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【エッセイ】航海灯のような存在
大切なことは目に見えない。サン=テグジュペリが書いた「星の王子様」に書かれた言葉です。これを私が初めて聞いたのは、母からでした。ただ、母は「星の王子様」を読んだことはあるものの、あまり内容が分からなかったとも言っていました。それでも覚えている言葉がある、と。それが冒頭に書いた、大切なことは目に見えないという言葉です。
小さい頃の私は、なんのこっちゃと思って首を傾げるだけでした。目に見えなくて当たり前では、とも思った記憶があります。とにかく小さい頃の私には何のことだか良く分からなかったのです。
おとなになったいまの私でも、その言葉の意味を正確に理解しているという自信はありません。心とか想いとか、そういうものを差すのだろうか……くらいにしか分からないのです。そんな私ですが、最近になってふと思い出すのです。大切なものは目に見えない。この言葉を。
たとえば、友だち。友だちは人間という形で私の目に見えるけれど。その友だちの心は誰にも見えないのです。友だち自身にも、見えないものです。私と友だちが、友だちでいられるのは心や想いで繋がっているからです。けれど、目に見えないそれらは交流の途中で形や温度を変えて行くのでしょう。ずっと仲良しのまま友だち同士でいられることもあれば、すれ違いなどによって友だちではいられなくなってしまうこともあります。
うまく、言えないけれど。私は目に見える豊かさだけを追求してしまった時期があります。大切な雑貨や洋服たちに囲まれて、一時、私は幸せでした。だけど、何処か空虚でした。気が付かない振りをし続けて長い時間が過ぎてしまったように思います。いまでも、ほしいものは沢山あります。紅茶だってマグカップだって靴だって。色々なものがほしい。しかし、私はもう其処に戻り囚われることがないようにしたいのです。
私には友だちがいる。その現実が、この世界で確かに私の心をあたためるのです。航海灯のようになって、先を照らしてくれるのです。それの何と尊いことか。
これから先、また私が迷子になりそうになったら。私は友だちのことを思い出し、道に戻りたいです。
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