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仕事の合間に煙草休憩をしていた時だった。とくに休憩時間は定められていないから、私はいつも日の入り時間にあわせて煙草を吸いに行く。今日の日の入りは17時30分だった。夕陽はいつも、言葉にならない感情を代弁してくれているような、もちろん『エモい』なんて言葉では表せない何かを感じる。それは時に勇気になって、時に涙となって、時に思い出のアルバムと化す。

そんないつもの時間、頭の中をぐるぐると堂々巡りしていたものを手放そうと、私はiPhoneをいじっていた。なんとも曖昧な書き方で訳が分からないかもしれない。ただこれは書いてはならなくて、言葉にしてもいけないものなの。分かってほしい。とにかく、それを手放した。断ち切っちゃったな、そんな気持ちになった。iPhoneをポケットへしまい込んで、煙草を消して、もう一度空を見上げた。

その時すっごく強い風が吹いた。その瞬間に私、「バーン！」って独りつぶやいてて。何も考えず出てきたその言葉は、新しい私が誕生した効果音だったのか、撃たれたのか、はたまたスナイパー側だったのか分からない。考えてみたけど分からなかった。大抵の独り言はとっさに出てくるもの。考えて出した言葉じゃなかった。だけどその瞬間、誰かが私をかっさらっていったような感覚に陥って、涙が落ちそうだった。落ちなかったのは、即座に友達にラインをしたから。その子は、そんなちょっとおかしい『バーン！って独り言が出て泣きそうになった話』にも笑わず、泣いていいんだよ、と言ってくれたけど、もう泣く日々は終わらせたかったから。

以前、思い出は不純物だと言ったことがあった。雨水もコーラとして思い出されるようになる。ただそれは、頑張り抜いたという記憶の調味料がないと作用されないのかもしれない。少しの後悔でも残っていたら、もっと頑張れたらと思い残すことがあったなら。その雨水は、そのまま泥として残ってしまう。もちろんその泥すら、干上がり落とすことができるようになればいい。でもそれには時間が不可欠だったり。
きっと今の私はこれだと思う。不十分な準備のまま挑んだ決断と、不十分な結果に、どうしても強い未練が残っている。時間が必要ではあるけれど、今の私が選んだ道を正しくしていく、そんな整備を行うことが今はご自愛なのかと思ったりもする。結局、私は私が可愛いだけ。それでいいし、変えるつもりもない。

じゃあなんで、こんなに他人に愛を感じてしまうんだろう。関係を断つとか見切りをつけるとか。なんでこんなに苦しくて、なんで人を嫌いになれず、好かれたいと思ってしまうんだろう。

おそらく堂々巡りは少しのあいだ続くんだと思う。ばっちりしんどい。全然毎晩泣いてしまうし、夢ばかり見る。白い毛が生えた芋虫が出てきたり、白い貞子が出てきた夜はその後怖くて眠れなかった。友達と遊んで帰る家は辛いし、なんでこのタイミングで生理なんだと腹立たしい。ただ大丈夫、わたしは強い。強いと誇りを持って言える。弱さを知る強さがわたしにはある。その自信だけが道しるべになると信じて、明日も生きる。