魔法の槍で、竜の前脚を傷つける。

ゲルグースは魔法使いを先に攻撃しようと、ゼラに向けて呪文「 竜火炎ドラゴンブレス」を唱えてきた。

逆巻く炎を浴びてゼラは大怪我をしたが、命を保ち、すぐにアム＝ガルンの「治癒ヒーリング」の白魔法で怪我を治してもらった。

グラファーンが竜の注意を外らすため「魔法弾撃マジックブラスト」の呪文を放ったが、竜はこの作戦にはひっかからなかった。

しかし、次いで騎士のスターリスが魔法剣で竜に打撃を与えると、苦痛に喘あえぎながら騎士を蹴り飛ばした。

その隙にラフィアが竜の急所を捉えて魔法の小剣を突き、
ゲルグースは気を失い倒れかけた。

間髪を入れずに他の冒険者たちが次々に剣や槍などを竜の体に突き立てたので、竜のゲルグースは絶命した。

ユニオン・シップは、竜を退治した！

冒険者たちは「時の鍵」や他の宝物などを持ち帰り、道を引き返して谷を出た。