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小説『ヴァルキーザ』 19章(5)


アルカンバーグ地下牢ちかろうの脱走モンスターたちを見事に退治したグラファーンたちは、地上に通じる、もと来たとびらを開いて外へ出た。

グラファーンは、牢番ろうばんであるマーガスの兵士たちに、王が与えた、牢破りを討つ使命を果たしたことを伝えた。

牢番のアレンとシャバットが確認した後、非常警戒体制ひじょうけいかいたいせいかれていたアルカンバーグ地下牢は再び、もとの通常の警備けいび体制に戻された。

グラファーンたちを牢まで案内した役人のヨークから王宮に報告が上がり、グラファーンたちの功績こうせきはタイモス王によって認められた。

「ユニオン・シップ団の皆さん、じつに素晴らしい仕事をされました。ありがとう。お礼を申します」
王は喜ばれた。 

グラファーンたちユニオン・シップも喜んだが、完全に安心するにはまだ早かった。

王はグラファーンたちの労をねぎらったあと、直々じきじきの計らいで臨時にうたげを催し、主人公たちをもてなした。

余興よきょうとして、女宮廷詩人おんなきゅうていしじんのソロナによる、竪琴たてごとき語りが行われた。

そして、のちに再び宮廷で会議が行われ、途中から、グラファーンたちユニオン・シップもその場に呼び出された。

タイモス王は、ユニオン・シップの冒険者たちからなる外交使節団がいこうしせつだんを代表するアム=ガルンにおっしゃった。

「アム=ガルン殿。いま会議で、あなた方を先の約束通り、イリスタリアの正式な外交使節と認めることに、宮廷が一致して賛成さんせい致しました。これでマーガス国を代表して、私が貴方に、イリスタリア国への返答の信書を差し上げられるようになります」

「光栄に存じます」
アム=ガルンは内心ほっとした。

「貴方がたの持っていらした親書しんしょへの返信として、私からもイリスタリアの王エルタンファレスⅦ世陛下に親書を差し上げ、平和条約の予備的な交渉を始めるための申し込みをしたいと思います。ですが、なにしろ貴方がたが突然おいでになったので、エルタンファレス陛下への、そのご返答の親書を作成するのに少し時間を要するのです。こちらにも仕事の日程上の都合がありますのでね」

タイモス王はひたいに手を当て、少しうつむいてから仰った。 
「明日は、重要な裁判に臨席りんせきしなければなりません。いかがでしょう、特別に傍聴ぼうちょうを許可致しますので、ひとつ観てみませんか? 外交使の貴方たちにとっては、マーガス国のことを知るうえで、参考になる裁判だと思うのです」

つつしんでうけたまわります」
アム=ガルンは答えて礼をした。

グラファーンたちは、明日、裁判所へ行くことを約束した。


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