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忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その9)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◇2ターン目

◇◇◇

 ドラゴンチック、タカギ・ガンドーの2人はデスドレインの後を追い、薄暗く湿った下水道の通路をしめやかに進んでいた。道中には暗黒物質の付着したバイオ白ワニの死骸、ここに住んでいた浮浪者と思われる人間の腕などが点々と続いている。

「……被害の規模がデカすぎて目印にもなってねえ。目のついた奴は手当たり次第、といった感じだぜ」「ジツの規模が大きすぎてソウルの感知もうまくいきません。このままだとまた新幹線の時みたいなことに……ん?」

 その時、ドラゴンチックのニンジャ嗅覚は下水道の悪臭に混じる、別種の危険な臭いを感じ取った。「ガンドー=サン!すぐに地上に出て!早く!」「どうした?何か分かったのか?」「毒です!地下に毒が撒かれてる!」「……なんだと!?」

◇◇◇

「サヴァイヴァー・ドージョーとかいうバイオニンジャの寄せ集めを処理するための毒ガスが、こんな形で役に立つとはな」工場から垂れ流される汚染水の増加によって処理が間に合わず、そのまま閉鎖されてしまった下水処理施設の沈殿池にて、ニンジャスレイヤーは下水道を逆流していく毒の煙を満足気に眺めていた。

 ドラゴンチックの居場所を確認したニンジャスレイヤーは当初、正面からカラテで彼女を完膚なきまでに打ち倒し、以ってニンジャ殺戮者としての瑕疵……すなわち、グロウコブラやデスドレインを相手に撤退という選択肢を取ってしまった過去の屈辱を払拭しようと考えていた。

 だが、ドラゴンチックがデスドレインを追って下水道にいると知った協力者ハッカーの一人、ナブケは更にスマートな解決策を提示してきた。それがこの毒ガス散布だ。『そもそも下水道はバイオニンジャの他にも野良ニンジャの情報が多いですからね。まとめて一網打尽にすれば効率的』「その通りだ」ニンジャスレイヤーは腕を組み、頷いた。

 迷宮めいて広がる下水道に蟻めいて隠れ潜むニンジャ共を一匹一匹探し出し、殺して回るのは面倒の極み。それよりもこうしたテックの力を用いた戦法を取った方がカラテ費用対効果の面で圧倒的に上回っている。この柔軟な発想とそれを実行する決断力こそ『初代』の持ちえぬ自分ならではの強み。すなわち『初代』に対する己の優位性である。ニンジャスレイヤーはメンポの下で口の端を吊り上げた。

 BEEP!BEEP!と、その時であった。処理施設の警報が鳴り響き、非常ボンボリから放たれる赤い光が室内を照らし出した。「何が起きた?」暗い喜びの感情に水を差されたニンジャスレイヤーは苛立ちの混じった声を上げる。『スミマセン、下水道と沈殿池の間に設置された検知器が生体反応を捉えたようです』ハッカーが慌てて謝罪する。

『毒ガスで暴れているバイオ白ワニか何かかと。すぐに死ぬと思いますので、とにかく警報を解除します』「急げよ。くだらん騒ぎで地下にいるクズ共にここがバレたら……」そこまで言って、ニンジャスレイヤーは言葉を止めた。己の発言に対する、何か得体の知れぬ違和感のようなものが徐々に膨れ上がっていき、疑念と疑惑が胸中で質量を帯びていく。そして次の瞬間!

「イヤーッ!」SPLAAASH!下水の中から飛び出したドラゴンチックがニンジャスレイヤーに強烈なトビゲリ・アンブッシュを繰り出す!「イ、イヤーッ!?」ニンジャスレイヤーは一瞬早く防御が間に合い、タタミ4枚分の距離を後ずさりながらもこの致命の一撃を凌いだ!

「ドーモ、ドラゴンチックです!」少女は纏わりついた汚水を赤熱する装束で瞬時に蒸発させ、ニンジャスレイヤーと対峙した。しかし、毒ガスで満たされた下水道の中で彼女はいったいどうやってここまで無事に辿り着いたのか?読者の皆様は当然その理由を知っていよう。チャドー呼吸である!

