匙投げ小説執筆法 15.地名のつけ方(日本篇)
小説を書くなかで、架空の地名を用いる必要性に迫られることが多々あります。でも良さげな地名が浮かばない! そんなあなたのために、今回は日本の地名によく見られる50の接尾辞を集めました。こいつに良さげな単語を組みあわせれば、良さげな地名ができあがることでしょう。また、A郡やB村などとアルファベットを当てはめるのも良いでしょう。
◯日本の地名の接尾語50
1.-山(さん、やま)
実例:富士山、六甲山、妙高山、恐山、富山、岡山、葉山、青山、代官山
山を意味し、実際の山の名前や、山に関連する地域に使われる。
2.-岳、-嶽(たけ、だけ、がく)
実例:穂高岳、白神岳、天狗岳、御嶽
「岳」は険しい山や高い山を表す言葉で、古い地名や登山の名所などに見られる。山岳信仰に関連する場所につけられることが多い。
3.-ヶ岳(がたけ)
実例:八ヶ岳、槍ヶ岳、経ヶ岳、駒ヶ岳
「-ヶ岳」は古い地名として残る一方、比較的新しい地名や山岳リゾート地、スキー場など観光地などの名称にも採用され、地域の山の景観や雄大さを強調する目的で使われる。
4.-坂(さか、ざか)
実例:大阪、赤坂、神楽坂、道玄坂、権太坂
傾斜地や高低差のある土地に見られ、昔からの地形がそのまま残っている。坂は古くから交通の要所だったため、とくに都市部の坂は住宅地や商業地が広がっていることが多い。眺望がよく、住宅地としても人気がある。
5.-森(もり)
実例:青森、大森、飯森、夜ノ森
「森」は木々が茂る場所や、森林に囲まれた地域を指す。昔からの自然地形や、緑が豊かであることを強調する。古くからの「-森」は神聖な場所や神社が置かれる場所としても用いられ、鎮守の森という概念に繋がることが多い。
6.-ヶ森(がもり)
実例:光ヶ森、鈴ヶ森、瓶ヶ森、三ヶ森
比較的新しい地名で、地域新興住宅地でも周囲に緑や自然を残したエリアなどで、自然を感じさせる環境や緑豊かなを表現する際に見られる。
7.-原(はら、わら、ばら、ばる)
実例:秋葉原、伊勢原、市原、吉原、荏原、旭原、山原
広い平地や原っぱを意味する。九州、沖縄地方での地名において「-ばる」という読み方が多い。
8.-ヶ原(がはら、がわら)
実例:光ヶ原、美ヶ原、戦場ヶ原
開発された地域や新興住宅地で、自然環境や広がりのある風景をイメージさせるために用いられる。歴史的には、かつて川原や平地だった場所の地名に使われることもある。
9.-野(の)
実例:長野、相模野、あきる野、阿倍野
野原や広い平地を意味し、自然が広がる地域に使われることが多い。
10.-田(た、だ)
実例:秋田、神田、町田、五反田、千代田
「田」は水田や畑を意味する。古くからの自然地形に由来する場合もあるが、住宅地や新興地にも使われる。歴史的な文脈でいえば、開墾が行われた新しい土地にしばしば「田」が付けられることが多かった。
11.-堀(ほり、ぼり)
実例:船堀、八丁堀、道頓堀
おもに人工的に作られた水路や溝、堀に由来し、その地域が水路や防御のための堀に関連することを示す。かつて堀は、城や町を守るため、あるいは物資を運搬するために重要な役割を果たしており、その周囲に集落や商業地が発展した。このため、歴史的に重要な地域が多い。
12.-宿(じゅく、すき)
実例:新宿、原宿、今宿、宇宿、指宿
かつての宿場町・宿駅に由来し、交通の要所であった土地に見られる。現在でも商業地として栄える場所が多い一方で、歴史的な名残の色濃い場所もある。なお、九州地方において「すき」の読みが見られる。
