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【エッセイ】言えない言葉
まだ、ばいばいを言う準備が出来ていなかったのに。
約束のない明日。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。不意に会えて、不意にいなくなっていた。沢山の話をした。日常世界の話、趣味の話、好きな紅茶の話。どれも大切な宝物。もう二度と増えないのかもしれない、宝物。
時間が巻き戻るのなら、何かこうならないきっかけを見付けることが出来るのかもしれない。でも、時間を巻き戻すことの出来る人はこの世界に一人もいない。少しずつ、歩く時間がずれて行ったのかもしれない。もう二度と会えないのかもしれない、時間。
大切な人。友達だったのか、好きな人だったのか今になっても私は分からずにいる。ただ、光を失ったようにして悲しさが増して行く。私は、これからも私の日常世界を、時間の中を生きて過ごして行かなくてはならないのかもしれない。大切な人がいなくても。もう二度と声を聞けないのかもしれない、日常。
今だけが、つらいのかも。そんな思いが去来する。それが真実であったとしても、私はきっとこの先ずっと忘れない。私を助けてくれた大切な人がいてくれたこと。約束をしてくれた大切な人がいてくれたこと。私を想ってくれた大切な人がいてくれたこと。もう会えなくても。
ばいばいなんて言う日が来るわけないと思っていた。それを言う準備もしていなかった。大切な人が好きだと言っていた歌、ピアノの曲、ルイボスティー。ずっと、ばいばいなんて私は言えない。
明日は、昨日のように今日のように来る。私は宝物と一緒に生きて行く。
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