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循環型社会とサーキュラー・エコノミー

【サーキュラーエコノミーに関心がある方向けです。最終更新:2020年5月1日】

まとめ

・サーキュラー・エコノミーはデジタル化による入り口戦略
・サーキュラー・エコノミーは経営論
・サーキュラー・エコノミーもシェアエコノミー同様注意が必要
・サーキュラー・エコノミーは脱資本主義ではなく資本主義を補完するもの

欧州で盛り上がるサーキュラー・エコノミーとデジタル化の波

近年サーキュラー・エコノミーという単語が普及し始めた感じがします。

ネットで情報を集めると、どうやら循環型社会は出口戦略(リサイクル)、サーキュラー・エコノミーは入り口戦略(商品設計)が重要という違いがあるようです。

サーキュラー・エコノミーが欧州で盛り上がり始めたきっかけについては例えば以下の記事があります。

「明確なのは、欧州企業にとってのサーキュラー・エコノミーは、環境対策の域を超え、事業収益をもたらす『経営戦略』の位置づけであることです。しかもこの戦略を、デジタル技術との融合によって実現しようとしています」

この記事を読むと日本と欧州でサーキュラー・エコノミーの捉え方に少し違いがあるように感じます。

サーキュラー・エコノミーでもデジタル技術が重要

いずれにしても、サーキュラー・エコノミーはデジタル化とつながって新たなビジネスモデルをもたらします。エネルギー分野でもそうなのですが、デジタル化は技術論ではなく、企業のコアに直結する経営論でなくてはなりません。

デジタルxエネルギー

 そう考えると、先程の記事の

「明確なのは、欧州企業にとってのサーキュラー・エコノミーは、環境対策の域を超え、事業収益をもたらす『経営戦略』の位置づけであることです。しかもこの戦略を、デジタル技術との融合によって実現しようとしています」

「欧州企業で印象的なのは、サーキュラー・エコノミーを経営戦略として進める方針が組織として共有されていることです。サーキュラー・エコノミーは製品開発担当者のモチベーションや現場改善の努力だけで突き進めるものではありません。だからこそ、各社が自社流のサーキュラー・エコノミー戦略を打ち出すことが取り組みの第一歩であり、次のステップとして、製品設計のあり方やサービスモデルをめぐる検討があると考えます」

は当然の流れであり、ここまで踏み込めないとサーキュラー・エコノミーは画餅になります。

あらゆる領域で展開されるデジタル化とサーキュラー・エコノミー、その注意点と資本主義

ドイツではエネルギー転換、インダストリー4.0がデジタル化の中心に据えられています。つまりデジタル技術はドイツ産業の中核に据えられていきます。

そしてその流れの中にサーキュラー・エコノミーという新たなビジネスモデルがどのように組み込まれてゆくのか。私自身は、Makersや限界費用ゼロ社会といった説に共感しているので、これらの取り組みとサーキュラー・エコノミーがどのように結びていくかを楽しみに見ています。

しかしシェア・エコノミーもそうであったように、サーキュラー・エコノミーの進展は、資本主義の脱却を意味するものではありません。これらは資本主義の補助装置として捉えたほうが良いと思います。

ですので、私は現在脱資本主義として盛り上がっているサーキュラー・エコノミーもドイツでは5年ほどでバックラッシュを起こすか資本主義にほぼ取り込まれられることで市民権を獲得すると思っています。ポスト資本主義を体現するという人もいるけど個人的には難しいのではないかと感じます。

紹介した記事で書かれているのは消費者側がエリートですが、シェアエコノミーは供給者側がエリートでした。AirBnBもUberも提供者の中でもエリートか金持ちが得をしやすい構造になることでインフラ化したと思っています。例えばAirBnBで家を貸したほうが儲かるので賃貸住宅に圧力がかかり、支払い可能な家賃の物件が少なくなってしまうという批判を受けた結果、ベルリンのように一部自治体がAirBnBに規制をかけています。

ただ、それでも資本主義はこうしたものを通して改善されうると思うし、私は基本的に市場競争を歓迎するので、こうしたものが資本主義に取って代わらなくても資本主義を変えていくことには希望を持っています。


著者はドイツで10年以上に渡り、エネルギーや環境政策の調査を行い、クライアントに報告書をまとめたり、提案を行ってきました。
本ブログは抽象的ながら必要な背景情報を提供しておりますが、具体事例について興味があったり、ビジネスに関心がある方は下記までお気軽にお問い合わせください。
nishimura(a)umwerlin.de

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