13.-内(うち、ない、だい)
実例:丸の内、宮内、関内
町の中心や特定の区域を示すことが多く、古くからの集落や行政区域名に一般的である。
14.-口(くち、ぐち)
実例:山口、京口、守口、千早口、塚口、溝口、大口、三崎口、川口
その場所が道や川の入口や出口、境界に位置し、交通の要所や水運の拠点として機能していたことを示す。地形的な特徴や人の行き交う拠点として、地域社会や経済の発展に重要な役割を果たしていたことを反映している
15-門(もん、かど、と)
実例:半蔵門、虎ノ門、桜田門、雷門、赤門、長門、鳴門、門屋門
その土地が入口や境界に関連することを示す。城や都市の防御拠点、神社仏閣の入口、交通の要所、地理的境界など。
16.-前(まえ、さき、ざき、ぜん)
実例:蔵前、松前、宮前、寺前、旭前、弘前、神前、備前、越前、羽前、筑前
歴史的・文化的な背景を持つ場所が多く、その地域が神社、城、宮殿などの前に立地していたことがその由来となっている。あるいは地形や国の手前に位置することを意味する。また、交通や物流の拠点としても栄えた地域が多いのが特徴。
17.-尻(しり、じり)
実例:江尻、奥尻、塩尻、三田尻
地名の「尻」は「端」「末端」「背後」などを意味し、おもにその土地が地形の末端や地域の端、たとえば川や海の終わり、または奥まった場所にあることを示す。地勢や自然環境に強く根ざした古代からの地名が多い。
18.-里(さと、ざと、り)
実例:清里、浦里、安里、首里、伊万里、日暮里
「里」は主に村落や集落、自然豊かな場所を指し、また文化的・歴史的な要所や交易拠点に由来することが多い。人々が集まり、生活や生産活動を営む場所としての意味を持ち、地形や自然環境との関わりも深い。
19.-地(ち、じ)
実例:築地、久地、甘地、宮地、六反地。志和地
「~の土地」を示す。古い地名が多い。
20.-場(ば、じょう)
実例:台場、駒場、木場、橋場、踊場、的場、岡場、御殿場、向市場、合戦場
「~の場所」を示す。古い地名が多い。
21.立(たち、だち、たて、だて、りゅう)
実例:日立、国立、名立、天橋立、知立
地名における「立」は、高所や景勝地などの地形的な特徴や、設立・創設の意味、または歴史的・宗教的な背景に由来する。場所の特性やその役割を反映し、地域の歴史や文化に深く根づいている。
22.-橋(はし、ばし)
実例:日本橋、数寄屋橋、飯田橋、板橋、新橋、大桟橋、前橋、戎橋、心斎橋、京橋
川や谷などに架けられた構造物や、その周辺の地名に使われる。橋は川や谷を渡るための重要な構造物であり、古代から現代に至るまで交通や物流の要所として発展してきた。そのため、橋の名前がそのまま都市や地域名に転じ、周辺地域の発展に大きく寄与している。
23.-井
実例:福井、石神井、小金井、大井、岩井、袋井、緑井
その土地が水に関連する場所(井戸、泉、川、低地)であり、古代から水源や水利システムとして重要な役割を果たしていたことを示す。水は生活や農業において欠かせない要素であり、それが地名に反映され、現在まで受け継がれている。
24.-水(みず、み、すい)
実例:御茶ノ水、清水、玉水、走水、浅水、桜水、菊水、垂水
水が豊富にある場所、清らかな水源や川の流れを表し、古くから地域の生活に根ざしている。日本では古くから水を神聖視する文化があり、特に清らかな水源や川、湧き水は神社や信仰の対象とされてきたため、地域の歴史や信仰にも深く関わっていることがある。
25.-川、-河(かわ、がわ)
実例:江戸川、品川、荒川、多摩川、鴨川、白河、三河
