見出し画像

小説『ヴァルキーザ』 19章(4)


翌日よくじつ、グラファーンたちは、ヨークという名の役人に案内されて、アルカンバーグ地下牢ちかろうの方へ行った。すると、アレンとシャバットという名の二人の牢番ろうばんが、巨大な地下牢の大きな扉の前で会話をしていた。

「こら! 勤務中きんむちゅうにおしゃべりなんかするな!」
ヨークは二人の看守かんしゅいましめる。

アレンとシャバットは何か言い返そうとしたが、ヨークに連れられてきた6人の冒険者ぼうけんしゃたちを見て、だまった。

「この方たちを、地下にお通ししろ!」
とヨーク。

「え? それじゃ、この方たちが…」
と、アレンとシャバット。

「そうだ、話は伝わっているだろう。ユニオン・シップ団の方々だ」

「分かりました!」

看守たちは敬礼けいれいして、重たい両開きの扉の鍵を解錠かいじょうして、扉を開けにかかった。

「開けるのは一瞬だけですよ! 中の怪物の脱走を防ぐためです。すぐに通って下さい!」

重い扉に手をかけ、力を込めながら二人は声を上げる。

そして、扉が開いた。

グラファーンたちはすぐに中にすべり込んだ。
目の前は通路だ。

グラファーンたち6人の背後で再び扉が閉ざされる。

通路を少し行き、下り階段に突き当たったので、それを下ると、通路は牢の前の長い廊下ろうかに通じていた。

先頭のグラファーンは照明をかかげる。

そのとき、こちらの光に向かって、廊下の奥から絶叫ぜっきょうを上げて猛突進もうとっしんしてくる、無数の人影のようなものが現れた。

グラファーンたちは恐怖におちいったが、すぐに武器をかまえて、その物影ものかげたちと戦った。それらの者たちは皆、怪物モンスターだった。

モンスターたちは倒しても、倒しても、時をおいて一体、また一体とこちらに突進してくる。
その動きは、こちらにおそいかかってくるというよりはむしろ、こちらの方に向かい何かから急いで逃げ出してくる、という感じだった。

グラファーンたちはその源をつきとめるため、モンスターたちのやって来た方向へ、地下牢のより深い奥の所へ降りてゆく。

地下牢の最深部さいしんぶまで辿たどり着いたとき、ユニオン・シップ団は、その恐怖のみなもとの正体が、一体のレイス(死霊)だと分かった。

その牢名主ろうなぬし的な存在のレイスは、自ら「メガラ」と名乗り、おそいかかってきた。だが、グラファーンの持つ魔法剣ムーンセイバーとアム=ガルンの新しく覚えた「聖霊光」(ホーリーライト)の白魔法セレニスにより、しりぞけられた。

そしてユニオン・シップの一団は、メガラを封印した。

一団は、アルカンバーグ地下牢を制覇せいはした!

グラファーンたちユニオン・シップ団は、反対の方向へ歩き返し、地下牢の入口へ上がって行った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?