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城崎にて #2 まんだら湯・鴻の湯

19時前に城崎温泉駅に着く、旅館での夕食が通常パターンのため、この時間の到着はやや遅めだ。降りた客も大半は高校生だった。
駅前のロータリーから温泉街の方に歩いて行き5分もすると、大谿川に架かる橋につく。街のほのかな灯りに照らされた柳、それが映える川面、幻想的な雰囲気が漂っている。川沿いを上流の方向に歩きつつ写真を撮り、写真を撮りつつ歩いて行った。

逗留の宿は、一の湯という外湯のすぐ近くにある「森津屋」さんだ。小さな温泉旅館で、ネットから予約できたのと、朝食のみプランがあったという元も子もない理由で選んだが、とても良い宿だった。
通された部屋は、3階の通りに面している部屋で2~3人は泊まれる程度の広さがある。広縁から外をのぞくと、通りを上から眺めることが出来る。煙と同じく高いところが好きな質なので、これは楽しい。

部屋から通りをのぞむ

お茶とお菓子を食べて少し休憩をして早速、外湯巡りに出かけた。
城崎には7つの外湯がある。最も西にある鴻の湯と最も南東(駅前)にあるさとの湯までは結構遠い。また、平日の場合だと定休日という外湯もあるので、どういう風に回るのが良いのか考えて回る必要がある。
ひとまず、翌日が休みの鴻の湯を目指すことにした。浴衣に丹前という姿でとぼとぼ歩く。ここに下駄でも良かったのだが、雪駄があったので、そちらにした。雪駄のほうが個人的には歩きやすい。鴻の湯の方向へ歩きながらスマホで混雑状況を見ると、鴻の湯がやや混んでいそうだったので、先にその途中にあるまんだら湯に行くことにした。

まんだら湯は、メインの通りから少し路地に入ったところにある小さめの外湯だ。外観は、寺院を思わせる造りとなっている。

まんだら湯

入口でアルコール消毒をして、検温をして、旅館でもらったQRコードが印字されたチケットサイズの紙をかざす。この紙が、入浴券の代わりとなる。
雪駄を鍵付きの下駄箱に入れて、脱衣場へ向かう。以前の下駄箱は鍵付きではなく、そのへんに置いておけば良かったらしいが、ここもコロナ対策として取り違いが起きないようにしているらしい。脱衣場や浴場の壁を見ると「会話は控えめに」とか「黙浴」とかの張り紙がいたる場所にある。改めて、新しい生活様式への対応の徹底ぶりが分かる。

まんだら湯は、内湯と外に桶風呂といって、大きな陶製の壺のようなものが2つ埋め込まれ、それが浴槽となっている。桶風呂は先客がいたので、先に内湯に入る。
驚くのは、その熱さと深さだ。城崎の湯は無色透明で、ものすごく熱いというレベルではないが、温度は熱めだ。きちんとかけ湯をして入る必要がある。また、浴槽は深いところだと成人男性が立って、胸のあたりくらいまである。熱めのお湯にしっかりと肩まで浸かれる。わりと烏の行水派なので、ありがたいやら、ありがたくないやらという感じだ。
ただ、短い時間でも湯船に浸かるといい湯であることはよく分かる。あまり温泉っぽさはないが、じんわりと温泉の効能が体の芯まで伝わってくるようだ。
少しほてり始めた頃、桶風呂の先客がいなくなったので、休憩がてら桶風呂のある外に出る。気候としては暖かくなり始めた頃なので、寒いと言うよりは心地よいという感じで、少し風に当たるといい感じに涼める。桶風呂は、ちょうど1人で入るのにフィットする大きさでゆっくりと浸かれる。

わりと一番最初の外湯で満喫しているが、まだこの他に6つも外湯がある。2泊するので、今晩のうちに全部回りきる必要はないが、3つほどは回っておきたいし、今晩のうちに鴻の湯に行くのはマストだ。

まんだら湯を二十分ほどで後にし、鴻の湯へ向かう。
鴻の湯は、城崎の温泉街の中でも最も西側、山寄りにある。温泉街のメインストリートは、JRの線路がある辺りから大谿川を挟むようにあるが、一の湯のあたりで川からいったん離れ、両脇に旅館や店が並ぶ。しばらく行くと再び大谿川が顔を出し、川の左岸が車道となる。鴻の湯は、大谿川が再び顔を出した辺りにある。

鴻の湯

まんだら湯の時と同じく、入口で一連の作業をして浴場に入る。
こちらは、まんだら湯と比べると浴場全体がもう少し広めで、内湯も大きいし、そこそこ大きい露天風呂がある。この露天風呂のことを、ここでは庭園風呂といっている。内湯は、やはり少し熱めなので、内湯はほどほどに庭園風呂に行く。
庭園風呂は、場所にもよるが内湯に比べれば少しぬるくなっている。個人的にはちょうど良く、肩まで浸かったり、半身浴をしたり、ちょっと休憩したりを繰り返し、だらだらと過ごす。春の少し輪郭がおぼろげになった半月を眺める。温泉街の中心からは離れているので、湯の音とボイラーの音がたまに大きくなるくらいで、基本的には静かな外湯だ。
個人的には、最も気に入った湯である。

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