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小説『ヴァルキーザ』 19章(7)
翌朝、宿所でグラファーンは目覚めて、タイモス王の親書を受け取った後のことを考えた。
親書をすぐにイリスタリアに持ち帰る者たちと、「自由の宝冠」の探索を続けて先へ旅する者たちと、団を二手に分けなければならない。
そのことでグラファーンは思いをめぐらせた。
誰をイリスタリアに還すか、
誰を宝冠探索のさらなる旅に随かせるか、
・・・
グラファーンは悩み、そのことをアム=ガルンに打ち明けて相談してみた。
話を聞いたアム=ガルンは微笑んだ。
「大丈夫ですよ、グラファーン。さっき、私のもとに知らせが届きました。アルカンバーグに『南の海路』経由でやってきた、イリスタリアからの別の使者が到着したとの事です。彼に、これからタイモス王より拝受する親書を託し、船でイリスタリアに届けてもらいましょう」
いま話題に出た、海路よりの新たな使者は、ロディという名で、まったく正式なイリスタリアの外交使節だった。
王宮でタイモス王から親書を受け取ったアム=ガルンは、王の承諾を得て、それをそのまま、外交使としてタイモス王を訪れたロディに預け渡した。
ロディはアム=ガルンに頷き、そしてタイモス王と王妃セシル、王子アルドラ、王女シモンたち王族に外交上の丁寧な挨拶を奏した。その後ロディは、すぐに船に乗って、イリスタリアに戻っていった。
それからタイモス王は、「自由の宝冠」をユニオン・シップが探求していることに気をお遣わしになり、ユニオン・シップにマーガス国領内の自由な通行を許可して下さった。
そしてかわりに王は、ユニオン・シップ団に、マーガス国にも被害を及ぼしている「魔の雲」を放ったエルサンドラとその軍勢を討伐するよう、依頼された。
グラファーンたちは気を引き締めて、その依頼に応えることを王の御前で誓約した。
アルカンバーグでの用事をすべて終えたユニオン・シップの一団は、都を発った。そして西方にある都市、ライゼルがその先に立つ平原、ロータールを目指して歩いた。
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