 ドラゴンチックはまずガンドーを地上に避難させた後、自分は毒ガスの発生源を目指して走り出した。行方の知れぬデスドレインの事も気がかりであったが、下水に毒ガスを流し込むような人間を放っておくわけにはいかないという判断からだ。ドラゴンチックは次第に濃度を増していく毒ガスをチャドー呼吸で吸い込み、酸素のみを肺に取り入れ、毒成分のみを体外へ吐き出していたのだ!

 ニンジャスレイヤーはトビゲリを受けた腕の痺れから目を逸らすようにアイサツを返す。「ヌゥーッ!ドーモ、ニンジャスレイヤーで……」「ちがう」その時、ドラゴンチックはニンジャスレイヤーのアイサツに割り込み、人差し指を突き付けた!なんたる無礼!師であるゲンドーソーの品格すらも疑われかねないタイヘン・シツレイだ!

「な、なにが違う!何を……何を言い出す貴様!」しかし、ニンジャスレイヤーはこのシツレイについて糾弾することも出来ず、そればかりか図星を突かれたように言葉に詰まる!「あなたはニンジャスレイヤー=サンじゃない。それっぽい装束と、それっぽいメンポを付けた別人でしょ」痛烈な指摘!ニンジャスレイヤーは狼狽する!

「ち、違う!私はニンジャスレイヤーだ!この装束と『忍』『殺』の文字は先代から受け継いだ神聖なる」「あのさ、その『先代』っていうのなに?ニンジャスレイヤー=サン、普通に元気だけど?」「な……」その言葉を聞いた瞬間、ニンジャスレイヤーは雷に打たれたかのような衝撃を覚えた。

「貴様は……貴様は、ニンジャスレイヤーを知っているのか?」「弟弟子だよ」「……!」2度目の衝撃。ニューロンがフリーズし、視界が明滅する。訝しむドラゴンチックに構わず、ニンジャスレイヤーはぶつぶつと呟きながら思考を深めていく。

 この女はニンジャスレイヤーの関係者であり、自分の知らないニンジャスレイヤーを知っている。だが、それはおかしい。何故ならば、ニンジャスレイヤーとは己のことであるからだ。自分の知らない自分を知っているニンジャ……不合理である。道理に合わない。故に、この女は現実を認識出来ていない狂人であると判断出来る。

 そのような愚かな女の戯言でヘイキンテキを乱してしまうとは。ニンジャスレイヤーは心の中で自省する。彼は己の未熟を知ると同時に、成長の機会を得たことに感謝した。このニンジャスレイヤーの知り合いを騙る女を殺せば、己が持つニンジャスレイヤーとしての完全性は揺るぎないものとなるであろう。

(ニンジャスレイヤーの名を穢すニンジャを、この私が始末する。先代の成し得なかったことを、真のニンジャスレイヤーである私が遂行するのだ!)ニンジャスレイヤーの中で結論が出た。「イヤーッ!」赤黒の影は両手にカトンの炎を燃やし、ドラゴンチックにアンブッシュ気味のパンチを「イヤーッ!」「グワーッ!?」

ドラゴンチック『対抗判定:カラテ』+『◉◉タツジン:ジュージツ(2)』+
『◉トライアングル・リープ(1)』+『★カトン・パンチ(1)』:
19d6>=4 = (1,1,6,6,3,4,3,1,2,2,5,2,1,4,4,5,3,4,1 :成功数:8)

ニンジャスレイヤー?『対抗判定:カラテ』+『★カトン・パンチ(1)』:
11d6>=4 = (1,6,3,1,3,4,2,6,3,6,2 :成功数:4)
ニンジャスレイヤー?体力8 精神力5

 ワザマエ!ドラゴンチックはカトンで編んだ赤熱するグローブを纏った右手でニンジャスレイヤーのパンチをいなし、左の裏拳をニンジャスレイヤーの鼻柱に叩きつけた!「グワーッ……!?」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 鼻血を流して体勢を崩したところへドラゴンチックは追撃のスイープ・サイを繰り出し、ニンジャスレイヤーを転倒させる!「グワーッ!」頭を床に強かに打ち付けるニンジャスレイヤー!

