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青春生き残りゲーム(6)

 義務教育最後の学年になりました。世間一般では、中学3年生をもって受験生になるわけです。例に漏れずウナギ少年もそうでした。

 そして、少年は尊大にも、地域で一番の男子校に入りたいと考えていたのです。

 なぜか?それは、単純に、自己承認欲求と過剰な自意識によるものでした。家族からそれを求められていると思うから。周りから「あいつは勉強ができる」と思われているから。でもって、自分は周りとは頭の出来が違うから。だから、そこの高校に行って、東大に行く。みんなから持て囃されたい。

 お前の学年で碌に1桁順位をとったことがない人間がよくもそんなことが言えるもんです。セルフイメージが狂った妄想家の戯言も甚だしいもんです。

 

 そんな大層な目標を立てたこととは裏腹に、少年はいつも通りの勉強しかしていませんでした。それもそのはずです。もともと勉強嫌いなわけです。そして、部活は6月末の引退までありました。それまでは帰宅時間が変わらないため、受験勉強をするには普段の勉強からさらに時間効率を考えたり、勉強以外の時間を削ってそれに充てる必要があります。当たり前のことではありましたが、スケジュール管理が苦手な少年にはそれをすることが億劫でやらなかったのです。また、休日や部活引退後に関しては、勉強はやるものの親の目を盗んではすぐにゲームに切り替わったり、書くことに疲れて、今やっている勉強と関係ない図鑑や資料集に目を通したりしていたため、長くても集中効率が最悪な勉強時間を過ごしていました。

 そうこうしているうちに1か月過ぎ、2か月過ぎ...あっという間に夏休みの面談の日になりました。


 僕の中学時代、中3の夏休みの面談というものは、志望校を決めるための話をしていくものです。地域の特性上、田舎とはいえ、通学できるような高校は公立高校だけでも30校近くありました。そのため、将来にやりたいことだとか、高校で何をやりたいだとか外堀から埋めていき志望校を絞らせていくことがこの面談の趣旨でした。

 少年は迷わず志望校を口に出します。すると、先生は、「今の成績よりもうひと頑張りすれば、十分入れる位置にいる。」話してくれました。それは、実力テストでいうと20点ほどの上乗せが必要で、決して無理な点数ではなかったのです。

 

 しかし、面談後も勉強態度は変わらずでした。というのも、夏休みであっても勉強のために5~7時間は確保していたのですが、暑さ対策のために借りていた祖父の部屋で、祖父や親に隠れてこそこそ昼のドラマを見たり、ゲームをしたり、挙句には昼寝をして過ごしていました。そのため、集中して勉強したのは実質3時間弱でした。

 そうなっては、学業成績なんてものは伸びるはずがないのです。中学校で2年と少しの間コツコツ積み上げた学力の貯金が、下で猛烈な努力をしている者に追いつかれるのも時間の問題でした。

 そして、その努力しようとしない、何かに本腰をいれられない態度のしわ寄せが後々になって、少年を苦しめ追い詰めていくわけです。先見の明のない愚かな行動をしていたツケは今でも僕を苦しめています。しかし、当時の少年は何とかなるだろうという希望的観測、根拠のない自信というものがあって態度の改善を図ろうとはしませんでした。



今回は、ここまでにしたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。


 


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