2009年11月23日 「大滝詠一 A LONG VACATION」トリビュートコンサート セットリスト
これは2009年11月に開催された大滝詠一さんのアルバム「A LONG VACATION」のトリビュートコンサートの時のメモ。この年発売された「A LONG VACATION From Ladies」というカバーアルバムを受けてのライブでした。すっかり記憶が飛んでいましたが、改めて読むと色々思い出しますね。
奇しくも(?)今日は3.21。ロンバケ発売から40周年ですね。
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2009-11-28
大滝詠一さんの「A LONG VACATION」は、1981年3月21日に発売され、発売1年で100万枚を突破、その後もじわじわと売れ続け、現在までに実に200万枚以上売れているという、ベストセラーにしてロングセラー。日本のポップスの歴史を紐解くとき、このアルバムの存在を抜きには語れない、と言うくらい重要な作品です。松本隆さんの歌詞、永井博さんのイラスト、大滝さんの音楽が三位一体となった名盤は、多くのフォロワーを生み出し、多くの少年少女をナイアガラの滝壺に飛び込ませた歴史的作品となったのでした。当事もよく言われたことですが、YMOと大滝さんの影響を受けた若者たちが90年代前後に渋谷系の中心人物になっていった系譜がロンバケを聴くと本当によく分かりますね。あ、ちなみに「ロンバケ」はコンパクトディスク第一号作品。CDの歴史もまさにこの作品から始まったわけです。
ナイアガラについて書き出すと長くなるのでやめますが、この作品を聞いた当時は「大人になったら海の見えるテラスで、薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべつつ、意味なく手紙など書いてみるんだ」なんて思ったものです。蒼かったです(恥) あ、でも大人になってからカナリア諸島ならぬオキナワ諸島に住んで、オレンジを浮かべたアイス・ティーの代わりに、シークワーサーを絞った泡盛を飲んだりはしたな、そう言えば。
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まじめな話をすると。作詞家の松本隆さんはロング・バケイション製作時に妹さんを亡くされていて。どうしても歌詞が書けない彼に対し、大滝さんは「待つよ」と。数ヶ月して松本さんが紡いだ魔法のような歌詞は、一時期を共に過ごした恋人との甘酸っぱい想い出に溢れ、緻密で爽やか且つ力強い音世界をバックに言葉が軽やかに躍っていたわけですが、実は愛する人を失った寂寥感を、ウエストコーストの太陽を浴びた色鮮やかな世界観に昇華させていくような作品が多いことに改めて気づかされます。
机の端のポラロイド 写真に話しかけてたら
過ぎ去った時しゃくだけど 今より眩しい
想い出はモノクローム 色を点けてくれ
もう一度そばに来て はなやいで 麗しのCOLOR GIRL
(「君は天然色」)
もうあなたの表情も輪郭も薄れて
僕は僕の岸辺で生きていくだけ それだけ
カナリア・アイランド カナリア・アイランド
風も動かない
(「カナリア諸島にて」)
さよならの風が君の心に吹き荒れても
ただ僕は知らん顔続けるさ だって今日は
Wow Wow Wednesday
(「雨のウェンズデイ」)
言いそびれて白抜きの言葉が 波に浮かぶ
想い出のブラスバンドが 耳元を過ぎる
暗い海に向かって ヘッドライトのパッシング
君は泣いているのか もう遠すぎて何も映らない
(「スピーチ・バルーン」)
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さて、そんな「ロンバケ」ですが。今月4日(2009年11月4日)、カバーアルバムが発売になりました。その名も「A LONG VACATION From Ladies」 --- 女性シンガー10名によるトリビュート仕様で、アレンジ、プロデュースは、ナイアガラサウンドには欠かせない井上鑑さん。「~周年」ではないタイミングで驚きましたが、出てしまったからには買うしかない。
鑑さん自身が語ったように、僕達はオリジナル版の「残像」を探してしまう為、この種のカバーアルバムを新鮮な気持ちで聞くことは存外難しいもの。しかし今作は、オリジナルではその音壁の陰に隠れていた「寂寥感」がジンワリとしみてくる仕上がりでした。
で、レコ発ライブがあるというのでチケットをそそくさと押さえまして。でも、ライブではどうせ各アーティスト1曲ずつだろうし、2時間どう持たせるんだろう? ・・・とまあ、そんなことをぼんやり考えながら、大した期待もせずにオーチャードホールへと向かったのが11月23日のこと。
オーチャードホールのある文化村に入ると、あちこちに見かけた顔が。ナイアガラーの友人達が集まっています。10年以上懇意にさせていただいている方々が多いものの最近は年に1回お会いするかどうか、という方も多いので、それだけで嬉しくなっちゃいますね。ほら、大滝師匠が表立った活動をしていないので、こういう集まりってなかなかきっかけが生まれないんですよねえ。
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大滝詠一 A LONG VACATION トリビュートコンサート
(23 Nov 2009 / オーチャードホール)
さて、ライブ本編ですが、プロデューサーの井上鑑さんがバンマスを務める今回限りのバンド「井上鑑マスターズバンド」が全曲を演奏。「A LONG VACATION From Ladies」に参加している10名のアーティストが、交代でボーカルを取っていくスタイルでした。まあ、ここまでは予想通り。予想外だったのは、各シンガーが「もう1曲」大滝さん絡みの曲を(この日の為に)披露したこと。これがとても良かった(実際、「もう1曲」を収めたCDが欲しい、との声も数多く聞かれていました)。
