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パパとあたしのプロレスについて


夜の闇が静かに部屋を包み込む中、あたしはパパの腕の中に頭を寄せ、ベッドに横たわっています。心地よい静寂が部屋全体に充満し、目を閉じるとまるで宇宙の奥深くに身を置いているかのような安らぎを感じます。
遠くではどこかの犬がワワワワンと鳴いており、隣隣室のリビングではママが異国のドラマを見てワワワンと泣いています。この包み込まれるような究極の至福が、心地よい眠りへと誘ってくれます。

どうもアンニョンハセヨ。

あたしは36歳のパパとママをもつ小学一年生の女の子です。あたしは本を読むことが大好きなのですが、最近ではそれだけでは飽きたらず、こうやってこっそり書いて楽しんだりもしています。ただ、パパとママには見せられないことも書いたりすると思うので、2人にはまだこのことは内緒です。

どうやってバレずに書いてるか気になりますか?それはですね、私が寝室で1人になる時間があるのでその時間を利用させて書かせてもらってます。

そろそろパパがソワソワし始める頃です。

「寝た……かな?」

寝かしつけるために隣であたしの腹をたたいてくれていたパパが珍妙な顔をして、蚊が泣くよりもさらにほそーい声であたしの顔を覗き込み、尋ねてきます。そもそも寝てるかもしれんあたしに寝たかどーかを尋ねてくること自体どーかと思うのですが、あたしが「寝たよっ!」と元気よく答えたとするならばそれは起きていることとなり、パパは「やれやれまたイチからの寝かしつけだぜ」とパパの悔しがる姿が目に浮かびます。
なぜかというと、パパは一刻も早く寝室を抜け出して、リビングのソファに身を投じてくつろぎたいのです。そして携帯を片手にSNSの無限ショート動画地獄へと堕ちていくのです。

そしてあたしも困ります。あたしとしても早くパパに寝室から出てもらい、こっそり1人でこの文章を完成させたいのです。

ここは何としてもお互いの目的達成のためにも、パパを寝室から出ていってもらわないといけないのです。

あたしが寝たふりをしていると、ズズッ、ズズッと頭の方で音が聞こえてきます。寝たふりにまんまと騙されたパパは、目をぐりっとひん剥きながら極限の集中下であちしが起きないように配慮しながら、あたしの頭がのっかってる自分の腕をちょっとずつちょっとずつ抜いていってるのです。
ちょっと抜いてはピタッと止まり、ほんでなぜかパパも寝たふり。リアリティを出すために鼻からむんふーっとなんがい息をだし、寝息を演出してきます。抜いては止まりの繰り返しです。

そしてパパとあたしのプロレスが最高潮に達した時、ずるりんとパパの腕があたしの頭の下から抜けました。それでもあたしが起きてしまわないか心配なパパは、しばらく固まったようにじっとしていましたが、のそっとこちらを覗きこんできたかと思うとパパは、

「寝た……かな?」 

あたしが無言の返事をすると、パパはベッドから飛び降り、スキップし、クルクルと優雅に踊りながらリビングの方へと消えていきました。

こうして1人になったあたしは、今ちょうどこの文章を書き終えました。
それではみなさん夢でお会いしましょう。
あー幸せ。
おやすみなさい。

#自己紹介
#アンニョンハセヨ
#寝かしつけ

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