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城崎にて #3 御所の湯・一の湯

鴻の湯を満喫し、これで今日のところは外湯巡りをしまいにしても良いのだが、鴻の湯から宿に帰る経路上に御所の湯という人気の高い外湯がある。これに入ってしまおうと思い、御所の湯に行く。

御所の湯

浴場に入ってまず驚かされるのは滝だ。わりと大きな滝が露天風呂の奥にどんと構えており、その前に外湯の中では最も広い露天風呂がある。なお、御所の湯には内湯がない。
この大きな露天風呂、一見すると1つの大きな浴槽だが、浴槽の中でいくつかのエリアがある。例えば、滝を見ながら浴槽に座るとジャグジーで肩と背中のあたりを刺激されるエリア。また、面白かったのが深めになっているところで、成人男性でも立つと肩のあたりがようやく出るくらいの水深がある。ここも壁面からジャグジーがあるのだが、ちょうど腰のあたりを刺激する。柵に掴まれば、足をつけず、全身を湯の浮力に身を任せ、腰を刺激するというなかなかに気持ちの良い体験が出来る。ただ、やはり湯は熱めなので、長居は厳しい。

やはり、この浴場でぼけっとしていると一人のお客さんの背中に立派な不動明王が描かれているのに気がついた。城崎は、外国人の受け入れ強化の一環でタトゥーや入れ墨が禁止されていない。そのため、その不動明王の兄ちゃんは何も問題はないのだが、なかなか背中の全面に不動明王が描かれている姿を拝することはないので「彫るとき痛かったんだろうな」と思いながら目がそちらに向いてしまう。別にその筋の関係者でなくても、彫る場合もあるし、逆にあの兄ちゃんがその筋の人だったとして、これだけあの界隈が条例等で厳しくなっている中で、なぜあの界隈に行き、なぜ不動明王を彫ったのだろうかと少し考える。自分にとって、あの兄ちゃんが不動明王を背中に彫ろうが彫ろまいが、自分には何ら問題はない。ただ、あの兄ちゃんが過ごしている世界では不動明王を背中に彫ることが望ましいことだったのだろう。知らない世界に少し思いを馳せる。

この日は、このまんだら湯・鴻の湯・御所の湯の3湯を回り、いったん外湯巡りは中断した。

翌朝、6時前に目が覚める。広縁から外を見る。静かな温泉街が、また良い雰囲気だ。
目が覚めてしまったので、部屋で身支度などごそごそとやる。7時に近くなった頃、朝風呂のための準備をする。外湯にもよるが、早いところの営業開始時間は7時だ。もう少し早いほうがありがたいなあと思いつつ、用意する方の労力を考えると、そんなわがままは胸にしまっておく。
朝風呂には、宿に一番近い一の湯を選んだ。一の湯は、城崎のほぼ中央に位置する外湯で、建物が鉄筋コンクリート製ながら屋根は入母屋で、玄関部分には唐破風もある和風な造りだ。


一の湯

目の前の大谿川とそこに架かる橋と合わせて城崎温泉の代表的な景観の一つとなっている。
7時10分前頃に一の湯に着く。先客として地元のおっちゃんが1人、ストレッチをしながら開くのを待っている。そのうち、地元のおっちゃんは2~3人に増えた。「やあ」とか「あれ、今日はここか」「あそこは今日、休みだ」みたいな会話が展開されていると、そのうち一の湯の戸が開く。
脱衣場でも、おっちゃんたちのあっさりとしたジモトークが声量は少し抑え気味で展開される。彼らにとって、温泉は習慣の一つであり、大事な地元コミュニティでもあるのだろう。知人に会うために病院の待合室に集まるより、格段に健康的で社会保険の負担も少ないだろう。


さて、一の湯も大きめの浴場で内湯と露天がある。露天は、洞窟風呂と名が付いていて、確かに露天を覆うように洞窟がある。建物と洞窟の間にわずかながら空を覗けて、別に洞窟だからといって暗いわけではない。朝、おっちゃんたちと一緒に静かに洞窟風呂に入る。熱めの湯で、しっかりと目が覚める。宿の朝食が部屋だしで、7時半にしてしまったので、あまり長居は出来なかったが、ここもなかなか良かった。

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