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【エッセイ】物語を書くということ

 物語を書くということは、過去の自分を現在まで導く為の航海灯を灯す作業に似ている。あの日の自分は、今日のこの日の為にいたのだという思いを見付けて導く。それを自分にすることが出来るのは自分しかいない。私は、そう考えていた。

 だが、近頃になって思う。本当にそうだろうか。自分を導くことが出来るのは自分自身だけなのだろうか。私の中では、それは違うのかもしれないと思い始めている。

 友人。その存在が、過去の点となっている私を何度も救ってくれたことを思う。私は当時、ありがとうが言えていたのだろうか?

 物語を書くということは孤独な作業だ。これまでの連続している自分と、それに纏わる思い出を脳裏に巡らせながら言葉を探す旅だ。だが、きっとひとりきりではないのだろう。矛盾しているようで、そんなことはないように思う。これまでの自分と共にいてくれた多くの人達との思い出と共に私は執筆をする。たとえ、もう相手がそれを忘れてしまっていたとしても、私の中には航海灯のようにしてきっとずっとそこにある。繰り返し思い出すことで、思い出は思い出たり得る。

 終わらない回転灯篭を見ているような気分になる。変化し続ける万華鏡を覗いているような思いになる。過去から現在、未来までの心を乗せて私の日々は廻って行く。思い出も、これからへの思いも。

 いつか、全て還元出来る日がきっと来ると信じている。

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