川を意味し、川に関連する場所や地名に使われる。とくに「河」は大きな川を意味することが多い。関東では「かわ」、関西では「がわ」と発音される傾向がある。
26.-池(いけ)
実例:不忍池、井の頭池、洗足池
池や湖に関連する地名で、かつて池や湿地があった場所に使われることが多い。
27.-沼(ぬま)
実例:牛沼、大沼、気仙沼、手賀沼
湿地帯や沼地に関する地名で、水が溜まりやすい地形によく見られ、地盤の軟弱な場合がある。とくに沿岸部に位置する土地では、漁業や水産業が盛んな地域が多い。
28.-沢(さわ、ざわ)
実例:金沢、軽井沢、藤沢
主に川沿いや谷間、湿地など、水が豊富に存在する地域を表す。山や丘陵地帯の間を流れる小川や湿地を指すことが多く、地形的に水が豊富であることを意味する。また、川の流れが緩やかで、浅瀬が続く地域にも使われる。
29.-瀬(せ、ぜ)
実例:綾瀬、清瀬、尾瀬、奥入瀬、天ヶ瀬
「瀬」という語は川の流れが速く、浅瀬になったところを意味する。浅瀬は昔から渡し場として使われることが多く、そこに集落が発展したケースがある。川の流れが速く浅い「瀬」は、しばしば美しい自然景観を形成するため観光地としても発展していることもある。
30.-江(え、うみ)
実例:狛江、鯖江、住之江、寒河江、近江
水辺や川、湖、海に近い肥沃な土地を指す。かつて水運や交通の要所として栄えた場所も多い。
31.-津(つ、づ)
実例:津、草津、木更津、君津、会津、焼津、沼津、摂津、大津、魚津
「津」は港や船着場を指し、海や川に面した水運の拠点や港町として栄えた土地に見られる。現在でも漁業や海運業を中心とする経済活動が盛んな場所が多い。
32.-洲(す、ず、しま)
実例:八重洲、天王洲、豊洲、若洲、清洲、中洲、野洲、夢洲、舞洲、八洲、秋津洲
水辺に囲まれた地域や、川や海によって形成された土地に関連する。特に川の中州や埋立地が多く、自然形成された地形だけでなく、都市開発や工業化により新しく造成された地も含まれる。また、水運や港に関連する歴史的な要素を持つこともある。
33.-島(しま、じま)
実例:淡路島、佐渡島、八丈島、江ノ島、月島、昭島、佃島、綱島
島を意味し、島全体や島に関連する地域に使われる。
34.-崎(さき、ざき)
実例:長崎、川崎、大崎、城崎、三崎、剣崎、犬吠埼
崖や岬を意味し、海岸に突き出た地形を表す。
35.-岬(みさき、さき)
実例:襟裳岬、竜飛岬、宗谷岬、潮岬
海岸線や湖岸の一部が突き出た地形を指し、海洋の要所や風光明媚な場所に使われることが多い。歴史的には、航海の目印や漁業の拠点として重要な役割を果たした場所でもある。
36.-浦(うら)
実例:芝浦、三浦、土浦、琴浦
湖や海の近くや湾を意味し、とくに沿岸部の地名に使われる。「-浦」は歴史的に港町や漁業が盛んな地域に見られるが、古代の日本における港町や漁村に多かった。
37.-ヶ浦(がうら)
実例:霞ヶ浦、袖ヶ浦、屏風ヶ浦、鼓ヶ浦
「-ヶ浦」は特に観光地や風光明媚な場所で自然環境や景観の良さを強調するために使われる。「浦」よりも小さな範囲や親しみやすいニュアンスを持つ。
38.-浜(はま、ばま)
実例:横浜、久里浜、九十九里浜
浜辺や砂浜を意味し、海や川の近くの地名に使われる。
39.-ヶ浜(がはま)
実例:由比ヶ浜、七里ヶ浜、浦ヶ浜、松ヶ浜
「-浜」は海岸沿いの地域や水辺に面した場所の地名に見られ、そこに「ヶ」を付けて柔らかい印象や小さな浜を表現する場合に「-ヶ浜」という形になる。「-ヶ浜」は、新しい住宅地や観光地として開発された沿岸地域や、自然環境の美しさを強調するために採用されることもある。
