死の家の記録

ドフトエフスキー作 望月哲男訳

 たとえば労働そのものも、懲役の名に値するような、それほどつらい仕事とはまったく思えなかった。—-ここの労働がつらい懲役だという理由は、難しい作業を絶え間なくやらされるからというよりは、むしろそれが強制された義務としての労働であり、棍棒でどやされながら働かされるからなのである。もちろんこのような刑罰は拷問、復讐と化してしまい、意味を失ってしまうにちがいない。なぜならそれによってどんな合理的な目標も達成されはしないからである。ただ、この種の拷問の要素、無意味さ、屈辱、恥の要素はどんな強制労働にもかならず含まれているものだから、懲役労働はそれが強制労働だということ自体によって、いかなる自由労働よりもはるかにつらいのである。

                             12.20

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