小説『ヴァルキーザ』 23章
23.グラーズ砂漠
冒険者たちは、グラーズ砂漠を目指して、北へと歩いて行った。
遠くに砂漠の見えるステップを歩いてゆくと、途中で、反対側から歩いてくる一人の旅人と出会った。
旅人は女性で、キサルファという名の女魔法使いだった。
魔女キサルファの話によると、このステップの先には少数民族の宿営地があり、そこで旅に必要ないくつかの品物を買うことができる、とのことだ。
また、グラーズ砂漠を渡るのに必要な、魔法の空飛ぶ絨毯は、その宿営地のバザという名の商人が持っているらしい。
絨毯は、金を払えば、彼から借りることができるという。
グラファーンはキサルファに礼を言い、仲間たちを率いて先へ進んだ。
宿営地に着くと、たしかに、そこにいる人々の中にバザという商人の男性がいた。彼は空飛ぶ絨毯をいくつか持っていたので、グラファーンたちは金貨と引き換えに、彼から人数分の絨毯を借りた。
絨毯は、それぞれ幅が150ラメル、長さが300ラメル。
すなわち幅は大人が両手を真横に広げたときのその手の端から端までの大きさと同じくらいで、長さのほうはその二倍少しだった。
バザに別れを告げ、冒険者たちは空飛ぶ絨毯に「サーフボードに乗るように」立ったまま乗って、空を飛行した。絨毯の出すスピードは、思いの外速かった。
途中で、ある時は砂漠の砂の下に潜むミルメコレオ(蟻獣人)たちから、数々のジャベリン(投げ槍)を速射で投げ打たれた。
冒険者たちは、地上から空に向けて行われたこの攻撃をかわし、高速で砂漠を飛び進んだ。
またある時は、ラゴーズと名乗る、空飛ぶ半人半獣の怪物、マンティコア(飛行魔獣人)と遭遇した。
「不味そうな肉だが、喰ってやろうか!」
という挑発の叫びとともに、ラゴーズは攻撃してきた。
マンティコアの尾から撃たれる毒針や、人間のような顔をしているその顔の口から放たれる魔法に苦しまされながらも、冒険者たちもまたメディアスで怪物に反撃し、辛くもこの怪物を斥けた。
地上にオアシスを見つけたときは着陸し、休憩して、泉の水を飲み、喉の渇きをうるおしながら、オアシスの民との語らいを楽しんだ。
オアシスの民のなかでは、カプラという名の人のことが印象的だった。
彼は、このオアシスを開いたオルティスという人の墓を敬い、守っていた。
彼は将来、このオアシスに街を作り、オルティスにちなんで「オルト・ドーラ」と名付けるつもりだと言った。
その後、オアシスを発ったユニオン・シップ団の冒険者たちは、数時間の飛行の後、「運命の砦」に着いた。
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