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高水温、低水温ー水温変化が養殖生産者にとって意味することは?

一見、海面は何も変化がなく無限に広がっているように見えますが、海の中をのぞいて見ると、生き生きとした生命に溢れるダイナミックな三次元の環境があります。陸上と同じように、水中の生命は環境条件に応じて分配されます。例えば、サンゴはたくさんの太陽光、澄んだ水、そして暖かい海水温の地域に広がり、イワシの群れは、彼らが食べるプランクトンが繁栄しやすい、より涼しく、栄養豊富な水域に出現します。これらの生物種の分布を決める大きな要因の一つは水温です。水温は、赤道からの位置だけでなく、潮の流れ、時期、水深によっても異なります。私たちが日常生活を過ごし、季節が移り変わるにつれ、海の水温も大きく変化しており、私たちが表面から見ている何気ない青の広がりの下では、実は大きな変化が生じているのです。

海面下の水温状態について言及するとき、通常は天気について話すことはありませんが、日々の天気が私達が家を出るときに着る服を決定するのと同様に、海洋生物の生活も海洋環境条件によって制御されます。空気とは異なり、水の熱容量が大きいため、水温は急激には変化しません。二酸化炭素のユニークな化学的な性質により、水を温めたり冷やしたりするには多くのエネルギーが必要です。これにより、海面下の「天気」は、私たちが陸上で経験するものとは少し異なるものの、空気と同じように、太陽が強く当たると水は熱くなるため、海岸近くの海温は夏と冬で10°C程度の間で変動している地域もあります。

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※中南米の大西洋側と太平洋側の間には、特定の季節に大きな海水の温差が生じる可能性があります。これは主に、海流の違いによるものであり、海上の気温の違いによるものではありません。

水温変化は多くの水産養殖事業者にとって重要です。魚類や甲殻類、また海藻類等どの養殖をしているかに関わらず、周囲の水温によって多くの基礎代謝プロセスが決定される冷血種を生育しています。それぞれの種には、理想的な健康状態及び成長に関連する最適な水温があります。魚類はこの最適な温度を経験したことのなくてもまだ快適な生活を送ることができますが、その種が本当に繁栄する水温の狭い範囲が本当はあります。残念ながら、海面養殖事業者にとって、温度条件が最適な海はまさに魔法のようなもので、散発的にしかそのような環境にならないか、時には全くならない可能性があります。それでも、私たちはその理想的な海洋環境を提供するため、できる限りのことをしていきたいと考えています。例えば、養殖の対象種にとって水温が低すぎず、高すぎない適切な養殖地の選定などです。水の流れが良く、海にひらけている場所は通常、より安定した温度変化になります。湾内または河口付近の場所では、より劇的な温度変化が発生する可能性があるため、一部の種では避ける必要があるでしょう。養殖場を最適配置する以外に、養殖事業者が水温をコントロールするためにできることはあまりなく、母なる自然の気まぐれに左右されます。水を加熱もしくは冷却しようと思っても、継続的に必要となる膨大なエネルギー量による法外な費用がかかってしまいます。では、海を制御するために私たちにできることが何もないのに、なぜ海の温度を養殖事業者は気にするのでしょうか。

私たちは海水温は制御できないものの、他の要因を制御することはできます。海水温は、養殖事業者の日々の意思決定を左右します。例えば、魚を生育または水揚げするのに最適な時期を決定したり、魚の食欲変化を踏まえて日々与える飼料の量を調整したりします。水温が高すぎる場合は、養殖業の生育環境を改善するため、飼育密度を下げたり、追加で健康に必要な成分を与えたり、給餌パターンを変更したりすることができます。これらの決定は魚の生存率と成長率の向上に役立ちますが、現在の水温状況を把握するだけでなく、さらに理想的を言えば水温予測が最初からできない限り、最善の選択をすることはできません。

気候変動は、世界中の養殖事業者にとっても大きな課題の一つです。かつて予測されていた地点の最低気温と最高気温は、以降、その時の最低気温と最高気温を超え続けています。養殖場を新しく適した場所に移動させるだけの選択肢では足りません。気候変動に適応するには、水温を常時確認し、養殖現場でのオペレーションを積極的に変更していくことが重要になります。例えば、早期出荷や逆に出荷時期を後ろ倒しにするなど、課題のいくつかを軽減するためのオペレーション変更を検討するなどです。温度変化にどのように適応するかが、将来の世界的な養殖生産の鍵となるはずです。

水温は、魚類、甲殻類、海藻類のストレスレベルと全体的な生育状態に影響を与えます。また、出荷時期や習性にも影響を与えるため、推定または無視するには重要すぎる指標です。UMITRON PULSE(ウミトロン パルス)は、養殖事業者が自身の養殖場周辺の重要な環境指標、中でも特に水温をチェックするための新しいWebツールです。PULSEでは予測及び履歴データも提供しており、生産者は水質の傾向とパターンをより適切に視覚化して把握することができます。間もなくPULSEがモバイルアプリとしても利用可能になり、いつでもどこでも簡単にスマートフォンから環境データを確認できるようになります。天気予報を確認するのと同じように、海をモニタリングする時が来ました。

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