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傍観者

蹴り上げた靴底がすり減った
振り下ろした手は空を切った
どんなに振り切ろうとも
目に焼き付く街の影は消えない

静まり返る部屋の明るさ
思いの外ぼくには眩しかった
どんなに照らそうとしても
今朝までのぼくにはもう戻れない

戻れない

生きて帰れたところでぼくは
この街で何が出来ると
問いかけたところで答えは見えず
ただ ただ……

抗えない運命と知っていた
とするならば
もっと違うことをしていた
どんなに言い聞かせても
虚しさ隠す心は癒えない

何もかも呑み込まれ消えていった
儚げに笑う人々の無力さ
どんなに触れようとしても
心残る傷跡は見えない

見えない

ただ 全てを投げ打ち捧げたつもりで
所詮 何もわからず
悲劇を見下ろしているただの傍観者
人にはそう見えるのだろう

事実が深く突き刺さった

偽善と思われても構わない
あの日見た街の影と
人々が秘めている心の傷が
ただ ただ ぼくには痛かったから

何も持たない非力なぼくは
この街で何が出来ると
問いかけても答えは見えないけれど
感じた想いに嘘などつきたくはない

傍観者と思われたとしても


******************

3.11に寄せて
むかし歌っていたオリジナル曲です。
当時は、阪神淡路大震災を想定して書いたのですが
数ヶ月後、新たな震災が起こってしまいました。

どうしたって当事者にはなれない
そんなやるせない気持ちを抱えていたのです。
こんな立場の人間もいました。
見えない傷に、可能な限り寄り添いたかった。

忘れないように。

#3 .11 #東日本大震災
#歌詞 #ささやかな主張

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