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世界一周 6日目🇫🇮 ヘルシンキ スオメンリンナ島

スオメンリンナ島

曇天の下、鏡のように黒い海面を滑るようにその船はやってくる。

ヘルシンキの人気観光地、スオメンリンナの要塞へ行くための船だ。
かつてこの地がスウェーデンと呼ばれていた時に建設され、幾たびも所有者が変わった要塞。
今はこの地を訪れた旅人に愛される名所として、その余生を送っている。

ちらちらと雪が降り始める中、船は街を離れる。

遠ざかる街

綺麗な建物が並ぶ、彩度の低い街並みを、今日も雪が覆っていく。
遠くに白い大聖堂。
一段高く聳えるその建物は、この街の人々をいつも見守っている。

ゴトリ、と音がする。
見ると砕けた氷が船の後方へと遠ざかっていく。
海氷だ。船にぶつかったのだろう。

海氷

街から遠ざかるにつれて、海はバラバラになった海氷に覆われていく。
その海氷を押し退けながら、船は島へと航路を進めていく。

ポツリと浮かぶ小さな島に、マッチ箱のような小屋が見えた。

ぽつんと一軒家

……なんのための小屋なのだろう。
現世嫌いの魔法使いでも住んでいるのだろうか。

しばらくして船は島に到着する。
かつて要塞だったからだろうか。
その島の雰囲気はどこかモノクロで硬い。
ただ今は静寂と、穏やかな空気が漂っている。

スオメンリンナ島

案内所に日本語のパンフレットがあった。
すごい。

にほんごパンフレット

つい変な日本語を探したが、見つからなかった。
日本の観光所に置いても違和感がないくらい。
とてもすごい。

島の中は、驚くほど素朴だった。
まるで普通の、閑散とした住宅街のようだ。
雲が空を流れる。
煉瓦造りの教会が佇んでいた。

島の中

しばらくすると、要塞の壁が随所に現れるようになった。
雪景色の中、そのしっかりとした石造りがよく似合う。

それは確かな存在感を持って、かつての島の防御を静かに伝えてくる。
空いた穴はどんな用途があったのだろうか。
砲を据え付けていたのだろうか。

石壁

壁の内側に入ることもできた。

なか

食糧庫とか弾薬庫とかだったりしたのだろうか。
何がここに貯蔵されていたのだろう。
あるいは別の用途があったのだろうか。

強化された扉

しばらく歩くと、島の端っこに辿り着く。
丘の上の大きな大砲が、遠い空の向こうを向いている。

たいほー

丘に上がると海がよく見渡せた。
凪いだ黒曜石のような海面と、分厚い雲に挟まれた世界だ。

静かな海面

確かに目の前を横切る艦船を狙うのに、これほど良い場所はないだろう。
クリミア戦争の時にイギリスとフランスの海軍によってこの島が艦砲射撃を受けたらしい。
19世紀中頃ってことは多分まだ戦列艦の木造帆船だよな……目の前の海に両国の艦隊が並んでこちらに大砲を向けていたとかと思うと、歴史的情緒にロマンが震える。

雲の上から、輝く太陽光が海を照らしていた。

もっと島の先端から海を見ようと思ったが、丘の上の道は凍っていてつるつるに滑った。
二回ほど転んで断念した。

今日は一段と気温が低い。
ヒートテック(極暖)に長袖シャツにウルトラライトダウンに軽めのダウンを重ね着してようやくちょうどいいくらいだが、それでも耳がとても冷たい。
私は丘の上を去り、もと来た道を引き返した。

途中のショップのカフェのコーヒーが美味しかった。耳があったまる。

サンドイッチの中身は冷たい

船に乗り込む。
後方にかつての要塞が遠ざかっていく。
静寂の中、それは雪を薄く湛えていた。

遠ざかる島

オールドマーケットホール

知らない国の市場を訪れるのは、いつだってワクワクするものだ。
売られている商品の香りや見た目から現地の食生活を垣間見ることができる。
船着場の近くに、マーケットホールがある。

マーケットホール

どことなくゴシックを連想させるその建物の扉をくぐる。
中には小さな商店やレストランが、ところ狭しと並んでいる。

あったかいちば

暖色系の明かりが目に優しく、活気ある市場だ。

肉やサーモン、サンドウィッチなど見ているだけでお腹が空くような商品がたくさん並んでいる。

しなもの

ここに住む人たちは、薄切りの牛肉とワインを買って帰って、家で一人贅沢な時間を過ごすようなこともあるのだろうか。
そんな夜は、きっと素晴らしい。

品揃えも、商品の並び方も、雰囲気がアジアと全然違う。
おそらく現地の人の日用使い、というよりは観光客向けだったりお洒落に食事をする場所だ、ということもあるのだろうが。
なんせ静かで、小綺麗で、まとまった印象を受ける。

マリメッコアウトレット

マーケットホールを出てヘルシンキ中央駅の方へ向かう。
地下鉄に乗って、ヘルットニエミに向かいたいのだ。
そこにはマリメッコ本社と、アウトレットがあるらしい。

私がヘルシンキを訪れた最大の理由は、マリメッコにある。
世界に星の数ほどあるアパレルブランドの中で、一番好きなのだ。
自然を抽象化する、というそのコンセプトが気に入っている。
ただ日本だとそんなに品揃えが豊富じゃないんだ……

地下鉄の駅、そのエスカレータを降りていく。
やっぱり改札がないのは便利だ。
それに一日券を買えば、路面電車も地下鉄もさっきの船も乗り放題なところもすごく便利だ。
ヘルシンキを観光するだけであれば、一番低い値段のチケットで済むし。

赤色の地下鉄に乗り込んだ。

ちかてつ

地図アプリで見る限りちょっと距離があるのかなと思っていたら、わりとすぐに目的地に着いた。

えき

ヘルットニエミ駅、地上に上がると、ここもまた寒かった。

みちをあるく

ちょっと歩けばすぐにマリメッコアウトレットが見えてくる。

マリメッコアウトレット

店内には溢れんばかりのマリメッコグッツがあった。
当然服もたくさんある。
マリメッコのデザインで、この空間が埋め尽くされている。
ここが天国か。
あ、あのマグカップ欲しい。超可愛い。
でも持ち歩くの無理だな、絶対割れるし。
とはいえ日本まで送る気にもなれないんだ……

しばらく店内を物色し、私はレジへと向かった。
ハンカチを購入する。きっと私のお気に入りになることだろう。

アウトレットにはカフェが併設されていると聞いた。

「カフェどこ?」
「ごめん。昼で閉まっちゃった……もしカフェ行きたいなら、駅前のモールにあるよ!」

というわけで駅前のショッピングモールに来た。

ショッピングモール

エスカレータで2階に上がると、たくさんレストランやカフェがあった。
でも私今コーヒーの気分じゃないんだよな。

実はもっと飲みたいものがある……

これじゃよ

マーケットホールに戻ってきた私はサーモンサンドウィッチとハウスワインを注文した。
旅に出てから初めてのアルコールである。
治安良さそうだし、一人で酔っても大丈夫だろう。

まずはハウスワインから……
なんだこれ、めっちゃ美味いが。
鼻に抜けていく甘めの上品な香り、すっきりとした後味。
ワインは苦手だったんだが、これは本当に美味しい。
フィンランドハウスワイン恐るべし。

サーモンサンドウィッチも美味しかった。
薄く切られたサーモンのまろやかさと、黒パンの酸味がよくマッチしている。

暖かくなった体で街を歩き、ホテルに帰ったら眠くなったので寝た。

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