40.-岸(きし、ぎし)
実例:大岸、片岸、根岸
「岸」は川や湖、海の岸辺や崖など、水に接する場所や高台を意味し、地形的に川や海に面した場所や、崖沿いの場所を指す場合に多く使われる。
41.-窪、-久保(くぼ)
実例:荻窪、恋ヶ窪、水窪、程久保、沼久保、牛久保
地形の低地や谷間、湿地帯を表す。地域の地形や水の流れに密接に関連し、自然環境や農業に基づく古代からの地形的な特徴が反映されている。なお、「久保」は「窪」に嘉字(めでたい字)を当てたもの。
42.-谷(たに、だに、や)
実例:渋谷、四谷、日比谷、世田谷、鶯谷、大涌谷
谷間を意味し、山間部にある場所に使われることが多い。なお、関東地方では「や」の読み方が多く、関西地方では「たに」が一般的。
43.-ヶ谷(がや)
実例:千駄ヶ谷、幡ヶ谷、梶ヶ谷、保土ヶ谷、井土ヶ谷
谷間や低地、あるいは山や丘陵の間に位置する地域を表す。もともとの「谷(たに、や)」という地形名に「ヶ(が)」が付けられた形で、より親しみやすい響きや、小規模な谷を表現する。谷間に立地していることが由来の場合もあるが、特に都心に近い郊外、住宅街として開発されたエリアに採用されることが多く、緑豊かな自然環境や静かな住環境を想起させる。
44.-塚(つか、づか)
実例:宝塚、大塚、笹塚、平塚、戸塚、耳塚、和田塚、将門塚
おもに古墳や埋葬地に由来し、歴史的・文化的背景を持つ土地が多い。小高い丘陵地を示す場合もある。
45.-台(だい)
実例:駿河台、鶴見台、洋光台、陽光台、湘南台、相武台
台地や高台を意味し、標高が高い地域や丘陵地帯に使われる。とくに新興住宅地や団地など、住宅地としての地名に多く見られ、近代的な開発が行われた場所を象徴する。
46.-岡(おか)
実例:福岡、静岡、富岡、長岡、上大岡
丘陵地帯や、やや高い場所に位置する地域を表す。
47.-ヶ丘(がおか)
実例:聖ヶ丘、光ヶ丘、希望ヶ丘、自由が丘、美しが丘、二十世紀が丘
比較的新しい地名の一つで、この「ヶ」は「小さな」を意味し、「小さな丘陵地帯」や「小さな高台」を表現する。昭和や平成期以降の新興住宅地やニュータウンの名称として頻繁に用いられ、住環境の良さや景観の良さをアピールする目的でも使われることが多い。
48.-字(あざ)
実例:大字(おおあざ)、小字(こあざ)
「字(あざ)」は、村や町の中でさらに細かい区分を表す言葉。昔の地名や行政区画において、村の一部や特定の区域を指すために使われてきた。村や町が広がりを持つ際に、異なるエリアを識別するための名称。現代の正式な地名にも使われるが、日常的には省略されることが多い。「大字」は村や町の中で主要な区域、「小字」はその中のさらに細かい区域を指す場合がある。
49.-郷(ごう、きょう、さと)
実例:白川郷、本郷、東郷、三郷
村や集落、田舎を意味し、広範囲な地域を示す場合もある。とくに農村や山間部の集落を指すことが多く、近代以前の地名に残ることが多い。
50.-郡(ぐん)
実例:西多摩郡、利根郡、木曽郡、安芸郡
かつて日本の地方行政区分の一つであり、現在でも少ないながらもいくつかの農村地域で残っている。都道府県と市町村の間に位置する区分として、いくつかの町や村をまとめる役割を果たしてきた。現代では郡は現在では市町村制度に取って代わられ減りつつあるが、歴史的には重要な行政区分であった。
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