「スゥーッ……ハァーッ……」ドラゴンチックはザンシンし、地面に倒れるニンジャスレイヤーを見下ろした。(な、なんだこの女は!?今、何をされた!?)一方、ニンジャスレイヤーは痛みと困惑で自分の状況を把握しきれず、起き上がることすら忘れている。

「それで、どうしてニンジャスレイヤー=サンの真似なんてしてるの?それに毒ガスなんて撒いて……」その声を聞いた瞬間、ニンジャスレイヤーの視界が怒りで赤く染め上げられた。ドラゴンチックの声色は……無感情だった。いや嘲っていた。いや、優しかったのだ。まるで、喧嘩をした子供に理由を尋ねるように。そのことがニンジャスレイヤーは許せなかった。

「そうか貴様……初代の差し向けた刺客だな!?」「は?」思わぬ発言にドラゴンチックは呆気にとられる。「文句があるなら自分で来ればよいものを……そこまで堕ちたか!ニンジャスレイヤー!」「何言ってんの?」ドラゴンチックは眉をひそめる。

「この屈辱は忘れんぞドラゴンチック=サンとやら……借りは必ず返す!後悔させてやるぞ!イヤーッ!」SPLAAAASHH!閃光!そして煙幕!もしもの時のために懐に潜ませておいたハイテック・ボムだ!「ンアーッ!?」ニンジャスレイヤーの言葉に動揺していたドラゴンチックは反応が遅れる!

「……また逃げられた」ドラゴンチックはもぬけの殻となった室内を見渡して歯噛みした。『モシモシ?聞こえるかドラゴンチック=サン』と、その時。ドラゴンチックが持っていたIRC通信機からガンドーの声が聞こえてきた。何かあった時のために通話機能をアクティブ状態にしたまま持っていたのだ。

「ガンドー=サン。聞こえてます。ドーゾ」『とりあえずだが地下下水道の毒ガスは止まったみたいだな。しっかしまあアンダーガイオンとは別の意味でだだっ広くてごちゃついた地下だぜ……』「……さっきの人のことですけど、聞こえてましたか?」『……ああ、自分をニンジャスレイヤーだって言ってたな』

 ドラゴンチックは通話をしながら下水処理施設から外に出る。ガスの供給は止めたとはいえ、当分下水道は通らない方が良いだろう。彼女はそう考え、施設の屋上へと駆け上る。雲の隙間から月明かりが差し込み、ドラゴンチックは目を細める。

「ニンジャスレイヤー=サンが……ややこしいんで本物って呼びますけど、本物が言ってましたよね。他の誰かが、自分の名前を使っているって」『ああ、それが今の男とみて間違いあるまい……だが、そうだとすると、ちょいとマズイかもな』「まずい?」『いやな、なんて言ったらいいのか……こいつは俺のカンのようなもんだが……』

 ガンドーは歯切れ悪く、そこで一旦言葉を区切り、やがて己の考えを声に出した。『スズキ・キヨシと……ガンスリンガーの奴と似たアトモスフィアを感じ取ってな。ああいう手合いは、そのうち大それたことを仕出かすぜ』「……」

 ガンドーの言葉を聞きながら、ドラゴンチックはその推理が外れていてほしいと思った。しかし、悪い予感ほどよく当たるのだということを、彼女は過去の経験から嫌というほど理解してもいた……。

◇◇◇

遭遇ブレードブレイカー: 1d12 = (5)
ブラックヘイズ
またかよ!

