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【小説】ヴァルキーザ(ルビ付き版)

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小説『ヴァルキーザ』本文にルビを振った版のマガジンです。(本文の内容を少し改変しています)
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2022年10月の記事一覧

小説『ヴァルキーザ』 31章(2)

小説『ヴァルキーザ』 31章(2)

時の城の2階へ上がると、通路全体から何か熱を感じる。
ここは、とても熱い。 

廊下の所々から、魔法の火柱が立っている。 

火傷を負わないように気をつけながら、グラファーンたちは通路を先に進んだ。

ガイエン卿がくれた城の図面の情報を活かして、皆は、最短に近いルートでゼーレスの城内を行くことができた。

しばらく歩き、側壁に小部屋への入口を見つけ、入っていく。

するとなんと、部屋の中央に寝台の

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小説『ヴァルキーザ』 31章(1)

小説『ヴァルキーザ』 31章(1)

31. 時の城

ユニオン・シップはついに悪魔の居る本拠で、冒険の最終目的地、時の城「ゼーレス」にたどり着いた。

そびえ立つ巨大な城の暗黒のシルエットが、見る者を威圧する。

血のように赤い空に、魔の雲がおどろおどろしく浮かび、流れ飛んでいた。
だが、勇者たちはしっかりした顔で、ただ前をにらみながら進む。

誰もいない城門は、星の印に囲まれた竜のレリーフで飾られている。

城門の手前まで歩いてゆ

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小説『ヴァルキーザ』 30章

小説『ヴァルキーザ』 30章

30. 剣の断崖

試練の谷で竜のゲルグースを退治した後、グラファーンたちは一旦、エスタルカームの街に戻った。
次の挑戦に備えるために。

今度は「剣の断崖」だ!

その先にはすぐに、冒険の最後の目的地「時の城」が待ち構えている。

グラファーンたちは、ついに、最後の冒険に旅立った。

剣の断崖は文字通り、剣のように垂直に岩が立つ絶壁の断崖だ。

いまグラファーンたちは、その崖のへりにいた。

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小説『ヴァルキーザ』 29章

小説『ヴァルキーザ』 29章

29. 試練の谷

グラファーンたちは、両側が岩の絶壁となっている狭い谷底の道を歩いて行った。

ここは「試練の谷」

時の城ゼーレスの城門を開くのに必要な「時の鍵」が隠されている場所だ。

ここは怪物たちに守られて、数々の宝物が隠されてもいる。

地の底を縫うようにして蛇行しながら延びる狭い道をたどりながら、グラファーンたちは谷の奥へ向かった。 

この試練の谷の道は、落石も時にあり、今までのど

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小説『ヴァルキーザ』 28章(2)

小説『ヴァルキーザ』 28章(2)

「イアリースが戻ってきてくれて良かったわ」
コーディリアスが微笑む。

「あと、セルティースの行方も気になるわね」
ミティアスがこぼす。

「セルティースは、まだ帰還ってないの?」
イオリィ(イアリース)はミティアスに尋ねる。

「ええ、あの時以来ずっと…」
ミティアスは答える。

イオリィは、セルティースが天空人の指令でゼーレスの内部に調査のために派遣されて以降、彼が時空を超えて行方不明になって

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小説『ヴァルキーザ』 28章(1)

小説『ヴァルキーザ』 28章(1)

28. エスタルカーム

魔法陣を出て、雪山の間を縫うように長く続く道を歩いてゆく。すると、やがて視界が開けて、目の前に広がる平原の上空に、天空に浮かぶ巨大な岩の島が現れた。

島は高さの低い菱形の四角錐を逆さにしたような形で、上部の平面にはいくつもの、建物らしきものが見える。それはあたかも、神が空に造った街のように見えた。

岩の飛空島は、音もなく静かに、高めの中空に止まって浮遊している。

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小説『ヴァルキーザ』 27章

小説『ヴァルキーザ』 27章

27. ノープ

氷雪海の海岸の旅路の果てに、冒険者たちは、その東端までたどり着いた。

一面灰色の朝の空のなかを海風が疾走り、その風に無数の雪のひらが舞い飛んでいる。

やがて砂浜が無くなりつつある海岸の陸側の岩場に隙間が見え、そのかげに小さな村が発見された。

見つかりにくいその村を目ざとく見つけたのは、ラフィアだった。

「あれが、たぶん、ノープの村だよ」
ラフィアは嬉しげだ。

村は廃墟で

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