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世界一周 28日目🇧🇴 病院

とても綺麗な景色を見た後のこと。
真夜中に目が覚める。

(呼吸が……苦しい)

世界が大きな水槽になって
ちょっとずつ溺れているような感覚だ。
真綿で首を絞められるように
息ができなくなっていくような。

吸い込んでも吸い込んでも
大事なものが足りない気がする。

「うーんだめぽ」

パソコンを取り出して低地行きのフライトを検索する。
多分「判断が早い!」と褒められるくらいのスピードで。

あと一日耐えられる気がしない。
苦しいのは嫌じゃ。
しかし検索結果を見て絶望する。

(なん……だと……)

手頃な低地、サンタクルス(高度400m)に行くにはラパスを経由しないといけないが、ウユニからラパスに行く飛行機は一日に一つしか無かった(2024年2月現在)。

空港で見た感じもうちょっと便あるはずなんだけど、いくら調べても出てこなかった。

つまりウユニ(標高3700m)から飛行機で脱出するチャンスは一日一回である。
脱出できたとて、良い乗り継ぎ便が無ければラパスの空港(標高4000m)に取り残される事になる……

一日一回、朝9時くらいのフライトである。
ちなホテルに洗濯物を預けており、それが返ってくるのが朝8時であった。

乗るの無理じゃな。

そのフライトの次は、翌日のフライトになる。
それは元から乗る予定のやつだ……

とりあえずサポートデスクに電話して、何とか今後のフライトを低地に出来るだけ早く到着するものに変えられないか聞いてみる。

するとウユニの出発便は変わらないが、ラパス空港(高度4000m)での滞在時間が12時間くらい減る行程に一周航空券を変更してもらえた。

ありがたい。

変更代金を振り込んで少し安堵する。
とりあえずベストは尽くした。
あとは天命を……

くるしー

どうにかこうにか眠りにはつけた。
もう一回くらい夜中に起きたりした。

朝。
起きたらちょっとだけましになっていた。
でもまだ息苦しかった。

(……病院に行きたい)
症状自体は耐えられるが、なんかやばい進行度とかだったら怖いのじゃ……
フライトまでまだ一日あるし。
1人だからどっかで動けなくなったら詰むし……

保険会社に連絡する。
どうやら提携の病院がウユニに一軒だけあり、キャッシュレスで診察が受けられるらしい。

よし。そこに行こう。
保険に入っていて良かった。

4時間ほどで訪問の準備ができたらしいメールを受け取った。
場所を調べるために、病院名をグーグルで検索してみる……

お、ホテルに近い!!
嬉しい!!

ユーザー評価は……
星1.2!!!!

1.2……?
5点満点で?

やばそう。
ちょっと怖くなってきた。

でも好奇心がもりもり浮かんで来る。
一体どんな病院だと言うんだ……?

(せっかく手配してもらったんだしな……)

行くことにした。


ゆっくりゆっくり歩いて病院に辿り着く。
外見は至って普通のビルだ。

中に入る。
受付があった。
職員が丁寧に廊下を掃除している。

廊下の先がちょっと薄暗い。
受付の隣に謎の人形が置いてあった。

ガラスケースの中に、鎌みたいなものを持った人形。
存在感がある。

名前を聞かれて答えると、診察室に通されて血圧計とパルスオキシメーターと体温計で検査を受ける。

あれ……まともだ。
ちょっと安心した。

それから別の部屋で問診を受ける。
グーグル翻訳越しに。

私はスパニッシュを話せない。

意外と翻訳アプリ越しでも話が通じる。

それから診察台で肺の聴診を受けた。

さて、気になる診察結果は……!

「高山病」

わあ!!!
そんな気がした!!!

「酸素吸入と注射と、検査のために明日の朝まで入院です」

え……

嫌じゃが。
お注射嫌じゃ。
あと入院はもっと嫌じゃ。

地球の裏側で入院とか心細くてチワワになる。

翻訳アプリに打ち込む。

「個人的な心情からできれば注射と入院はしたくありません。内服薬と酸素だけにできませんか?」

「OK」

あ、オッケーなんだ。
やったー。

「コロナウイルスの検査も行います。それはあなたの旅をハッピーにする」

ハッピーで埋め尽くして行きましょう。
レストインピースはいらないけど。

てか注射と入院がないなら何でも良いっす。

結局1時間の酸素吸入に、3種類の内服薬の処方と相なった。

ありがたい!!!
特に酸素!!!

寝台に横になって酸素マスクから酸素を吸い込む。
生き返るような感じだ。
知らない天井を見つめて酸素を吸っているとテンションが上がってくる。

旅行を始めたばかりの時はボリビアの病院で酸素を吸うことになるとは予想もしていなかった……

ありがとう酸素。
君がいないと僕は生きていけない。

体調がすごく良くなってくる。

最後に薬を渡されて、診療は終わった。
お医者さんと職員の人に心からのグラシアス。
保険会社もありがとう。

渡された3種類の薬の中で、CURADIL90と名がついたジュースみたいな薬が特に良かった。
電解質栄養ドリンク。
見た目は真っ赤でバイオハザードに出てきそうな感じなのだが、それを飲むとなんかしんどいのが一時的に打ち消されて元気になる。

然るに私に足りなかったのはどうやら水分らしい。

無理せずに行って良かった病院。
これでフライトまで耐えられる……多分。

健康のありがたみを思い知った私は、近くのレストランの唐揚げを噛み締めるのだった。

美味い……!

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