 暗黒メガコーポのオフィスビル内に店舗を構えた洋風レストラン『伴天連』。そのVIP客用の個室内にて、2人の男がテーブルを挟んで座り、向かい合っていた。「ドーモ、ブラックヘイズです」「ブレードブレイカーです」

「あんたを探していた。ソウカイヤのシックスゲイツである、あんたをな」ブラックヘイズは僅かにテーブル上に身を乗り出し、前菜として出されたスープの皿の影に隠して何らかのマイクロ・チップを差し出す。

ブラックヘイズ『交渉判定:ワザマエ』:
8d6>=4 = (5,1,5,6,5,5,1,2 :成功数:5)

ブレードブレイカー『交渉判定:ワザマエ』:
11d6>=4 = (1,5,6,4,1,3,6,6,6,3,5 :成功数:7)

「フン……」ブレードブレイカーは携帯用UNIXにチップを差し込んで中身を確認する。ひとまずバックドアを仕掛けられたりするような怪しい痕跡はない。「それはあんたの部下から手に入れた情報だ。ならば、後はお前が有効活用してくれ」

「あのアホ女……」所詮は部外者に過ぎない傭兵にまで気前よく情報をプレゼントしている同僚の顔を思い浮かべ、ブレードブレイカーは頭痛を堪える様に頭を抱えた。彼はグラスに注がれたワインをイッキし、苦渋を流し込んだ。

※ブラックヘイズは次回遭遇判定時にニンジャスレイヤー、ドラゴンチック、ニンジャスレイヤー?と遭遇した際、そのターンをブレードブレイカーに横取りされてしまう。これはグロウコブラから横取りする分も含む。(次回1回のみ)

◇◇◇

遭遇セルフハーム: 1d12 = (6)
チキンハート

 ネオサイタマ民はサウナが好きだ。熱せられた石に水をかけ、立ち昇る蒸気によって温度と湿度を上げた室内に座り、ザゼンめいて静かに待つ。こうすることによって血行促進、疲労物質の排出、自律神経の改善など、様々な効果が期待できるという訳だ。

 なお、サウナに入る前には水分補給を忘れずに行っておくことが肝心である。サウナに無理して長時間いると熱中症などにかかる恐れもある。薬も量を間違えれば毒になるように、何事も適切・適量・適宜を心がけることが重要だ。

「しかしなあ」ネオサイタマ都心部にある銭湯、『光り輝く美人の湯』のサウナルームの中、チキンハートは溜息を一つ吐き、頭を掻いた。「任務中に風呂だのサウナだのっていうのは、流石にどうなんだ?」

「別に汗を流してリラックスするためにここへ来たわけじゃないわよ」チキンハートの隣に座る少女……セルフハームがつまらないものを見るような目で言った。「ブラインド=サンじゃあるまいし、ね」「……ヌウ」その名前を出されると、チキンハートは弱い。彼はメンポの下で口を噤む。

 チキンハートたちが今いるサウナルームには2人以外の人間は誰もいない。ネオサイタマには銭湯が無数にあるが、今の時間帯は利用客が少ないのだ。ゆえに、密談には向いている空間と言える。室内を満たす熱気を無視すれば、であるが。「ハァ……ハァ……」チキンハートは息を荒げ、額から流れる汗を腕で拭った。

「なによ、もうのぼせたの?みっともないわね」「心臓が弱いんだよ俺は……それより、早く情報交換を終わらせよう」「アイ、アイ」2人はここまで出会ってきた危険なニンジャの情報について共有を行い、やがてサウナルームから出た。

「アイエッ!?」サウナルーム前、ブラシで床を磨いていた清掃員は服を着たままの男女がサウナから出てきたことに驚愕し、ブラシを手放す。「イヤーッ!」「グワーッ!ムン」チキンハートは目にも止まらぬ速度で清掃員に接近。顎を掠めるチョップで清掃員の脳を揺らして気絶させ、ブラシが床に落ちる前にキャッチした。

※チキンハートとセルフハームはデスドレインの情報共有を行ったことで、次回以降のデスドレインとの戦闘時、ダイスが+2される。

◇◇◇

遭遇???: 3d9 = (9+9+6)
遭遇???: 3d9 = (2+1+6)

フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その10)へ続く