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うずまく京都 川柳連作集

つくづく 川柳7句

あて先を忘れたあおく薄い手のひら

マツモトの顔つけ走るプログラム

ガス室でのたうつ洛中洛外図

つくづくの野郎が薔薇を抱きしめた

人が死ぬはなし儲けの出るはなし

鴨川のみず絶えずして髪を混ぜ込んで

あのひとは遊びつくして消えました


追伸 川柳7句

舌打ちだけで追伸にまでたどりつく

追伸の追伸くちびるひび割れる

バイブルはぜんぶ追伸だというしね

追伸のギャングスタ・ラップのあたたかさ

すこし迷って犬の尻尾をつけて出す

ピチャピチャと終わりに音たてる手紙

村上隆の鼻の穴ならぴーえすでしょ


鼻歌 川柳7句

焼け跡からグレン・グールドの鼻唄

鼻歌で蛇を呼ぶことを恥じるな

うろおぼえですので闇でつつみます

ユングとフロイトのSummen合戦

ふふふーんふんふんと壁を抜けてきた

柳多留をめくるときどき株を売る

鼻歌で始まり教育勅語で終わる


こめかみ 川柳7句

性的不安がこめかみから洩れたんよ

薄闇にじぶんの顳顬を見ている

真っすぐにこめかみへ来る料理人

こめかみに帰っていったまだらの紐

顳顬にのぞく塔から手を振ろう

ぺりっと剥がすこめかみ 外は雨

全世界に顳顬をもつイスラエル


さやさや 川柳7句

忘れたこと 風はそんなに暇じゃない

鳥辺野をさやさやと吹く生たまご

動乱前夜さやさや鳴き交わす紙のむく

さやさやと舌へ巻きとる爆心地

失われた地図にさやさや陽はながれ

葦原を抜けておれらの目玉とぶ

空想のサカナと鳥とぼくーーさやさや


祭笛 川柳7句

くちびるを切ってつまりは祭笛

サーモンフライに穴あけて吹き鳴らせ

ペーパードライバーに握らせる祭笛

篠笛からぴゅっとサボテンに水をやる

千年が過ぎて笛を落とした町へ帰る

裏生地にジャズを薫じてピーヒャララ

指が踊ると風がおもらしをする


太秦 川柳7句

うなじに PiTaPa 涙もこぼれます

安っぽい虹サラブレッドの眉間から

おまえ一人だけの帽子ならとんがれや

眠っているところすいませんとカンペ

びやうびやうと地獄の犬が透きとおる

リンパ液暮れて太秦映画村

ふざければふざけたころがゆめのよう

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