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匙投げ小説執筆法 8.キャラの魅せ方

キャラの魅せ方


書き手は、えてして完全無欠で一切迷わず恐れないキャラを登場させてしまいがちです。おそらく読者はそのキャラを心配する気にならないでしょう。キャラの迷い・恐れ・葛藤が物語のスパイスになるのです。出来事が物語を興味深くするのではなく、その出来事に対するキャラのリアクションが物語を興味深くします。


⑴動機第一

欠落や不足のないキャラは、主人公たりえません。主人公の動機と意図で、物語が動きだします。物語の世界においては、"我願う、ゆえに我あり"。「キャラが立つ」というのは、それだけ強烈な独自の動機を持っているということです。そもそもの動機があやふやだと、キャラの行動が荒唐無稽でご都合主義に感じられます。しっかりと考え抜きましょう。

率直なキャラは動機と行動を一致させましょう。複雑なキャラは動機と行動の不一致を窺わせましょう。

主人公であれば、共感や好感を持たれたほうがお得です。良い動機を持たせましょう。良い動機とは、「自己よりは他者のために」というもの。家族、恋人、友達、ペット、動物、見知らぬ他者……誰かのために尽力する主人公は、読者に共感されやすいです。しかし、あまりに崇高な自己犠牲が過ぎても嘘くさい(彼が宗教家であれば説得力があるかもしれません)。そこは兼ねあいましょう。

主人公にはあらゆるシーンで当面の目的を持たせるのがベターですが、それがない場合は他のキャラに働きかけさせましょう。主人公が無目的にうろうろするシーンは中だるみにしかなりません。

主人公がたとえ不完全であっても、彼/彼女の失敗・挫折の原因は、必ず不可抗力であること。失敗が主人公の怠惰や愚鈍さに起因するのは論外です。無能な主人公は読者に見放されます(抱腹絶倒のコメディであれば別かもしれませんが)。

⑵選択・決断・実行

彼/彼女の動機の独自性が弱くても、キャラを立てる方法はあります。そのキャラに(物語の分岐点となる)重要な選択と決断をさせ、行動に反映してください。たとえ環境や他者に翻弄されるキャラであっても、自分で考え自力で頑張る姿は光ります。

⑶特徴および行動

各キャラに名前を付与すると同時に、特徴(口癖・身長の高低・痩身or肥満・眼鏡・ホクロ・歯並び・髭・髪色および癖毛・特定のファッション)を持たせるのも良い手です。そのキャラを最初に描写するとき、その特徴を強調しておけば、のちにこのキャラの出てくるシーンでその特徴に言及しさえすれば、読者の脳裏にはそのキャラが生き生きと思いだされます。

シャイなキャラという設定であれば、"彼女はシャイだ"などと書くよりは、シャイな行動をとらせてみてください。"彼女は赤面し、手にした絵本で顔を隠した"とか。

そのキャラが何をどう食べるかというのも、キャラクター造形の一つです。食事にはその人物の生い立ち・生活習慣・思想が如実に反映されます。ミステリアスなキャラを書きたければ、食事シーンを描かないというのも一案です。

そのキャラの恋愛対象の異性(または同性)に対する態度や行為も同様でしょうが、恋愛モノかポルノでないかぎり、そこまで掘り下げなくてもよいでしょう。

次、9.セリフについて

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