で、1アーティストずつ書いていこうかとも思ったのですが、前段が長くなりすぎたので(汗)、まずはセットリスト、それから当日のメモを簡潔に...。
○開演前SE
大滝詠一: アルバム「A LONG VACATION」
○Band: 井上鑑マスターズバンド
01. ナイアガラムーン
○Featuring: 大貫妙子(Vocal)
02. いつも通り
03. 君は天然色
○Featuring: 金子マリ(Vocal)
04. Velvet Motel
05. 熱き心に
○Featuring: 今井美樹(Vocal)
06. 夢で逢えたら
07. カナリア諸島にて
○Featuring: 行川さをり(ジュライム/Vocal)
08. Pappi-doo-bi-doo-ba物語
09. 指切り
○Featuring: イシイモモコ(ハミングキッチン/Vocal)
10. 我が心のピンボール
11. 快盗ルビイ
(12. がんばれば愛)
○Band: 井上鑑マスターズバンド
13. Blue Niagara
14. 幸せな結末
15. 福生ストラット
○Featuring: 尾崎亜美(Vocal, Piano)
16. 雨のWednesday
17. 冬のリヴィエラ
○Featuring: 原田郁子(クラムボン/Vocal)
18. スピーチ・バルーン
19. 空色のくれよん
○Featuring: つじあやの(Vocal, Ukulele)
(20. 愛餓を)
21. ウララカ
22. 恋するカレン
○Featuring: 太田裕美(Vocal, Piano)
23. FUN X 4
24. 恋のハーフムーン
○Featuring: 鈴木祥子(Vocal, Drums)
25. バチェラーガール
26. さらばシベリア鉄道
encore
○Band: 井上鑑マスターズバンド+鈴木祥子(Drums)
27. ナイアガラ音頭
○Featuring: All Singers+佐野史郎
28. 恋はメレンゲ
○終演後SE
大滝詠一: シングル「恋する二人」
Singers:
大貫妙子 / 金子マリ / 今井美樹 / 行川さをり / イシイモモコ / 尾崎亜美 / 原田郁子 / つじあやの / 太田裕美 / 鈴木祥子
井上鑑マスターズバンド:
井上鑑 Keyboards
高水健司 Bass
鶴谷智生 Drums
小倉博和 Guitar
藤本一樹 Guitar
金子飛鳥 Violin
佐野史郎 司会進行
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以下、箇条書き的な当日のメモ。
スタートから15分以上押しでスタート。1曲目は「ナイアガラ・ムーン」 …この時点でロンバケのコンサートではなくなっている。
続いて司会に佐野史郎さん登場。39年来のナイアガラーとしてもお馴染み。
最初に登場したのは「いきなり大御所」(佐野史郎さん談)の大貫妙子さん。曲順どおりか?と思った瞬間、シュガー・ベイブ「いつも通り」のイントロ。ジーンとする。「君天」は明らかにライブが良い。コーラスが強くなりター坊の良さが際立つ。佐野さん、いきなりマニア魂全開なトーク。70年代のシュガー・ベイブ話。
金子マリさんがやった「もう1曲」の「熱き心に」に場内興奮。カッコよすぎ。 アメリカに居を移した金子飛鳥さんのバイオリンにも熱がこもる。テンション上がる。
「夢で逢えたら」はアンコール用か、と思っていたところ今井美樹さんが歌う。美しい。美樹さんと佐野さん、実は初対面。「昔、重いドラマを担当していた2人」の話に場内喝采。佐野さんはこの辺りから完全に飲み屋モード。トークの度にシンガーに「続きは打ち上げで」「また飲みの席で」と言う。
ジュライムは4月にデビューしたばかりの新人バンド。一方、イシイモモコは細野さんつながりでお馴染み。「快盗ルビイ」良い! 「がんばれタブチ君」のテーマ曲が好きで、それが大滝さんとの出会い、と1コーラス。
中盤は井上鑑さんが語る。「Blue Niagara」は最初「Valentine Blue」というタイトルにしたかったと。この曲、「Blue Valentine Day」の旋律を引用し逆から弾いている。面白い。
尾崎亜美さんのパートも白眉。やはり亜美さんが歌うと亜美さんの曲になるんだよなあ。「雨のウエンズデイ」をしっとりと聞かせた後は、(「冬のリヴィエラ」の音域の広さから)森進一さんはスゴイ、と言いつつ物マネ披露。場内沸く。
原田郁子さん、素晴らしい。クラムボンがもっと認知されますように。
佐野史郎さん、つじあやのさんにムチャ振り。即興で「愛餓を」を披露する羽目に。つじあやのさんが学生時代にやっていたバンド名が「ウララカ」 …当然、あの楽曲からの引用。
太田裕美さん、「A LONG VACATION コンサート」に出演したときは最年少だったのに、と笑う。 オリジナルでは裕美さんが歌っている「散歩しない♪」を今回は佐野さんが。で、もう1曲は「さらばシベリア鉄道」を…と裕美さんがコメントして場内が沸くが、これは今回、鈴木祥子さんのレパートリー。そこで演奏されたのが「恋のハーフムーン」。これがとてもよかった!
鈴木祥子さんはドラムの叩き語りで「バチェラーガール」。祥子さんは80年代中盤、今年亡くなった一風堂の藤井章司さんのローディーをしており、藤井さんがサポートした稲垣潤一さんのライブでこの曲をステージ脇から聴いていたと。彼女のドラムは情念が入ったパッション溢れるドラミングスタイル。素敵だ。そして、祥子さんの「さらシベ」に太田裕美さんが「こんなエロいシベリアは聴いたことがない」との談。
アンコールでシンガーがステージに揃うまでバンドと鈴木祥子さんで「ナイアガラ音頭」のインスト。「布谷さんが登場するんじゃないかと」と妄想する方も。
そうそう、大滝さんは客席にいたとか、ステージ裏にいたとか色々な噂が。真相は藪の中ですが、打ち上げにはいらしたそう。
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