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海へと続く町、海とともに暮らす町。横芝光町を自転車で巡ったら、すてきな景色に出あえました

秋もすっかり深まり、冬の気配を感じはじめた、とある一日。千葉県・横芝光町を電動自転車で走るサイクリングツアー「よこしばひかり SUISUI 自転車さんぽ」が開催されました。

横芝光町はのどかな田園風景の先に、広々とした白い砂浜が続く、海とともにある町。電動自転車を漕ぎながら海を目指すと、そこに広がっていたのは、どこまでも続く空と海だけの空間でした。

今回は、そんな海を近くに感じるイベントに参加したメンバーによる体験レポートをお届けします。

海や川の恩恵は、いきいきと育つ農作物にも

東京駅から特急しおさいに乗って約80分。降り立ったのは、千葉県最古の駅舎として知られる横芝駅。今回参加するサイクリングコースの出発地点は、横芝駅前にある駅前情報交流館「ヨリドコロ」です。ここから電動自転車に乗って、海に向けて出発!

町の中を自転車で走っていると、あちらこちらにネギ畑。葉が青々とし、空に向かってスッとのびるネギは、横芝光町の特産品。「ひかりねぎ」というブランド名で知られ、日本農業賞大賞に輝くなど、市場でも高く評価されているのだそう。どの畑も、ネギがきっちりきれいに植えられていて、それを見ているだけでも気持ちがいい。

畑にちょっと立ち寄って、はじめてのネギ掘り体験を。ネギは、外に出ているのは葉の部分だけで、ネギの白い部分は土の中。土を何度も上へ上へと盛っていきながら育てていき、最終的に白い部分を30センチ以上にのばしていくのだとか。

土に深く埋まったネギを両手でスッと抜いてみると、なんとも言えない感覚。収穫の面白さや喜びがじわりと湧いてきます。

土まみれのネギは生き生きとし、そして薄皮を剥いてみると、真っ白でピカピカ光る新鮮なネギがお目見え。スーパーで目にするネギよりも倍以上の太さで、新鮮さも抜群。収穫したものを自宅でいただいてみると、甘みがあり、とてもみずみずしいネギでした。ひかりねぎ、ぜひ一度ご賞味あれ!

このあたりでネギ畑が多いのは、実は海とも深い関係があるといいます。横芝光町は太平洋に面していて、平坦地と丘陵地があり、そして町の中央を川が流れている地勢。そして夏は涼しく、冬は暖かい海洋性気候という恵まれた自然環境と、さらに排水性の高い土壌がネギの育成に向いているといいます。海がそばにあることで、農作物にも大きな影響があるのですね。

海で知ったのは大地の美しさと、町で暮らす人たちの思い

海方面に向かってペダルを漕いでいると、少しずつ潮風を感じはじめて、その先にある海の存在を知ります。見上げる空も、だんだんと広くなっていくよう。
 
松の防砂林を抜けると、急に目の前がパッとひらけて、そこには海が広がっていました。夏とは違って、冬の海は人もまばらで、そして静か。波の音だけが響いています。

ここは、コースの折り返し地点にある「屋形海岸」。九十九里浜のちょうど中央に位置し、夏は海水浴客、年間を通してサーフィンを楽しむ人が訪れるそう。ビーチの中央あたりにある「マリンピアくりやまがわ」では、初夏にはピンク色のハマヒルガオが咲き誇り、海とピンクの花の共演が楽しめる穴場的なビーチなのです。また、春から秋にかけては、町の鳥であるコアジサシが、繁殖のために海に飛来してくる光景も見られます。

全長66kmにおよぶ九十九里は、遮るものが何もなく、水平線の両端が丸みを帯びて見えます。屋形海岸に立ってみると、左手には銚子の犬吠埼灯台や屏風ヶ浦、右手には太東岬。思った以上にはるか遠くに見えるから不思議です。こうして実際のスケールで見てみると、地図ではキュッとコンパクトに思えるのに、「やっぱり大地は広いんだな、地球って本当に大きいんだな〜」と実感。これは、海に来てこそ感じられる感覚なのかもしれません。
 
この屋形海岸の少し北にいったところにある「木戸浜海岸」は、6月下旬から8月中旬にかけて、アオウミガメが産卵のために訪れるという貴重な場所。それもなんと、ウミガメの産卵場所としては最北端だとか。ウミガメを守るために砂浜にロープを張るなど、ボランティアさんを中心に町が一丸となって、大切な生命、そして地球環境を守っているのです。
 
ウミガメに遭遇できるチャンスは、人がいない早朝の時間帯。地元に暮らしていても滅多に出あえないそうですが、もし遭遇したら幸運の持ち主!
 
さらに町の人から、ロマンティックな海の話も聞けました。潮が引いた砂浜が、まるで鏡のような反射を作る時があるというのだとか。「屋形海岸の水鏡」と呼ばれていて、天候や時間帯などの条件が合えば、遭遇できるかも。海では、そんな素敵な偶然の出あいがあるかもしれませんよ。

この日は、海風によって砂浜に風の跡ができていました。これ、「風紋」と呼ぶのだそう。さらに誰かの足跡も。砂も白くサラサラしていて、ここを走ったら、絶対に気持ちいいだろうな〜と心の中でこっそりと思いながら、素足で歩き回りたい衝動にかられる私。ツアー中でなければ、いますぐ靴と靴下を脱いで走りたい!(笑)

海でひと通り遊んだら、今度は栗山川を北上。海とはまた違って、静かな水面に水鳥が優雅に泳いでいて、ホッとする風景が広がります。
 
横芝光町の中央を流れ、太平洋に注ぐ栗山川は、数年前までサケが遡上する南限の川として知られていました。以前は、町内の小学生が有精卵のいくらからサケの稚魚を育てて観察し、3月に放流する“里親活動”が行われていたそう。ウミガメを守る活動といい、このサケの里親活動といい、町全体で自然を大切にする活動が活発に行われているのですね。

モンベルのフレンドエリアに指定されている横芝光町では、栗山川でのカヤック体験もできます。この日は川沿いを走りましたが、今度は水面からの景色も楽しみたいところです。
 
川沿いを走っていると、カニさんものんびり散歩中。普段、カニなんて滅多に目にしない参加者一同、ちょっとテンションが上がりました。

都会の街中を歩いていたり、自転車に乗っていても、足元を気にせずに過ごしていることが多いかも。でも、このような自然の中にいると、普段は目に留まらないものを見つけたり、風の匂いを感じたり、自然の音を聞き取ったりと、さまざまな発見があるのかもしれませんね。
 
 
今回のサイクリングツアーのように、都会に住む私たちでも、ちょっとだけ足を伸ばせば自然に触れ合うことができます。こうしてたまに海に出かけてみると、日常では得られない感覚を味わえたり、あらためて地球の美しさを知ることができるのです。そして、自然に触れ合うことで、そこで暮らす人たちのこと、さらにその思いを知ることができるかもしれません。
 
みなさんも、時々海に出かけて、そんな感覚を味わってみてはいかがでしょうか。
 
 
 
取材・文/内田あり

横芝光町ホームページ
https://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/
 
横芝光町 観光情報サイト「よこしばひかりNavi」
https://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/site/yokoshibahikari-navi/
 
横芝光町の移住定住サポートサイト
https://yoridokoro.chiba.jp/
 
モンベルフレンドエリア 九十九里
https://club.montbell.jp/privilege/fshop/aboutarea/disp.php?friendarea_id=162
 
よこぴか倶楽部
https://yokopika.club/