金融業界に長く勤め、強い想いと数多くの経験を経た今だからこそ、「インパクト投資」に懸ける想い。#9 三尾 徹
【うむラボ通信】は、私たち「うむさんラボ」の想いや活動を知ってもらうために、学生インターンのあかり、ちより、しまゆうが、メンバーへのインタビューを通してお届けする、みなさま宛のお便りです。
第1回のインタビューでは、代表取締役 比屋根 隆が描く未来や想い、うむさんラボの魅力などを語っています。ぜひご覧ください。
キーワードは「株式会社沖縄県」社会的インパクト投資による”あたたかい社会”を、沖縄から世界へ。 【うむラボ通信】インタビュー#1 代表:比屋根 隆
第9回はうむさんラボの立ち上げメンバーのひとり三尾 徹さん、記事担当はあかりです。
三尾さんが歩んできた道のり、「カリーファンド」立ち上げ、目指す未来。また、”今”の”当たり前”の価値観が創られてきた過程が少しだけ見えたような、そんなインタビューとなりました。
”金融”という世界に飛び込んだきっかけ
学生時代は政治学・国際関係論を学んでおり、金融に関する知識や縁は無かったという三尾さん。
元々はアメリカの大学院へ進学を予定しておりましたが、「一度は社会を見てみたい」と就職活動を始めます。
しかし、すでに日本の大学院を修了していた三尾さん。当時の就職活動において”修士”の肩書は、歓迎されないことも少なくなかったそう。
そんな中でも受け入れてくれた企業の一つ、ソロモンブラザーズ(現シティグループ証券)へ、晴れて就職が決まりました。
こうして金融業界でのキャリアをスタートした三尾さんですが、はじめは3年程で退職し、アメリカの大学院へ進学、研究職を目指すつもりだったそう。
ですが結果として留学はせず、そのまま金融業界に長く勤めることとなりました。
きっかけは、いざ3年が経とうとするある日。偶然にも、三尾さんのニューヨークへの転勤が決まります。
日本にいた頃と同様、財務モデルや企業価値評価の作成を任されますが、アメリカでは三尾さん自身が現場に赴き、現場の方々と時間を共に過ごし、一緒に創り上げていくことも少なくなかったといいます。
観光では決して訪れることの無い場所へ行き、出会うはずのない人と出会い、同じ時間を過ごす。その経験全てがとても貴重で楽しかったと語ってくれました。
ニューヨークでの勤務後も、実は何度か辞めることを考えたという三尾さん。
ですが、金融業界というとても不安定な世界では、数年に1度良くも悪くも環境や仕事内容、プレイヤーが大きく変わっていくのだといいます。この変化があったからこそ、仕事を続ける意味の一つになっていたそうです。
「インパクト投資」を通じて繋がった縁
20年近く勤めた後、会社を退職後も、培った知識や経験を活かして様々な仕事で活躍。自身もファンドや会社の設立を行ってきた三尾さん。
うむさんラボ代表である比屋根さんとの出会いは、2016年の東京でした。
「株式会社沖縄県」の想いの実現のため、”インパクト投資”を用いた構想があった比屋根さんと、当時実際に社会的インパクトを見据えた投資活動を実現していた三尾さん、共通の知人を通しての出会いでした。
比屋根さんの想いを聞き、興味を持った三尾さん。活動を実際に見てほしいと言われたのを機に、初めて沖縄を訪れます。
三尾さんが参加したのは、「LEAP DAY」というイベント。
沖縄の学生を対象とした人材育成プログラム「Ryukyufrogs」の成果発表の場です。
学生たちの活動報告はもちろん、高校生が休日の貴重な時間を使い参加していたこと、その人数にとても驚いたそう。
そのイベント以降、比屋根さんとは色々な話しをするようになったといいます。
地道に、そして丁寧に紡いできた「ファンド設立」への道
当時は、「社会的インパクトファンド」という単語どころか、「ビジネスを通して社会課題を解決する」という概念や取り組みすら、理解してもらうのが難しいところからのスタート。
そこで、まずは「社会にインパクトを与える」を実践すべく、”インパクトのあるビジネス”の立ち上げを行うことをすすめたそう。
互いの事情や特性を支えあいながらバックオフィス業務を行う「ゆいといろ」、IoTや機械学習を活用して様々な課題解決に取り組む「Lilz」など事業や支援を積み重ね、現在まで多くの仲間が加わり、取り組みも広がっていきました。
昨年夏、ついに実現したうむさんラボのインパクトファンド、「カリーファンド」ですが、その完成までにも多くの苦労があったといいます。
ファンドの立ち上げに際し、実際に実現した現在のファンドは最初の構想からは変更もありつつ、多くの関係者の協力を多く得ての完成、始動。
比屋根さんや三尾さんをはじめ、一人一人に「社会に還元できる取り組みを経済面から支援できる環境を整えたい」という想いを伝え続け、巻き込み、自分たちで創り上げていきました。
「自分たちの力で課題を解決していく姿勢、ビジョンがより明確になった」ものの、「あくまでスタート地点に立った」段階だと話す三尾さん。
投資を成功させ、活動を広めていくことはもちろん、”インパクト投資”に携わる人材を沖縄で育てる取り組みも、考えていきたいそうです。
最後に、三尾さんにとって「社会的なインパクトを与える」とはどういうことなのか、伺ってみました。
「”経済的リターン”と”社会的インパクト”は、これまでは相反する関係にある、あるいは無関係であると捉えられがちでしたが、この二つが”正の相関関係”にある事業が成り立ちうることを示したい」と語った三尾さん。
そのためにも、まずは一号ファンドを成功させること、生まれたインパクトを継続していくための仕組みをつくることをしっかりやっていきたいと、改めて決意を口にしました。
また、今回のファンド名「カリーインパクト&イノベーションファンド」にもある、「イノベーション」という言葉。
近年は日本でもインパクトスタートアップ事業が増えてきた一方で、「技術を用いて社会的な生産性をあげる」取り組みはまだまだ少ないそう。
テクノロジーやAI投資も含めて、社会的インパクトを生み出す取り組みが今後どんどん広がり、増えていってほしいと言います。
インパクト投資の成功は、ゴールではなく手段。
「株式会社沖縄県」の実現に向けて、今後も活動を続けていきたいと想いを語ってくれました。
実は、私の進路相談や雑談からはじまった今回のインタビュー。
三尾さんの、どんな想いや考えも肯定してくれる、優しく暖かな人柄に触れてのスタートでした。
お話を伺っていくなかで、「うむさんラボ」という会社や「カリーファンド」の背景が多く語られました。一人一人の”想い”や”願い”が実現していく過程をより知ることができたこと、とても嬉しく思います。
また私たちの世代にとって、「ビジネスを通した社会課題の解決」という考え方はとても身近なものかと思いますが、それは三尾さんや比屋根さんのように、地道に、長い時間をかけて、想いや考え方を実現しようと歩んできた方々の存在があってこそ。
すごく貴重なお話を聞く機会をいただけたことへの感謝と同時に、「私が実現したい”夢”を持ったとき、応援してくれる環境が必ずある」と思えたこと。
三尾さんやうむさんラボの方々との出会いが大きな財産になるように、歩んでいきたいと強く感じたインタビューとなりました。
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