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城崎にて #6 さとの湯・柳湯

もう少し出石をふらふらしていても良かったが、14時55分発の城崎直通のバスがあったので、一路城崎に戻る。音楽を聴いたり、車窓を眺めたり、本を読んだり(乗り物酔いには強い質なので)していると、一時間ほどで城崎の駅前に着いた。
まっすぐ宿に戻っても良いのだが、駅前にも「さとの湯」という外湯があるので、先にこちらに寄ることにした。

さとの湯

さとの湯は、駅前の立地の良さだけでなく、7つの外湯の中で最も新しい外湯であるため、設備の面でも充実している。建物は3階建てで、浴場は2階に内湯、3階に露天風呂がある。また、外湯の中では唯一サウナが設置されており、サウナも3種類ほどあるなどなかなかの充実ぶりである。

今回は先に内湯で暖まり、サウナに入った。最初に利用したのはフィンランド式のサウナで、結構な熱気と湿度であまり長居はできなかった。水風呂に浸かり、3階の露天風呂の横にある休憩スペースで風に当たる。3階からは手前に田園風景、奥に山並みが見え、その間には円山川が流れている。ここからコウノトリでも見えれば乙な物だが、見えたのはカラスとツバメとサギくらいだった。まあ、そんな簡単に見られるわけはない。

代わりに目に入ってきたのは、露天風呂でずっと話している他の客だった。どうも2人連れのようで、そこまで広くない露天風呂をしゃべりながら占有しているので、なかなかたちが悪い。よく見ると、一人の客が使っているタオルに何か文字がでかでかと書かれている。後で調べてみると、そういう名前の温泉に関する民間資格があるらしく、その認定者が購入できるタオルのようだ。会話の内容も断片的に聞こえてきて「こんな効能があるんです」「私は○○はしないようにしているんです」と、連れに解説をしているようだ。なんだか下品だなと思いながら、その二人を睨んでいた。

下品だなと思ったのには、2つ理由があった。一つは自分もよく知っていることをひけらかす癖があるので単なる同類嫌悪。もう一つは「あの人は温泉が好きなのではなく、温泉に詳しい自分が好きなんだ」という印象を受けたからだ。いろいろ話せるということは、それだけ温泉に関する知識や経験が確かにあるのだろう。ただ、それを人に話し、結果的に温泉側が設けているルールを軽視し、周囲の客のことも考えていない。結果的に、当人が心地よい温泉という環境を壊している。本当に温泉が好きな人はそんなことは出来ないだろう。

もちろん、いろいろと人に語り、それを聞いてくれると楽しいし、それで周りのことが目に入らなくなることはままあることだ。ただ、温泉に詳しいという称号をもらい、それをわざわざ他人に分かるようにしているのに、その称号にふさわしい精神や矜持、立ち居振る舞いがないというのが下品だ。ああいう人にはなりたくないなと自分を戒め、浴場を後にした。
(念のため言っておくと、さとの湯は素晴らしい外湯だった。素晴らしい故に、いろいろな人が使っているというだけだ。)

いったん、宿に戻り、再び温泉街に繰り出した。残る外湯は「柳湯」と「地蔵湯」の2つだ。この2つは大谿川沿いのそう遠くないところに建っている。最初に、宿に近い柳湯へ向かう。

柳湯

柳湯は、外湯の中でも小ぶりな外湯で露天風呂など目を引く物は特にない。ただ、外観・内観ともに和風木造チックな建物はなかなか風情がある。一人湯船に浸かりながら、天井の大きな梁を眺めていた。やはり熱めの湯なので、あまり長居は出来ず、最後の外湯・地蔵湯へ向かった。


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